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第四五話


「ところで、お前らって何レベルなの?」


 ウッドは門へ向かう途中に、そんな質問をしてきた。

 ははーん、そんなことを聞いてもいいのかね。あまりのレベルに仰天してしまうこと間違いなしだよ。それでもいいのかね。


「本当に聞きたいの?」


 かおるの顔つきもへらへらしたものへと変わる。これは自分たちのレベルを言った後の衝撃に腰を抜かす二人を想像して楽しんでいることだろう。俺も楽しんでいるのだから、間違いない。


「え? 相当すごいの?」


 ライフは目をキラキラさせて聞いてくる。ああ、相当すごいさ。おそらく二人が想像しているレベルから大きく隔絶していることだろう。


「ああ、すごいぞ。目ん玉飛び出るからな」

「なあ、教えてくれよ。何レベルなんだよ」


 そろそろ頃合いかね。これは引き伸ばし過ぎても面白くはないからな。


「レベル1だ」


 二人が固まった。

 二人は噴き出した。こらえられなかったよ、さすがに。しかし、許してほしい。口を半開きにして固まっているのだ。ライフの下を引っ張って弄んでみたくなったが、かおるのげんこつが飛んでくると思うのでやめようと思う。


「…………」

「…………え?」


 しばらく動かないかなこれ。どうしようかね。歩くのすらやめているよ。というか、レベル1だとわかった程度でここまでとまるもんかね。どんなプレイイングをしたら、レベル1のまま今日を迎えられるのかの計算をしているのかもしれないな。それだったら止まるのもわかる。

 俺たち二人は優しさを見せて、立ち止まってあげる。二人が戻ってくるまでゆっくりとしてましょうかね。


「ねえ、スバル」

「どうした?」

「はい、これ」


 かおるが俺に手渡してきたのは、塩焼き鳥だった。ん? どこで買って来たんだ?

 俺はあたりを見渡すと、確かに焼き鳥の屋台があった。あそこから買ってきたのだろう。程よく近し、客もそこまでいない。さっと行ってこれるちょうどいい感じである。だから買って来たんだろう。

 かおるもおそらくではあるが、これからしばらくかかると思っているのではないだろうか。だからこそ、焼き鳥を買ってきたのだろう。

 俺たち二人は焼き鳥をもしゃもしゃと食べながら二人の復帰を待つ。


「まだかな」

「食べ終わるまでそのままでいてほしいけどな」

「あ、それもそっか」


 で、俺達が食べ終わったころに、ちょうどよく、二人が復帰した。遅いぜ。


「お前、マジでか」

「ああ、マジだな」


 ウッドはいまだに信じられないようである。


「スバルだけでしょ。かおるは違うんだよね?」

「ううん、わたしもレベル1」


 残念だったなライフ。かおるに期待しても意味がないぞ。


「うそでしょ……」


 ライフは口をあんぐりと空ける。かおるはその大口に指を入れる。すぐさま口が閉じるが、かおるの指は無事だったようだ。


「まあ、これが現実だから。じゃ、フィールドに行こうぜ」


 俺は有無を言わさず門へと向かう。さすがに、立ち止まっていられないと思ったのか、双子もついてくる。それでいいのだよ、それで。


「いつもご苦労様です」


 と、門の近くに来たので衛兵の方々に挨拶をする。挨拶は大事だよね。気持ちがいい。


「ん? ああ、ありがとうな。そっちこそ、毎度毎度周辺の魔物の討伐お疲れ様だよ」

「いえいえ、俺たちなんて気楽なもんですからね。守るものが自分の命ぐらいなものですから。それに比べると、衛兵さんは町のみんなの命を預かっていますからね。大変だと思いますよ」

「おお、わかってくれるじゃねえか!」


 衛兵の兄さんは俺の肩をポンポンと叩く。


「いやいやいや! お前、フィールドに出たことねえだろ! 何勝手に、苦労話をでっちあげているんだよ!」


 突っかかってくるのはウッドである。

 ばれてしまったようである。残念極まりない。まあ、ばれたところで、俺には何の被害もないけどな。


「なんだ、兄ちゃん。町の外に出るのはこれが初めてか?」

「ええ、そうですね。これから初めての討伐ですよ」


 俺は気楽にこたえる。


「しかし、緊張してないのはいいことだぜ。緊張していたら、避けれる攻撃も避けれなくなっちまう」

「ああ、そうですよね。わかります」

「言うじゃねえか」


 衛兵の兄さんは肘でぐりぐりと俺のことを押す。


「じゃあ、そろそろ狩りに行きますね」

「おう、しっかり頑張って来いよ!」


 俺は衛兵の皆さんに手を振ると、それに返してくれる。嬉しいものだ。

 こうして俺たちは、フィールドへと踏み出した。


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