ー戦うために必要な覚悟ー
俺たちは、逃げた。圧倒的な力の差を、俺は、知った。俺たちは、自分たちが、もっと強くなる方法を考えた。
だが、俺たちには今、行く宛先が無かった。このJOSは、自分が思ってるよりも生き抜くことが、難儀なゲームだということが分かった。
俺は、あの禍々しい黒い鎌を忘れない。あの時、団長は俺を庇って俺のコピーと戦った。
どうなっただろうか?あの基地から、 逃げて来てざっと1時間は、経過しただろうか。どうなったんだ。団長と俺のコピーの戦いは。くそっ!俺に力があれば!
でも、考えてみれば、何で、急に基地を襲って来たんだ?俺のコピーの目的は、何なんだろう。
俺が必死に考えてると、俺のポケットから声がした。
「さっきから、何考えてるんですか?なんかムーってしてますよ?」
俺は少しだけ怒りを含めた声で言った。
「何で、お前はのんきにしてんだ!行くあてもないんだぞ!」
意外にも、笑顔で返答が来た。
「あ、それなら大丈夫ですよ。団長の仲間さんから、この地図の場所に来てくれってメール来たので。」
俺は呆れた。何で重要なことを言わないんだ!こいつは!そう思うと、隣の女が声を発した。
「本当か!団長は、無事なのか?」
こいつは、カナエだ。団長が俺のコピーと戦ってる時に、俺が戦おうとしたら引き止めて、団長の命令により俺と逃げてきた女だ。実力は、でも女の方が上であるのは、確かだ。そして、レンの声で現状の話に俺は戻った。
「すみません。カナエさん。団長さんが、無事かは分かりませんが、この地図の場所で、これからの動きを説明するらしいです。」
なら、動くの一択だろうと足を動かそうとすると俺の身体が影で埋まる。何だ?っと前を見ると男がこちらを見ていた。
「す、すみません!前見てなくて。」
俺が素直に謝るとその男は、一瞬間が空くと、次の瞬間俺を攻撃した。俺の肩に飛んできた拳は重くて強かった。俺は吹き飛んだ。カナエが少し驚いた顔をして、声に出した。
「お、お前は!グランド!何をする?こいつは仲間だ!」
グランドと呼ばれたその男は、怒りを拳に握りしめて、2〜3メートル吹き飛ばされた俺を睨み言った。
「そのガキが、いなかったら団長は、死ななかった。」
その言葉で俺は、言葉を失った。カナエも驚きを隠せず口に出していた。
「グ、グランド。今の事は、どういう意味なんだ?」
男は、怒りを言葉で表現していた。
「そのまんまの意味だ!団長は、負けた!そいつのコピーに!そして、お前らもこの地図の場所にこいと言われたんだろ?」
この地図というのは、レンがさっきカナエと俺に見せた地図だった。
「だけど、そのガキは、ここで殺す!」
男の目には、しっかり怒りが宿っていた。カナエが、俺を守るかのように口にする。
「ま、待ってくれ!こいつはこいつで、コピーはコピーじゃないか!それにこれ以上戦力を減らしたら、私たちに勝ち目はない!」
男は呆れた顔で、言う。
「そいつが、戦力になるとでも?カナエ?お前頭狂ったのか?」
たしかにもっともだ。俺は、団長の入団テストであっさりやられた。弱さも実感した。けどよ、俺の使命は、奪うなよっと言いたかったけど今の俺に反論する権利はない。しかし、俺のスマホから反論の言葉が、口に出された。その声は、俺がさっき呆れた奴の声だった。
「グランドさん。では、あなたを倒せば、レイさんを仲間だと認めてくれますね?」
男は驚くが、理解した声で俺を見て口に出す。
「こいつが俺を倒すだと?小娘が調子に乗るなよ!」
レンは、にっこり笑って言う。
「人は、余裕を見せると意外な景色を見ることになりますよ?」
男は大声で笑った。
「はっはっはっは!いいだろう。カナエが存在を認めて、団長が成長性があると思い逃したこの男の実力を、このグランドが見極めてやる!」
俺は、2〜3メートル離れているのにも、その男の殺気が伝わって来た。俺は、動けない。そもそも俺は、戦闘なんて望んでないのに。男が、こちらを見て殺気を向けたまま言葉を放つ。
「どうした?怖気付いたか?おい!赤髪の女!てめぇは期待する相手を間違えたみたいだぜ。」
レンは不敵に笑う。
「レイさんは、やられませんよ。覚悟してここに来てるので。」
覚悟。そうか。俺は、死なないんだ。俺には、このJOSでやるべきことが、俺にはある。俺にしか出来ないことが。俺のコピーを倒すこと。それの為にここにきたんだ。俺の心の声と現実のレンの言葉が、重なっていた。
『覚悟があって俺たち(私たち)は来たんだ!」
男は笑い、返答した。
「面白い!お前らの覚悟がどれほどのものか見てみよう。俺のキングブラウンでな。」
そう言って、男は手甲のようなものをはめて放ったパンチの風圧が、2〜3メートル離れていた俺にも届いた。
「レン!レッドイスパーダを!早く!」
「はい!」
空中で取り出された紅い刀を下に向け、重力で一気に下に下がる。下で男は、足に踏ん張りをつけて俺たちの方に飛んできた。
「おい!嘘だろ?こんなとこに飛んでくるなんて?」
男は容赦なく俺を殴り飛ばした。
「くそ!痛ぇ!」
ガラスの窓を突き破って俺は、ビルの中まで吹き飛ばされた。俺は、少し画面が割れたスマホに手を置くとレンが口にする。
「強いですね。あのパンチ。そして、その腕力。相当です。」
俺は、安心した。だが、これ以上このスマホに傷が付けば、もう再起しなくだろう。
「どうする?お前これ以上は、危険すぎる。」
そう言うと後ろから、カナエの声がした。
「なら、私が預かろう。」
俺は、驚いた。ここはビルの10階である。でも、今そんなことは後にしよう。
「なんでだ?まぁいいや。預ける。」
カナエに預けたスマホから笑顔で声がした。
「頑張ってください。」
こいつ、いつもはふざけてるけどやっぱりお前が、相棒で良かった。上から男の声がする。
「余所見すんなよ!」
放たれた拳は、俺の頭に直撃した。俺はそのまま下へ落ちていく。
「ガハッ!ヤバい。」
かろうじて、ビルの地下駐車場に叩きつけられても生きてはいた。だが、目の前がブレていた。脳が揺れてるからか?俺は、倒れ込んだ。指もジンジンで、動かせねぇけど負けられない!俺は、フラフラ立ち上がった。
そうすると、急に目の前に電子画面が現れる。その画面にいたのは、レンだった。
「レイさん!大丈夫ですか?私はカナエさんと一緒で大丈夫です!そして、今レッドイスパーダとリンクしました。これならサポート出来ますね!」
レンの後ろからもう一人声がした。カナエだ。
「おい、レイ。あいつのパンチをボコボコ喰らってたら死ぬぞ!お前は馬鹿か!レッドイスパーダになんの能力があるか知らないが、とにかく距離が近いと負けるぞ。お前はコピーを倒すのだろう?なら立て!」
カナエは最初窓で出会った時は、冷酷な奴だと思ったが、案外そうでもないらしい。人は見かけによらないな。
男の足音で近づくのを察知した俺は、音を立てず静かに距離を取った。
男は、俺を探しているようだ。あの行動を見る限りまだ、俺は見つかってないらしい。
頼むから、頼むから気づくなよ。男は、言った。
「無駄だ!ここにいるのは分かってるからよ!でも隠れてるな。だったら狭めればいいんだ。探す範囲をな。テージ!拳壁!」
壁がだんだんと収縮されていった。まるで、壁の後ろから殴られたように段々と距離が近くになる。
俺は思った。見つかるより先に斬ればいい。これしか今、突破方法はない。
「3.2.1.0!レッドイスパーダ!」
0の瞬間俺は、迅速に男の首を狙うが、踏切の反動で男は肩を斬られた。でも、浅い。男は後ろを向き、言った。
「いい決断だ。だが、お前は踏切の反動にたえきれなかった。本当の踏切には、その反動にも耐えられる力がいるのさ。見せてやるよ。」
男が足をドンと地面につけると、俺の視線が揺らいだ。
「オラよ。」
俺は、放たれたパンチを足を曲げて交わした。
これは、偶然の出来事だった。視線が揺らいだ瞬間、俺は男を見上げる態勢になった。男は驚いた。
「何?」
この偶然をチャンスだと思い、俺は男の胸を斬り込んだ。男の胸から血が、溢れる。
だが、男は怯まずしっかりと足で構えて、俺の腹に拳を当て言った。
「テージ!王拳!」
俺は、さっきの数倍飛ばされた。下を見たら、ビル10階があるくらいの上空にいた。またもや、電子画面から声がした。
「レイさん!こうなったら一撃で仕留めるしかないです。レッドイスパーダを鞘にしまってください。」
「何でだ?刀しまったら相手が切れない。」
「でも、このままではやられます。なら、博打しませんか?当たったらレイさんの勝ち、当たらなかったら死です。」
たしかに、このままだとやられてしまうかもだけど。でもな、いや、やる。やるしかねぇ。
「分かった。お前に賭ける!」
「分かりました。テージ!プロテクション!」
そう言うと鞘が紅く光る。
「これで、あなたがあの男を斬ったら最大規模の斬撃が生まれます。ただ。」
一呼吸レンは置くと残念そうに言う。
「ただ、深く当てないといけません。さっきのような浅い攻撃では起動しません。」
「そうか。分かった。やってみる。というよりやるしかない。上空で。」
下から上を見上げていた男は言った。
「余所見すんなって言ったよなぁ?喰らえ!最大級の俺の拳!テージ!終拳!」
勢いよく放たれた拳を、綺麗に俺は鞘で受け止めた。
「すげぇ、この鞘。レンには、お礼を言おう。」
俺は受け止めた拳をはじき、放った。赤き鞘で相手を斬りつけた。
「テージ!!!プロテクション!レッドイスパーダ!」
斬りつけた斬撃が、徐々に大きくなって、男が吹き飛んだ先で爆ぜた。その威力は絶大だった。
「よし!やった!やったんだ!」
男は下で床にめり込んでます倒れていた。だが、俺も上空だったので段々と落ちていった。落ちた先には、カナエとレンがいた。レンが声に出す。
「やりましたね。さすがです。信じてましたよ。」
カナエも頷きながら、声に出す。
「新人のお前が、グランドを倒すなどすごいな。ほら、立てるか?」
カナエは、俺に手を伸ばした。俺は手を掴んだ。
「悪い。」
後ろから男が、血を流しながら俺の肩に手を置いた。男は言った。
「俺を倒したぐらいで調子乗んなよ。カナエや俺はまだ下っ端の方だ。」
レンは驚いた。
「これで、下っ端なんですか?あなたたち何者なんですか?」
男は笑い答える。
「あぁ、その話もこの地図の場所で話すよ。カナエ、肩借りていいか。このガキの傷が結構効いた。」
「グランドめ。意地っ張りだな。ホラ。」
そうか、忘れてたけど、一応仲間?なのか。男はこっち見て言った。
「何してやがる?俺に勝ったんだ。お前は、罪なき仲間さ。」
そうか。勝ったのか。男に言われて俺は実感した。勝ったんだ。
そして、俺はまた、成長した。