絶縁宣言
術円に火花が散った。黒と白の光が噴き出し、二匹のリーカーが絡み合いながら出現する。電流が弾ける音がし始めた。
私はこの程度で呆気に取られている師匠に対し、指先を向けた。
「終わりです」
そう合図した瞬間、白と黒の落雷が耳をつんざくほどの轟音と共に師匠とその魔獣に直撃した。
「ああああっ!?」
何か対抗してくるかと思ったけど、無策だったらしい。呆気なくボロボロになり、師匠は壁に叩きつけられる。ビックフット型魔獣は消滅し……つまり私の勝ちだ。
「俺いらなくね?」
「そんなことないよ」
二重詠唱からの二体同時召喚。以前から練習していたかいがあったというものだ。
騒然とするギャラリーを横目に、師匠へ歩み寄る。
胸ぐらを掴み、頬を張るとすぐに目を開けた。
「どう? 一瞬で能無しに負けた気分は」
「ぐ……この……」
私は口元に笑みを浮かべた。
「これじゃあ師匠と呼べないね、アルゴット・リーガン」
私は彼女から手を離し、床へ放った。
「うぐっ」
「才能ないんじゃない? 召喚術師止めたら?」
そう言ってから競技場内を見回した。
「私に文句がある人がいるなら、相手をしてあげるけど?」
使用人達はお互いに顔を見合わせる。
「そこの人」
私が指を指すと、ロングヘアのメイドがビクッと肩を揺らした。
「は、はいっ、わ、わたし……?」
「私の世話をするのは嫌だとか言ってたけど、私もゴメンだよ。でもさ、あの言い方、喧嘩売ってんの?」
メイドはガタガタと震え始めた。
「ち、違、わたしは……」
すると、膝を折って床におでこをつけた。
「申し訳ありませんっ、ご無礼をお許し下さい」
今度はその隣の清掃員を見やる。
「あなたも恥知らずとかなんとか言ってたけど、勝負してほしいの? アルゴットみたいになりたい?」
彼は真っ青になってメイドの隣に土下座した。
「ここには腑抜けしかいないみたいだね、お父様。いや、アーリー・トルフィティ?」
父、いや、かつて私のそうであった人は顔を青くしていた。
「リ、リティアニーカ」
「この瞬間から、私はトルフィティ家との縁を完全に切ることを宣言する。あなた達には恩も何もない」
私はそのまま出口へと歩き始めた。
「リティアニーカ!」
私は振り返った。
「そ、その才能はトルフィティ家のものだ。代々受け継がれてきた血なのだ。それを、お前は」
無視。
何言ってんの。手放したのはそっちでしょ。後悔する瞬間があるなら、最初からやらないものだよ。
「私は諦めんからなっ、リティアニーカっ!」
私はそのままトルフィティ家を後にした。




