ハルビア家にて1
カリンの家はトルフィティ家の屋敷の半分くらいの広さの敷地に建っていた。それでも立派な屋敷である。
正門のところにカリンが待っていて、手を振っている。
「リティさーん」
駆け寄ると、いきなり抱きつかれた。
「え、ちょっと」
「おお、情熱的だな」
そうか……?
「無事でよかったぁ」
アルゴットとの勝負……どうやら心配してくれていたようだ。
すぐに離れてくれた。
「ああ、ごめんっス。つい」
照れ笑い、人懐っこさ全開だ。それにしても抱きつき癖でもあるんだろうか。
「それで師匠、勝負の行方は?」
「まだ弟子にするって言ってないって」
「えー? 別に減るもんじゃないし、いいじゃないっスか」
カリンは頬を膨らませつつ、正門を開いた。
「なんだ? 弟子に志願されてんのかよ?」
黙って聞いていたルビが私と、カリンの顔を交互に見やる。
「うん、まぁ」
私自身修行中の身なのに弟子なんて無理なんだけどな。
「お! それがウサ耳の正体っすか?」
「おうよ。ルビだ。よろしくな」
会ったことあったと思ったけど、話したのは初めてか。
「へぇ。ルビは白系なんスねー」
体が白いし、私もそうだと思う。それと人語を介するのは黒系のかなりランクが高い魔獣と白系のみなので。
「こっちっスよ」
案内されたのはリビングだった。使われていない暖炉、小さなシャンデリア、ソファーにローテーブル。日本の民家の居間、三個分の広さといったところだろうか。
「やぁ、リティアニーカ・アルフさん」
ソファーに腰を下ろすと、正面に中年の男性が座っていた。丸眼鏡をした気の優しそうな人だ。
「初めまして」
私は軽く会釈をする。
「カリンさんにお聞きしています。あなたがエドル・ビア・ハルビアさんですね」
ハルビア家現当主。カリンの父親だ。
「ご依頼は南の泉に現れた中年男性を退治してほしい、とのことでしたが」
「そう。それであってる。娘に任せても良かったんだけど、どうも白系の気配がするのでね。白兎の召喚術師と名高い君に頼むことにしたんだ」
「召喚魔獣、なんですか?」
「ああ、間違いないと思う。どうだい? 引き受けてもらえるかな?」
「はい。ただ、依頼としてお受けする以上、報酬を頂きますけど」
「もちろん。これくらいでどうかな」
指を五本立てて見せるエドルさん。
「それって……」
「マジかよ!」
単位が間違ってなければ結構な額だ。魔獣退治の相場の五倍。いや、もし白系だとしたら妥当なのかな。
「得体の知れない魔獣だ。これくらいは必要だと思ってね」
そこでカリンが珈琲を運んできた。
「はい、父様」
「ん。ありがとう」
「はい。師匠」
「いや、違うからっ」
「もー、良いじゃないっスか」
「ダメなものはダメ」
私はカリンから視線をそらす。
「あっはは。カリン、リティアニーカ君は恐らく、責任を持てないと思っているのさ。生半可な気持ちで弟子を取りたくないんだろう」
「そう、ですね。まだ私自身未熟なので、誰かに教えるっていうのは」
「だったらこうしよう。しばらくの間、君の仕事にカリンを連れていってくれないかな? 弟子とかじゃなく、君の仕事を見学させてほしい。どうだろう? 場合によっては無料でお手伝いをさせるよ」
見学……カリンはフリーティを倒すほどの実力者だ。黒系アクノも使いこなしていたし、手伝ってもらうってことなら良いかもしれない。
私は少し考えて、
「そういうことなら」
頷いた。




