リティVS四人の男1
ようやく、街の南門が見えてきた。飛べる召喚魔獣を使えば数分で戻って来られたのだが、カリンの希望でそのまま散歩してきたのだ。
「リティさんと話せて楽しかったっス。うちに来てくれるの、楽しみにしてるから」
彼女の才能が伸びた理由がわかった。勉強熱心だし、向上心が高い。召喚術に関してならどんな些細なことでも真剣に聞いてくる。
「ううん、こちらこそ」
フリーティとの差はここかもなぁ。
と、そこで気がついた。前方の、南門前でがたいのいい数人の男達が二人の衛兵と何やら話しているのだ。どうやら、街の住人ではなさそうだが。
私は目を見開いて、足を止めた。
「どうしたんスか?」
「あいつら……」
カリンはピンと来てないようだけど、私は知ってる。窃盗で指名手配中のグループだ。街の依頼掲示板にも最近貼られていたはず。
もし、普通の旅人を装って街へ侵入してきたら、警察に連絡して確保してもらったほうが良いな。
見守っていると、衛兵の一人が何かに気づいた様子で少し声を荒げた。その瞬間、衛兵達に細長い蛇のようなものが絡み付き、
「なんスか!? あれ」
首元を噛まれてしまった。倒れ込む衛兵達は青い顔で動かなくなってしまう。
その時点で、私はすでに地面に円を描いていた。
「リ、リティさん?」
「解毒って出来る?」
「解毒……! 大丈夫っス」
察しが良くて助かる。
さて、威力は弱くなるが、悠長にしていられない。詠唱はすっ飛ばす。
「顕現せよ」
小声で呟くと、円から赤色の光が噴き出した。
こちらに気づく男達の表情が強張る。
「行け」
今なら一網打尽に出来る。赤い光を放った円から男達に向けて、一直線に土が盛り上がり始めた。
男達の前で地面から飛び出して来たのはモグラ型の召喚魔獣、イスリグ。両手の爪で彼らに襲いかかる。
しかし、
「!」
先程のヘビがイスリグの全身に巻きついてしまった。
私は舌打ちをした。少し油断したか。
「へへ、噛みついちまえっ」
こちらの様子をうかがいながら、男はそう指示を出した。召喚魔獣が傷を負うと、術者にも影響が出る。
ヘビの牙が私のイスリグに届く前に、杖の先端を円の中心に刺して、召喚術を解除した。
イスリグは消えて、ヘビは地面に落ちる。
私は走り出した。ここで戦闘になっても構わないが、衛兵達の傷が心配だ。予想通り、男達は街の中へと逃げていく。
「カリン、あの人達は頼むよっ」
「わかったっス。気をつけて!」
南門前を駆け抜け、彼らの背中を追う。
さぁ、どうしよう。幸い、この辺りは街の郊外で人気はないが、大通りや広場なんかに行かれたら人質を取られ放題だ。
私は例の通信端末、通称通信石を手にした。細かいノイズが走る。
「私です。指名手配の侵入者が街の中へ。住民の皆さんに。……はいお願いします」
視線を前方に戻すと、
「あれ」
門で対峙した時は四人だったはずだが、逃げていく男達の背は三つ。
「うおりゃーっ」
はっとする。横の街路樹の陰からから男の一人が飛び出て来たのだ。
バカかな?
「顕現せよ」
明らかに私を押し倒そうとしてきたけど、指の爪に仕込んである術用の円でカンガルー型の赤系魔獣を呼び出し、
「一人目っ」
魔獣のキックと踏みつけで地面に叩きつける。
「ぐはっぁあっ」
その背中に飛び乗るカンガルー型魔獣が私を見る。命令待ち。
「意識飛ぶまでやっちゃっていいよ。でも、絶対殺さないでね」
とりあえず、体を地面にめり込ませ、動けないようにしておいてもらおう。
「さぁ、あと三人」
私は再び駆け出した。




