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悪役令嬢に転生しても貴方を探す

作者: 雪月夜

日間ランキングを見て驚きました。

読んでくださった方、評価をくださった方

ありがとうございました。

気がついたのは、5歳の誕生日だった。

幼稚園の友達を招いてお祝いをしてもらっていたら、酷い頭痛に襲われ泣きだした。


周りに心配をかけながら、熱を出して3日間寝込んだ。


何に気がついたか?

信じられないだろうが、私には前世の記憶があることだ。


しかも、自分の名前に前世で覚えがある。


時沢朱里。

それが私の名前だ。


前世で娘がハマって、散々聞かされたゲーム。乙女ゲーというらしい。


あり得ないことに、私はゲームの世界に転生というやつをしてしまったのだ。

しかもヒロインのライバルキャラ。


いわゆる悪役令嬢だね。


時沢家は複数の企業を傘下に収める財閥。

私はイケメンになるはずの兄と弟がいる。

通う幼稚園も、名門私立大学の付属で、小学校中学校高校と、余程のことがない限りエスカレーター式に上がっていく。


勿論乙女ゲーの舞台だから、主役級のメンバーは格式高い家柄でお金持ち。

お約束で、髪の色や瞳の色はあり得ない感じの人がいる。


私は悪役で、ヒロインを苛めぬき、最後は勘当されて自殺する話になっている。


ゲーム開始は高校なので、まだ先のこと。

でも油断大敵だ。

勘当はまだしも自殺は嫌だ。


まず鏡を見た。

栗色の髪で明るい茶色の瞳。

美幼女だけど、気の強そうな顔。

睨まれたら怖そうな顔だね。


確か、ゲームでは、兄たちとは仲が悪く、両親も冷たいはずだ。

そこら辺から変えていこうか。


小学生の間、頑張った。


両親や兄たちには、適度に甘えたり甘やかしたり。

記念日にはプレゼントを欠かさない。

多少やり過ぎた感はあった。

鏡を見てできるだけ優しい顔の練習をしたり。


お友達とも、上下関係を作らないように気を使った。

これは難しい。

自分がお金持ちの令嬢で、親同士の付き合いの影響はありありだから。


あ、勿論、勉強や運動も手は抜かない。

習い事もあるし、なかなか大変だったよ。


ゲームの世界のお金持ちだから、お手伝いさんや運転手さんなんかもいる。

にこやかに接して、悪役から逃げ続ける。


そんななかでも、一番気にかかっているのは前世の夫だ。

私がどんな風に死んだのかは忘れた。

でも夫は病で辛い思いをして亡くなった。


夫が転生していないか、もし転生していたら絶対に見つけて幸せになってほしい。


そのためにも、悪役なんかやっていられないのだ。


しかし、大人の社会の縮図でもある学生生活。

派閥やら取り巻きやら、まじ勘弁してほしいことがてんこ盛り。


中学生になり、思春期を迎えて、兄弟にも気を使いながら、いや、まあ頑張った。

両親や兄弟からは愛されていると思う。


兄は1つ上で弟は2つ下。

シスコンにならない程度にと頑張った結果、見事なシスコンになった。

なんでやねん。


高校生になったら、ヒロインが登場する。


攻略対象とかは、生徒会の面々とか、私の兄弟も含まれるみたいだ。


違う高校に無理にでも行こうかと、本気で考えたこともある。

しかし、夫が転生したなら、ゲームに関係ない場所ではないだろうと思う。


例えモブキャラでも、舞台になるのは高校だから、彼を探し当てるには普通に進学するのが無難だ。


胃薬を瓶ごと飲みたいほど気を使い、家族仲良く、平和を目指し続けて中学生を終えた。


小中高と、多少の生徒の出入りはあったものの、主要メンバーは変わらない。


ヒロインは高校に、素晴らしい成績で入学してきて、攻略対象を次々に落としていくはずだ。

勿論、ヒロインは普通の家庭の娘。


その新鮮さを武器に、逆ハーを築くのか、誰かに狙いを定めるのか、とにかく私が悪役として、関わり貶められるのはごめんだ。


幸い話の都合上、ヒロインと同じクラスにはならない。


私は極力目立たないように、髪型も地味にして、周囲には笑顔を、一層勉強に運動に習い事に時間を費やした。


ヒロインは桃色の髪で赤い瞳。

高校1年、たちまち生徒会メンバーと親しくなったと噂に聞いた。


私は時沢家の人間として、恥ずかしくない成績を保ちながらも、地味に平和に心掛けながら、夫を探す。


真面目で少し意地っ張り、でもどこか抜けたところもある、愛しい夫。

彼は転生しているだろうか。



ゲームの主要メンバーは、まずヒロインの多岐川麻友、成績優秀で明るい娘のはず。

部活動はしていないと思う。


生徒会長の高井戸輝也、青い髪に水色の瞳で時沢家と双璧を成す、有数のグループ企業の次男だ。

勿論イケメンで強気なタイプ。


副会長は兄の時沢浩介、なぜか金髪で緑色の瞳、多分外人の血が入っているんだろう。

そうに違い無い。

ツンデレイケメンのはずだ。


後のメンバーは木崎悠来人、有名な日本画家を祖父に持ち、両親は書道家と茶道家。

生真面目なメガネイケメン。


体育会系イケメンは、富坂剛史。

確か元プロサッカー選手の父親とモデルの母親がいて、本人もサッカー部のはず。


無口系イケメンは、家柄が凄いらしい中津川真司、私が直接ゲームをしたことが無いからそれくらいしか分からない。


攻略対象には教師もいるらしい。


お約束で、生徒会長と私は親の決めた婚約者のはずだったけど、小さいうちに、父親や兄弟に甘えまくり、パパとお兄ちゃんたちがいるからいいの的なことを言って、婚約はしていない。


高校最初の夏休みまでは、特にヒロインに関わることもなく、無事に過ごした。


細かいイベントは覚えていない。

でも、文化祭あたりが怪しい。

気をつけよう。


そして、夫はいるだろうか。


夏休みは家族で海外旅行に行ったり、別荘に滞在したりで、なかなか夫を探せない。


家族仲良く、愛される娘も心地よいけど、彼を見つけたい思いが一番だ。


秋になり、文化祭の日がきた。

あり得ない設定の世界だから、文化祭もゴージャスだ。


お金持ちの子女たちは、付き人みたいな人を連れている。

勿論付き人も生徒だ。


私にも付き人がいる。

幼い時から遊び相手にもなり、幼稚園から共に通う人。


西洋風なら騎士とか執事みたいな感じ。

ゲームでは、散々我儘を言う、横暴な私に嫌々従う人。


ちゃんと大人しく、優しく接してきたから多分嫌われてないと思う。


学校内で、付き人は、いつも側にいるとは限らない。

ゲームの世界でも今は現実と同じ。

それぞれの生活があるはずだから。


文化祭2日目の夕方。

最後は花火が上がり、恋人同士や親しい人たちが一緒に過ごす時間。


その少し前に、ハプニングが起きた。


ほとんど見たことが無かったヒロインが、つかつかと私に歩み寄り、校舎の裏に連れて行かれた。


心臓バクバク、胃が痛い。


「あんた、転生者でしょ」

「あ、あの、えっと」

「ちゃんと仕事してよ。イベント回収できないから、悪役やりなさいよ」

「いえ、その、こちらにも事情が」

「やり難いのよ全く、能無し悪役のくせに」

「あなたは充分魅力的だから、私なんかが」

「当たり前でしょ。私はヒロインなんだから主人公なの」


なんかこの人怖いよ。


「他にも転生者がいるっぽいから、面倒くさいのよ。あんたが悪役ちゃんとやらないから余計にね」

「悪役無しじゃだめですか」

「うるさい、あんたは引き立て役やれ」


襟首掴まれた。怖い。


「あんたがやらなくても、私が悪役の評判広めてやるから」

「それは、ちょっと困ります」

「ふん、能無しね。精々嫌われなさい」


突き飛ばされて尻もちついた。

いや、逆じゃね?

さっさと去るヒロイン怖い。



呆然としてたら、付き人の浩史君が探しに来てくれた。


「大丈夫ですか?」


手を伸ばし、立ち上がらせてくれた。


「あ、ありがとう」

「聞こえていましたけど、随分失礼な人ですね」

「そ、そうかな、凄く人気のある人でしょう?」

「そうですかね、あまり知りませんが」

「あ、花火始まるね。浩史君は誰かと見に行かないの?」

「特にそういう人はいませんから」


花火の上がる音が聞こえ始めた。


その時、どこから迷い込んだのか、柴犬の子供が現れた。


くるんと巻いた尻尾、つぶらな瞳。

薄い茶色の毛並み。可愛い。


首輪はしていない。

警備が厳重な学校にどうやって入り込んだのだろう。


私を目掛けて走り寄り、撫でてって感じに見上げてくる。


制服が汚れるのも構わず、撫でて抱き上げる。

可愛いよお。


「朱里様、犬好きでしたっけ?」

「えっと、柴犬が好きなの」

「まさか、飼うおつもりですか」

「みんなが許してくれたらだけど」

「そうですか」


その後は、柴犬を抱いたままの私の分まで、荷物を持って来てくれた浩史君と、運転手付きの車で帰宅した。



両親や兄弟は、動物アレルギーも無く、血統書付きの犬ではないけど、私が世話をする約束で、どうにか飼うことを認められた。


私の部屋にケージを置き、トイレの躾から始めた。

柴犬は雄で、ケンと名付けた。


ケンは賢くて、トイレもすぐ覚え、悪戯もしない。

散歩は朝早くと、習い事の合間の夕方にも行く。


お風呂は最初少し嫌がったけど、すぐ慣れてくれたから、ケンは手触りも良くて人懐っこく、みんなから可愛いがられるようになっていった。


ケンと名付けたのは、夫の健一から名前をもらった。

前世で、夫も私も犬好きで、何度か犬を飼おうとした。

でも、私は柴犬が好きで夫はゴールデンレトリバー1択。


仕事の忙しい夫より、私が世話をするのは目に見えている。

私に大型犬は、子供もいるから難しい。


お互い我儘を言わない結果、犬を飼うことは無かった。


ケンは小さい体で、私の番犬のように、尻尾をくるんとさせて歩く。

餌の好みもはっきりしている。

そのくせ、甘える時は凄く可愛い。


現れたタイミングも、場所も不思議だ。


私は、ケンが夫だと確信した。

幸せにしたい夫が犬になるとは、犬の幸せって何だろう?


とにかく一生懸命お世話をした。


習い事で、どうしても夕方の散歩ができない時は、なぜか浩史君が行ってくれたけど。


付き人だから、ケンの餌を選びに行く時も、首輪やリードを選んだのも一緒だった。



学校では、1年生が終わり、2年生になって、少しずつゲームは進んでいるようだ。


ヒロインの多岐川麻友は、時々遠くから睨んできたりしていたけど、もう関係ない。


私はケンを可愛いがり、幸せにするのだ。



ケンが現れてから、私は少し落ち着いて周りを見るようになった。


幼稚園から一緒の人たちが多い。

人付き合いをできるだけ避けてきたけど、友達は少数いる。


以前より余裕を持って、数少ない友達と交流を深めていける。


習い事やケンのお世話だけでなく、友達と遊ぶことも増えた。

彼女たちから聞くヒロインの話は、あまり楽しいものではなかった。


私は婚約してないけど、婚約者がいる人は意外と多い。

まあ、結婚は大学を出てからだけど、婚約している以上、普通の彼氏より重い関係だ。


ヒロインは、婚約者がいる人も巻き込んで逆ハーを形成しつつあるらしい。

当然、女子からの目線は冷たい。


他人事ながら大丈夫なのかと思わなくも無いが、私にはケンがいる。

そして、忙しい私に気を使ってくれる浩史君もいる。


このままヒロインに関係なく、卒業できたら安心だなあと祈るような気持ちになる。



高校2年生の終わり頃から3年生になる辺りから、私に突き刺さる視線が若干増えた。


やはり悪役設定は進められているのか。

婚約もしてないからゲームのイベントである婚約破棄は無いはず。


兄たちの卒業パーティーでは、元生徒会メンバーからの嫌な視線はあったけど、決定的な場面にはならなかった。


兄も大学生になり、弟が高校生になり、心細いなか、ケンと浩史と友達が救いだった。



ヒロインは、同級生の男子たちを落としていき、とうとう私に牙を剝いた。


廊下で私に近づいて転ぶ。


「朱里さん、酷いよ」

「えっ、私?」


勿論、冷静に見れば、幼稚な言い掛かり。

むしろ何も無いのに転ぶヒロインの演技力は凄いと思う。


ヒロインの教室に入ったことも無いのに、教科書を破られた、体操着を切られた。

水を浴びせられた。


そんなお約束がヒロインから語られるようで、ヒロインの落とした連中からは憎悪を向けられる。たまったものじゃない。


それでも、勉強や運動、習い事も頑張るし、ケンと過ごす時間が癒やしてくれる。


辛い日はケンを抱きしめて撫でる。


「ケン、大好き」

「ワンワンっ」

「うふふ、凛々しくて可愛いよ」

「ワフッ」

「ケンは幸せかなあ」

「オンッ」


犬の幸せは、やっぱりお嫁さんを見つけてあげたりするべきかな?

まだケンには早いか。


ああ、でも犬の寿命は人より短い。

また見送ることになるのは悲しいけど、それが運命なら、精一杯大切にしよう。


自分の力でケンを養うためにも、勉強をもっと頑張ろう。



ゲームの最終イベントは、勿論卒業パーティーの日だ。


それまでにヒロインから逃げ続けて、悪役を回避できるかな。

彼女はもう、攻略対象者かどうか分からないけど、一部の教師まで巻き込み、常に男に囲まれている。


とにかく威圧感が半端ない。


高校最後の文化祭、気をつけて1人にならないようにした。

友達は、婚約者がいる。

だから花火は浩史君と見た。


「浩史君、いつもありがとうね。好きな人とかできたら、ちゃんと言ってね」

「朱里様の付き人で充分です」

「様は何か、やめない?長い付き合いだし」

「朱里さん、ですか」

「うーん、小さい時みたいに朱里でいいよ」

「じゃあ、僕も浩史でお願いします」

「うん、浩史お散歩とかありがとうね」

「朱里が大切にしてるからね」


なんかちょっと照れ臭かった。


高校3年生、卒業が近づくにつれ、ヒロインとその取り巻きからの威圧が怖くなる。


浩史が結構側にいてくれるから、まだなんとか耐えられる。


ヒロインは噂では、成績はあまり良くないらしいとか。

あれだけ逆ハーに力を入れてるから、無理もないか。


ああ、卒業パーティーが怖い。

悪役のような評判は流されてるみたいだし、みんなの前で恥をかかされるのは間違いなさそうだ。



ケンと浩史に甘えて、癒されながらもその時が近づいてくる。


何もしてないのに、突き刺さる視線。

励ましてくれる友達や浩史がいても、胃薬と仲良くなってしまう。



ついに、卒業式の日がきた。

卒業式は講堂で行なわれ、その後立食パーティーになる。


ケンの朝の散歩、餌と水をあげてブラッシングをしながら話しかける。


「正直どうなるか怖いの」

「クゥーン」

「頑張ったつもりだけどね」

「ワフッ」

「でも、どうなってもケンは幸せにする」

「オゥン」


大学に上がるためには充分な成績を取った。

でもヒロインのストーリー補正が怖い。

ゲームでは、大学進学を取り消され、時沢家の恥として勘当される。


この所、顔色の良くない私を、浩史が迎えに来てくれて、車で学校に向かう。


「いよいよ卒業だけど元気ないな朱里」

「ありがとう浩史。将来の不安かな」

「今日は僕がちゃんとエスコートするから」

「うふ、ありがとう」

「何があっても僕は朱里の味方だから」

「あはっ、素敵、浩史王子」

「冗談言えるから大丈夫か」


なんだかんだ冗談を言いながら学校に着く。


教室で最後のホームルーム、整列して講堂に向かい、卒業式。


卒業証書をもらって教室に戻り、友達同士で泣いたり笑ったり、荷物をまとめたら、パーティー会場に早変わりした講堂に行く。


保護者や、大学の先輩として、元生徒会のメンバーも来ている。

何も無しでは済まないだろう。


できるだけ隅っこの方で、浩史と一緒にいた。


でも、とうとうその時がきた。


「時沢朱里、前に出ろ」


いきなり呼び捨てだ。

保護者もいるのに大丈夫なのかな。

講堂の壇上に、いつの間にか上がっていた、先輩ではない同級生の元生徒会長。


その他にもヒロインを囲む男子生徒たち。


「どうしよう、知らない人だし」

「理事長の息子ですね。僕がついていますから大丈夫」

「ありがとう浩史」


視線を浴びながら、壇の前まで進む。

浩史はうしろに付いている。


「時沢朱里、お前のこれまでの行いは分かっている。その恥知らずなことの数々は許されない。よって大学進学は取り消し。今この場で多岐川麻友さんに対しての謝罪を要求する」


呆然とする。

理事長の息子が、そんなこと言っていいの?

ヒロインに寄り添うように、壇上に上がる先輩の元生徒会役員たちもいる。

その中に、高井戸先輩はいない。

兄も勿論いない。


この学校は時沢家と高井戸家からのかなりな寄付金で潤っているはず。


自分の心配もだけど、この人たち大丈夫?


「何とか言え、時沢朱里」

「あの、私は何もしてません」

「ふざけるな。麻友に対しての苛めや嫌がらせ。知らないとは言わせない」


ヒロインはお約束通り、涙ぐみながら理事長の息子の腕にすがる。


「あの、私が何をしたのか教えてください」

「白々しい。麻友の教科書を破り、体操着を切り、水をかけた。取り巻きを使って悪口を流し、階段から突き落とした」

「そんなこと、してません」

「とぼけるとは図々しい女だ」


ついに女呼ばわり。

保護者たちや、数人を除く教師は険しい顔になっている。


「階段から突き落とされたというのはいつの事ですか?」

「うん?お前は誰だ?」

「時沢朱里の付き人ですが。朱里様のスケジュールなら私が把握しています」

「ふん、先週の火曜日の放課後だ」

「先週の火曜日ですか。朱里様は体調を崩されて早退していますね」

「嘘をつくなっそんなはずがない」

「学校の記録にもあるでしょう。それから水をかけたとは、どこで?教室なら掃除が大変だったでしょうが、そんな話は聞いたこともありませんね」

「麻友が嘘を言うはずが無いっ」

「ちなみに朱里様は他の教室に入ったことはありません。取り巻きなどいませんし、大切な友人の方が3人いますが、そのお嬢様方が悪口を流したと?侮辱ですね」

「馬鹿なっ付き人など信じられるかっ」


ああ、言ってはいけないことだ。

令嬢たちの付き人は、誇りを持って令嬢を守り、スケジュール管理もしている。


「いいかげんにしないか」


意外な人物が声を発した。

高井戸先輩だ。


「私が在学中も、多岐川さんに忠告してきたはずだ。婚約者がいるような者や教師まで誰彼構わず親しくするのは間違っていると」

「高井戸先輩は関係ありません」

「私は時沢朱里をよく知っている。幼い時から見てきた。彼女は卑劣なことなどしない」

「先輩は黙ってください」

「ほう、理事長はどうお考えですか?大学進学を取り消すなど、生徒が口を出すことではないと思うが」


理事長の顔色が青くなったり赤くなったりしてる。

ヒロイン、まさか理事長まで?


「時沢家と高井戸家を侮辱した意味がお分かりかな?気分が悪いので帰らせていただこうか。時沢家の皆様方もご一緒に」




とりあえず帰宅して、なぜか高井戸先輩も浩史も一緒にお茶を飲む。

両親は、まだ弟が在学中だし、高井戸先輩の妹も在学中だ。


今後の学校への対応について、不穏な話になってたりする。


私は部屋に戻って、ケンを構う。


「ケンはいい子だね」

「クゥーン」

「この後が心配なの」

「ウォフッ」


ケンをモフっていたら、部屋にノックが。


「ちょっといいかな」

「失礼します」


高井戸先輩と浩史。

珍しい組み合わせだな。

ソファーに座ってもらう。


「朱里、もういいだろう」

「へ?何がですか」

「転生者」

「え?」


妙に寛いだ感じの2人。

えっ?2人共、まさか。


「高井戸先輩からどうぞ」

「ん、俺は前世の妹がゲームやってたから分かったよ。朱里が全然違うって」

「高井戸先輩も?浩史は?」

「俺はあんまり詳しくなかったから、最初は分からなかった」

「多岐川麻友は酷かったな。せっかくヒロインなのに欲張り過ぎた」

「ねえ、ケンってまさか健一?」

「な、何で、浩史?」

「ケンはあの朝捨てられてたのを俺が拾って校舎裏に隠してた」

「あー、ここからは俺、邪魔だな。シスコン兄弟がいるから大変だぞ浩史。じゃあな」


高井戸先輩は出て行った。


「浩史?何?」

「俺の前世の妻は柴犬が好きで、俺はゴールデンレトリバー好き。でも本当は柴犬でも妻が好きなら良かったんだ」

「ひろし?」

「でも、子育てとかほとんど手伝えなくて、挙句の果て病気になって苦労させた」

「あの、あなたは?」

「転生しても、妻子には会えない。だからせめて柴犬を飼おうと思った」

「健一さんなの?」

「娘には会えないけど、由美、君に会えた」

「こんなことが、本当に」



本当の貴方を見つけた。



その後、ヒロインは成績が悪くて大学に進学できなかったり、結構な修羅場があったりとか聞いた。


浩史はシスコン兄弟に勝つため、日々奮闘中だったりする。


ケンの散歩は一緒に行くけどね。






















































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― 新着の感想 ―
[良い点] 悪役令嬢に転生しても…ハッピーエンド(*´ω`*) [一言] ざまぁが説明程度なのはちょっぴり残念でしたが…短編だし、悪役令嬢wとお付きの男性(前世**)との再会ハッピーエンド…良…
[一言] あ~ これ、ヒロインが娘さんとかじゃないよね
[一言] ん~ざまぁが足りん! ざまぁ経緯系の別視点作品が読みたいです。
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