要らない子をお迎えに
諸事情によりウサギ型召喚魔獣の名前がタリン→ルビに変更になっております。混乱させてしまい、申し訳ありません。
数時間前。
その日、私、高早あずさ……この異世界ではリティアニーカ・トルフィティは、太陽が昇る前に起床して、ミルクとバターパンで朝食を済ませ、ウサギ型の召喚魔獣のルビと一緒に召喚術の詠唱の練習をしていた。
「白き魔獣の地よ、大いなるアリーナの息吹をここに。リティアニーカ・トルフィティの名の元に顕現せよ!」
チョークでテーブルに描いた複雑な召喚術用の円が白い光を放ち、中心から螺旋状に煙が登った。
それは白い鱗を持つ細長い竜の形を形成される。
「やった、成功」
私が勢いよく両手を合わせると、肩に乗っていたルビが何度か頷いた。
「ついに白系もマスターか! さすが、リティだ」
この世界の召喚術と召喚魔獣にはランクが存在する。下から赤、青、黒、白。召喚魔獣は同じく赤系、青系、黒系、白系と分けられる。黒系を呼び出すことが出来れば最強、白系に至っては神の領域とも言われる。
『主殿、用件は何か』
白竜が私に問う。
「うーん、呼び出せるか試しただけなんだ。ごめんね。これあげるから、またよろしく」
召喚魔獣用のビー玉状のエサ、通称ペレットを渡すと、竜はすぐに煙となって消えた。
「ふう」
私は額に浮かんだ汗をぬぐった。
「これなら、北の洞窟の巨大白ムカデを一撃でいけるんじゃない!? わーい、楽しみー。王様からのご褒美何が良いかなぁ。やっぱり、豪華なご飯かな?」
「おいおい、ご褒美のためかよ?」
「それ以外に何かあるー? 町の皆も助かるし、最高でしょ」
私は立ち上がって伸びをした。白いローブを羽織る。
「早速今から行こっか。今日の夕飯はお城で晩餐だぁ」
「さすがに飛躍し過ぎじゃないか?」
「そんなことないって」
と、その時。家のドアがノックされた。養母であるカナラさんは昨日から出張でいないんだよね。
「はいはーい」
軽い気持ちで玄関のドアを開けると、そこには、
「……え」
私の実親、お父様にお母様、妹と兄が肩を落として立っていた。
会うのは数年ぶり? ちっちゃい頃は寂しくて一人で会いに行ったけど、門前払いで会ってくれなかった……。
「ひ、久しぶりだな、リティアニーカ」
「はぁ、お久しぶりですね。お父様。なんか用?」
「おい、色んな意味で軽くないか」
肩のルビが呆れ声で囁いてくる。
「元気そうね、リティ、会いたかったわ」
え、そうなの!?
「我が妹よ。立派になったな……!」
涙ぐむ兄。泣くほど!? そして、
「お姉、様ーっ」
妹に抱きつかれそうになったのでとりあえず、一歩下がった。
「おぶ!?」
私が受け止めるとでも思ったのか思いっきり顔面ダイブした。痛そうだ……。
「リティアニーカ……噂は聞いている。今のお前は我がトルフィティ家にふさわしい。今日は……迎えに来たのだ」
私は開いた口が塞がらなかった。
さすがに都合良すぎじゃない?