リティとエリシー
どういう意図があるかはなんとなくわかるな……。
「王子殿下が私に何かご用なのでしょうか」
「ううん。じゃなくて、あわよくば仲良くなってほしいなぁって」
正直だなぁ 。でも、王子殿下に関しては仲良くなるとか以前の問題があるんだけど。
「今日は遠慮しておきます」
王様は私の答えに慌てる。
「そんなこと言わずに!」
「と、言われましても。……あ」
私が再度断ろうとした時、王座の後ろから現れた人物が王様の右頬をつねり上げた。
「いだだだっ」
「リティちゃんを困らせるのはダメです」
つねりながらそう言ったのは私と同い年の少女。ライトブルーのふんわりとしたドレスにティアラ、赤みがかったストレートのロングヘア。綺麗な顔立ちはさすがというか、つまりは国王の娘、エリシー・ソルト・アリーナ王女殿下である。
「ご無沙汰しております。エリシー王女殿下」
「うん、こんにちは。えっと、ごめんなさい、パパが」
ぺこりと頭を下げる。
「いえ、陛下のお気持ちは嬉しく思っております」
「じゃ、じゃあせめて、ここにクロちゃん連れてきてよ! エリちゃん」
エリシー王女殿下は戸惑った様子で、
「い、今、お昼寝してるから無理です。ていうかパパ、ママが呼んでましたよ? 手伝えって」
「うう。リティちゃん! また来てね! そうそう、後でご褒美用意するから何でも言って!」
国王は名残惜しそうに王座の間を出て行った。
「あの……皆さん、休憩に入って下さい、です」
エリシー王女殿下が兵士達にそう言うと、彼らは伸びをしながら、退室して行った。本当は王女殿下と二人切りになるなど、許されないのだが、私は思ったよりも信頼されてるのかもしれない。
「王女殿下」
「あ、いつもの感じで大丈夫です」
私は頷いて立ち上がった。伸びをする。同じ態勢だったので背中が丸まってしまった。
それから、エリシーへ視線を向ける。私と彼女の関係は普通の友人だ。出会いは街の市場通りで、後から王女だと知ったんだけど。
「で、陛下は本気なの?」
そう聞くと彼女は自信なさげに、
「本気かも、です。最近、クロドロードの許嫁として貴族達に紹介し始めてるのです」
「ええ……。そんな勝手に?」
ロリコン、じゃなくてショタコン? だと思われたらどうするんだ。
クロドロード・ソルト・アリーナ王子殿下。エリシーの弟にして今年で四才になる未来の国王だ。
今のところ恋愛に興味ないけど、それ以前に相手が四才っていうはちょっと、ね……。
「あ、大丈夫です。わたしがフォローしておきますから。あの……また遊びに行って良いですか?」
「うん、待ってるよ」
ご褒美は今日はお預けかぁ。豪華な晩餐は少し期待してたんだけどな。でも、丁度良いかも。明日のこともあるし。
「じゃ、またね、エリシー」
「はい」
エリシーの笑顔に見送られ、私は王宮を後にした。




