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アルゴットの宣戦布告

アルゴットとの勝負の期日ですが、諸事情により、三日後から明日に変更させて頂きます。よろしくお願い致します。

 アルゴット・リーガンは私の召喚術の師匠だ。形だけは。

 彼女に教わったのは暴力と罵倒の言葉、後は……なんだろう。他に思いつかない。

 トルフィティ家の召喚術教育は、基礎をやらないから彼女の召喚術授業の最初の一言は『使ってみろ』だった。

 それで出来たのはフリーティとお兄様で私は一発で落ちこぼれ扱いというわけだ。

 ちなみに基礎を教えてくれたのはカナラさん。


「この人が、リティさんが言ってたアルゴットさん?」


「ふん。能無しがちょっと召喚術を使えるようになったからっていい気なもんだ」


「……」


「まぁいい。明日、トルフィティ家へ来い」


 姿を見て、ハスキーなその声を聞いた時は鳥肌が立ったけど、足が少し震えてるけど。

 大丈夫だ。今の私なら。

 バレないように、深呼吸。


「どうしてですか?」


「あたしと勝負をしてもらう。あたしが勝ったら、あんたはトルフィティ家へ戻って来るんだ。なんなら、荷物をまとめて来てもいい。能無しに負ける気はないからね」


 ああ、呆れて言葉が出ない。

 この矛盾よ。トルフィティ家が中流貴族に負けそうだから、私に術師大会に出てほしいんでしょ? 補助金が減ったら使用人にも影響があるから、連れ戻そうとしてるんだよね?

 どうしてお願いする立場なのに偉そうなのかな? この人は。

 ……まぁ、ね。散々イジメ倒して、自分より下の下だと思ってた人間に『お願い』する方法がわからないんだろうけど。


「はい、嫌です。受ける理由ないんで」


 私はにっこりと笑ってそう言った。


「……言える立場だと思ってるのかい?」


 いやいや、言える立場だろうが。なんで他人の家の使用人のオバサンの言うこと聞かなきゃならないんだよ。


「行こ、カリン。ていうか、なんの話してたっけ?」


「だから、このあたしを弟子に!」


「あー、うーん……」


「ええっ、悩むんスか?」


 カリンと一緒に二人の横を通り過ぎる。言い合いしてても仕方ない。

 そのまま歩いて行こうとしたのだが、背後から分かりやすい殺気を感じた。

 爪の術円に意識を集中させる。


「顕現せよ」


 飛び出してきた赤系カンガルー型召喚魔獣エイリが師匠の右足を受け止めていた。

 嘘だろ、後ろから蹴ろうとしたのか?

 呆然とした後、私は師匠を睨む。


「変わってないですね、暴力で言うことを聞かせようとするところ」


「ふん。能無しをしつけるには」


「耳障りです」


 私は静かに言って、


「明日、でしたっけ? 良いですよ。特別にあなたと勝負してあげます。でも、私に勝てますかね?」


 落ち着け、私。ここで口汚く罵倒したら、この人と同じだ。


「何……?」


「召喚術師のくせに足を出す人に、私は負けないですよ」


 私は笑って、召喚術を解除した。エイリが消える。


「ふん。明日にはわかることだ」


「そうですね。とても楽しみです。場合によってはトルフィティのお屋敷ごと消し飛ばしてあげますよ。何も残らないようにね」


 フリーティを見ると、顔を真っ赤にして手で口元を押さえていた。ん……? 一緒になって反論してくるかと思ったけど、どうした?


「お、お姉様、格好いい……! い、いや、ダメですわ、お師匠様が勝たないとうちが……で、でも……お姉様はネズミ、ネズミですわっ」


 あの子は複雑な精神状態にあるみたいだ。聞かなかったことにしよう。


「それでは師匠。明日に。心の準備しておいたほうが良いですよ。手加減しませんから」


「ほざいてろ」


 こっちのセリフだよ!! この野郎!

 とか思いながらカリンと共にその場を後にした。

 偉かった、私。色々我慢した。

 絶対勝ってやるっ!!

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