ルビと朝食を
トルフィティ家を出た私とルビは近くのカフェに入った。
この後、カリンの家にお邪魔する予定なので、まずは抜いていた朝ご飯を食べる。
カリンにはいつでも行けると通信石のメッセージ機能で連絡を入れておいた。
モーニングメニューはゴールデンミルクとバターパン、ベーコンエッグ、サラダにスープ。いつもよりちょっと豪華だ。
「よし。いただきます!」
私は手を合わせ、フォークを手にした。
「奮発したなぁ。朝飯にこんな金使ったことねぇだろ」
「気分良いからね~」
テーブルの端っこに座っているルビが何度か頷いた。
「よかったじゃねぇか。これでお前はトルフィティ家から解放されたと」
私はベーコンの肉汁を噛み締めながら、眉を寄せた。
「私としてはそう思いたいんだけど、嫌な予感がする」
「あんだけ実力見せつけたんだから、簡単には手を出してこねぇよ」
「うーん」
「ああ、そうか。リティが奮発するとろくなことがないからな」
「うっ」
私は動きを止めた。そうだった。ここのところ、そのジンクスが定着し始めているのだ。
「この話、やめよう」
私はゴールデンミルクを一口飲んで気持ちを落ち着ける。
「んで、話を聞いたら今日中にそのおっさんとやらを退治行くのか?」
「うん。出来るなら解決しちゃいたいよね。夜に別の依頼も入ってるし」
と、他に客がいなくて暇なのか店員達が雑談を始めていた。なんとなく耳が傾いてしまう。
「首がなかったってこと?」
「そうじゃなくて、顔! 目とか鼻とか口がなくて」
「ええ? そんな人いる?」
「人じゃないかもしれないでしょ。新しい魔獣とか」
「見た人、どうしたの?」
「わかんない。でも、声をかけてきたのは顔がない人の方だったって」
発見されたことがない魔獣が現れると、噂になるのが常だけど、今の話を聞く限り、これは、
「「のっぺらぼう」」
つい呟いてしまってから、ルビと顔を見合わせた。今、同じタイミングでルビも言ったよね? のっぺらぼうって。
前からちょっと思ってたことだけど、聞いてみよう。
「ねぇ、ルビ。もしかして日本ていう言葉に覚えない?」
ルビはビクッと肩を揺らすと、
「な、ないな。急にどうしたんだよ」
……のっぺらぼうっていうのは日本の妖怪の名前なのだ。顔に目・鼻・口の無い人型の妖怪のこと。
「へぇ」
「早く飲まないとスープ冷めるぜ!」
ほんと、謎が多い魔獣だ。




