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泉のおじさん

 確か、エドルさんの見立てだと、白系だって話だけど、言葉通じないし、神様っぽくもないから黒か青なんじゃないかな。新種とは分かってても、人型なんて本当に珍しい。……何かちょっと引っかかるな。

 なんにしても赤系カンガルー型魔獣エイリじゃ勝てないかもしれない。

 私は距離を取りつつ、近くに落ちていた長めの木の枝を手にした。威嚇してくるおじさんをこれ以上刺激しないよう、地面に術用の円を描いていく。と、その時、


「ぎゃうっ」


 おじさんが何かに踏み潰されでもしたかのようなうめき声を上げた。慌てて、視線を戻すと、

「あっ」


 おじさんが泉に倒れ込むところだった。飛び込んだのではなく、横から加わった力で落とされたという感じ。

 水しぶきを上げて泉にダイブしてしまったおじさんは慌てた様子で泉を泳ぎ切り、反対側の縁から陸に上がると、そのまま森の中へと逃げて行ってしまったのだった。

 私はそれを見送りながら、呆然としてしまう。

 逃げられた……。

 せっかく受けた仕事……。

 報酬が……。

 色々な思いが駆け巡り、私は最後にがっくりと肩を落としたのだった。


「え、え? なんスか? 何が起こったんスか?」


 カリンが隠れている茂みからだと良く見えなかったのだろう。というか、私も何があったのかよくわからなかった。


「いや、うん……」


 追いかけるか? とっさに判断していればともかく、今からじゃ見つけられるかどうか。


「ふふ。お姉様、鈍いですわね」


 足音。木の間からくすくすと笑いながら出てきたのは、フリーティだった。


「エイリ、やれ」


「え!?」


 私の指示でエイリがフリーティへ飛び掛かり、


「きゃっ、ちょっ! いたっ」


あっという間に地面に組み敷いてしまったのだった。


「リティさん、今度は一体何が?」


 茂みから顔を出しつつ、困惑するカリンである。


「ああ、もう出て来ていいよ」


 そう言ってから、地面に頬を擦りつけているフリーティのそばにしゃがむ。


「なんでいんの?」


 不良みたいな言い方になっちゃったけど、仕方ないよね? 邪魔したの、どう考えてもこいつだし。


「お姉様、まぐれでアルゴットお師匠様に勝ったからと言って、ふんが!?」


 私がフリーティの鼻をつまんだのだ。


「誰がお姉様だ。あと、まぐれじゃないじゃない。あなたのお師匠様が物凄く弱かっただけだから」


 私はそう言って、フリーティの鼻から手を離した。


「ふふん、余裕でいられるのも今のうちですわよ! トルフィティ家を敵に回したらどうなるか、三カ月後、お姉様はトルフィティ家の奴隷として大会に出ることになるのですわ!」


 この子、ここで始末しちゃおうかな?

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