ーログインした俺が見たもう一人の俺ー
俺はログインした。正義の聖域。ジャスティス オブ サンクチュアリ、通称JOS。
そして、今目に見えているのは、俺の部屋だ。数々のオタクグッズや、変わりない黒のデスクトップがある。
だが、一つおかしな点がある。それは俺の分身が部屋にいないことだ。
このJOSは日本が異世界化されたものだ。ここにある人や町はコピーであり、現実からこのJOSにログインするものは『自己満』の為にログインする。そして、自分の人生にとっての邪魔者を消すことを目的としている。
話を元に戻すが、なぜ俺の分身は、ここにいないのだろう。いつもの俺なら、ここでゲームに浸っているハズなのに。
そういえば、親父が俺の分身はバグを起こしているとか言っていたな。俺がいないのはそのせいか。
とにかく俺の分身を止めに行こう。
そして、家のドアに向かうと、俺のスマホから赤い髪の美少女が現れる。こいつの名は、赤道レン。俺の親父が作った意思のあるAIである。
「どした?何か、警戒してるような顔だな。」
「敵です。というより、家の窓から、誰かがこちらを、覗いています。」
俺の家のリビングの窓にカーテン越しに、誰かがいることは、分かった。だが、カーテンで全貌は、見ることが、出来ない。
「誰だ!」
カーテンを開けると、そこには、白のサラサラしてる髪に、黒の瞳をしていて、黒のドレスを着た、俺より背が低い女の子が、こちらを、見て飛んでいた。
すると、女の子は、少し驚いた顔をして、俺を見て、はっきりと言った。
「殺す!」
次の瞬間、短剣が投げられ、窓が割れ、俺の右耳の方を通過し、床に刺さっている。
俺は、動けなくなっていた。恐怖と悪寒を、感じていたからだ。だが、俺のスマホからする声で我に帰った。
「逃げましょう!どこかに。早く。」
「そ、そうだな。なぜ、攻撃してくるかは分からないが。」
「逃がさない。テージ!煉獄雨!」
女の子が放った言葉の意味よりも、「死」を感じた。女の子の後方に現れる、大量の炎が付いた短剣が、俺を襲った。
「ガハッ!熱い!何だ、何だ?コレ。」
刺された傷口から、血が溢れ、そして、熱い。
「レイさん!ヤバいですね。レイさん、私の考えた結果、戦った方が、良い方に進むと思います。」
「何言ってやがる。あんな奴に、勝てる見込みがないことくらいお前でも分かるだろ!」
「大丈夫です!私が援護するので!ほら、来ますよ。」
そうレンが言うと、また女の子の後方から燃えている短剣が現れた。
「悪運の強い奴め、というよりお前あの黒い鎌はどうした?」
「黒い鎌?何だそれ?」
「とぼけても無駄だ!沢山の人を殺し、血に染まったあの黒い鎌をさっさと出せ。」
おそらく、この女の子が話してるのが、俺のコピーのことだ。くそ、どうやったら分かってくれるんだ。
「待ってくれ!落ち着いて話そう!」
「うるさい!この人殺しがぁぁぁ!」
というと短剣がまた降ってきた。ギリギリでかわせたが。
「レイさん!その女の子には、今、会話しても、私達の話に、聞く耳を持ちません。だから、戦いましょう!」
「戦うってどうやってだ。」
「私の画面をタップしてください!」
そして、言う通りタップすると、空からこちらに何か向かってきていた。そして、女の子の肩を過ぎ去り、肩から血が出ていた。そして、音を立てて床に刺さった。
「ぐっ!」
「何だ!?ありゃ?」
「戦うための刀です。」
床に刺さった刀の鞘は赤く、持ち手は、黒かった。
「名をレッドイスパーダです。」
女の子は驚いた顔をしていた。自分の肩の傷よりも、刀のことに対しての疑問だった。
「どういうことなんだ?一人の人間に一つの神器が与えられるはず、こいつは、黒い鎌の持ち主では、ないということか?」
「そいつは、この世界の俺だ。俺はJOSログイン者なんだ。」
「なんだと?そんなハズはない。この世界の者は神器が与えられない。しかし、そいつは黒い鎌を持っていた。」
「あぁ。悪い。俺の分身は、エラーを起こしたんだ。おそらく、それが原因で作られた鎌なんだ。」
「エラーだと?」
「そいつのエラーして、殺人鬼になってる状態を止めるために、俺はこの世界に来たんだ。それが俺の「自己満」さ。」
「悪かったな。同じ顔だからって、理由で攻撃して、私の名は白鈴カナエだ。」
「俺の名は、黒夜レイだ。こっちのサポーターが、赤道レンだ。」
「よろしくです。って刀しまいますね。」
そういうと刀は消えた。
「とりあえず、落ち着くところで、話そうぜ」
そして、俺たちは移動した。なんとも言えない普通のカフェだ。
「まず、お前が使ってたデージとか、後方から現れた短剣とか何なんだ。」
「あれは私の神器の名はホワイティングで、燃えるというのは、そういう短剣だからだ。」
「神器には、能力があるのか!必殺名煉獄雨。あの時は死ぬかと。なぁ、レン。」
「どうしたんですか?」
「俺の刀結局鞘から抜いてないけど、どう言う能力があるんだ?」
「分かんないです。私も実は、びっくりしてるんですよ?あの刀の存在は。」
「は?」
「ゲームマスターに、プログラムされただけなんです。レイさんが、戦う場面になったら、これがいつでも出るように。」
「んだよ。使えな。」
「あーもう怒りました。知りませんから。フンッ!」
スマホの電源が勝手に切れる。
「やれやれ、騒がしいな。それで、レイ達はレイのコピーの場所を知ってるのか?」
「いや、知らないなぁ。たしかに止めろ!とは言われて来たんだが、場所は知らない。てかこの世界魔法使えんだろ?探知魔法かなんかで探せないのか?」
「たしかに、このJOSログイン者は、魔法が使える者もいるが、私は魔法をまったく使えないんだ。しかし、短剣のつかいかたはマスターしたぞ。」
「自慢気に話すけど、それって分かんないってこと?」
「うん。そだけど?」
大丈夫かな。こいつ。計画性皆無だな!オイ!
「これから、どうするつもりなんだ?」
「君達を、仲間に入れて、殺人鬼の計画を止める。だから、君達には、我が団に入っていただきたいんだ。目的は同じなら、仲間にした方がいい。」
「ま、数は多い方が助かるしな。俺たちも行くあてもないから。とにかく、追いていくさ。俺のコピーを止めるために。」
「あぁ。だが、そのためには、我が団の基地に行かねばな。もちろん、皆JOSログイン者だ。行くぞ。そいつらの所へ。」
俺が連れていかれた所は、見た目は、ほとんど倉庫だが、中身は凄かった。この広い倉庫に、人がビュンビュン飛んでいて、あっちこっちで、魔法の音が聞こえた。
「このドアの先に私らを、まとめる団長がいる。」
そして、俺は静かにドアを開けると、そこには、体が大きく、目に鋭さがある人だった。
「お前が、殺人鬼の本体か。そして、お前は、誰に頼まれたんだ?お前のコピーの停止を。」
「ゲームマスターであり、俺の親父だ。」
「そうか、あの人は、お前の親父か。なるほどな。」
そして、その男は、少し考えるたような顔をしていたが、口が開いた。
「よし、いいだろう。ただ、入団試験を受けてもらおう。そして、合格したら、いっしょに戦おう。己の「自己満」のためにな。」
「ありがとう。よしって試験は何するんだ?」
「簡単だ。俺たちに必要なのは、強者だ。だから、この倉庫にいるやつ三人倒したら、合格だ。制限時間はない。寝込みや、場所は決めない。もっとも、お前に殺せるような奴らでもないがな。」
「そうか。レン!タップだ。」
「何ですか?分かりました。はいっ!」
「何?」
「来い!レッドイスパーダ!」
そういうと、背後から刀が現れる。
「よしっと。さてと、鞘から抜いて、俺の名は黒夜レイだ!あんたは?」
「おい、まさか、団長の俺といきなりやるっていうのか?」
「あぁ、そのまさかだ!」
「ククク。いいぜ!ただ、文句は言うなよ。来い!ゴールドボリアン!」
男の背後から取り出されたのは金色の輝く斧だった。
「若いな!お前!テージ!黄金斬!」
俺はかわせたけど、あの斧は、やばいことは分かった。切られた鉄の倉庫の切り口が、金になっていた。
「これが、お前の能力か。」
「これだけではない。俺は魔法を使える!マギア!ゴールドエレメントバースト!!!」
放れたのは、金の弾丸だった。
「ぐわぁぁぁ。」
「まだまだ行くぞ!テージ!黄金操!」
さっきの切り口の金が刃に変化していた。必死に自分の刀で弾くが、防戦一方だ。強い。 俺はこんな試験で、止まる訳にはいかねぇ!だから、俺は団長の部屋を斬った。そして、外に出た。
「隠れても無駄だ。テージ!黄金道!」
黄金で出来た道は、あっという間に俺の足の後ろにあった。
「そこか。テージ!黄金操!」
今度は、黄金で出来た道が、縄となり、俺の方向へ飛んできた。
「くっ。負けた。」
「ちっ!度胸だけか。ガキめ。とっとと出てけ。」
これが弱さか。俺なんて無力なんだ!畜生!
「団長!」
「どした?カナエ?」
「入口の方に、黒い鎌が、来ました。」
「何!?」
「俺のコピーか。俺に戦わせろ。」
「今さっき、負けた奴は、そこで、敗北に浸ったろ。」
「くっそ!」
団長達は黒い鎌の方へ走っていった。
「やめろ!ガキ!俺の基地で荒らすんじゃねぇよ!」
「何だ?オッサン。俺を止めてみろ!テージ!暗黒曲!」
そして、円状を描いた斬撃は、形となり、範囲が狭まる。
「何だ?しゃらくせぇよ!俺は団長だから!こんな青2才に負けるわけな・・・。」
「うるせー!死ね。」
「ガハッ!こいつ!速い。見えなかった。」
「だろうな。こいつの名は、シャウトデスサイズだ。能力は、自身の斬撃を消すことが出来る能力だ。」
コピーは団長を睨みながら勝気になって言う。
「てめーらが勝てる代物じゃねーんだよ!」
「これが俺のコピーか。ようやく会えたな。」
団長はハッと俺の声で後ろを向く。そして、驚いて言う。
「!?お前、黄金操で縛られてたハズなのに。」
「斬ってきたんだ。レッドイスパーダでな。」
「今度の相手は、てめーか。いいぜ、止めてみろ。」
音もなく俺の腹は切られた。
「ウゥゥ。てめーを倒すために俺は来たんだよ!負けるかよ。」
「だからって能力も使いこなせてないてめーに何が出来るんだ?あぁ?」
「ぐぅぅ。それでも、お前を必ず倒して見せる。」
団長は俺に向かって叫んでいた。まるで避難させるように。
「やめとけ!小僧!俺に負けたお前じゃ無理だ。カナエ、気絶させて回収して逃げるぞ。」
「はい。分かりました。行くぞ、レイ。」
カナエはがっしりと俺を抱え、俺はもがくがいっこうに抜け出せない。相当な力だった。
「離せ、カナエ!レンも何とか言え!俺ならぁぁぁ出来るはずだ。」
「引くのがいいと思いますよー。レイさん、馬鹿ですねー。」
「こいつぅら。」
俺のコピーは余裕な表情というよりは、楽しそうな顔をして俺の方を向き、言っていた。
「また、こいよ。レイ。俺もレイだがよ。ただ、一人遊び相手がいるな。くっくっく。」
団長は立った。そして、苦しい顔だが笑っていた。
「俺が引き受けてやる。まだ、喧嘩の途中だったな。」
俺はその顔を見て心配になって言う。
「団長!」
「行け、カナエ!」
「待て、カナエ!俺を離せ!」
カナエも素直に応じた。
「分かりました。団長。健闘を。」
団長は死にそうな声で返事をする。
「あぁ。」
俺は俺のコピーを睨むが、どうしようも出来ないことを知ってしまった俺は、その気持ちを表すように俺のコピーに言う。
「てめー。こんなことに俺を巻き込みやがって。俺はキレてるからな。覚えとけよ。」
「あ、レイさん。冷静になりましたね。なんか、さっきのレイさんは、自分らしくなかったですからね。いつものレイさんは、冷静なのに。さっきのレイさんは猛獣っぽかたですよ。」
「悪い。レン、カナエ。行こう。」
そして、俺たちは、またあて先がなくなり、旅が始まった。