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第四二話


 ログアウトした。これから現実世界での夕食である。俺は、体をほぐすために柔軟をしてから食卓の方へと向かう。

 だが、その前に俺のスマートフォンに電話がかかってくる。


「誰だ?」


 俺は電話に出る。


「もしもし?」

『おう! 昴流か?』


 電話の相手は達樹だった。


「あ、間違いです」

『おい待て! 待ってください!』


 真剣に引き留めるのでしばらく達樹と会話でもしよう。そうしよう。


「で、なんだ?」

『お前どっち?』

「何がだよ」

『いや、わかるだろ? どっちの陣営についたんだよ』


 そんなことを聞きにわざわざ電話をかけてきたのかこいつは。しかも、昨日じゃないのか。おそらく、昨日はFWOをプレイした興奮で俺に陣営を聞くことを忘れてしまったのだろう。


「そういうのは、まず最初に自分から言うもんだろ」


 別にそんなことはないが、そう簡単に教えるのも癪である。なので、あえて焦らしてみる。


『そ、そうか。おれは魔族陣営だぞ』


 はあ、一緒かよ。これじゃあ、達樹と殺したり殺されたりの関係になれないじゃないか。達樹のためだけにPKをするのもなんか違うしな。


「そうか、よかったな。俺は人族陣営だ」


 なので、敵対陣営であると嘘をつくことにした。さぞ達樹の顔は面白いことになっているだろう。残念なのは、俺がそれの顔を見ることが出来ないということだけである。まあ、想像するだけで楽しいのでそれで満足するとしよう。


『……え?』


 なんとも弱そうな声である。達樹は今にも消え入りそうな弱々しい声を電話越しから発してきた。これはもうだめかもわからんね。


『いやだ……』

「決まったものはしょうがないからな」

『助けて……』

「救ってやるから安心しろ」

「あ、ああ……ああ……死にたくない……」


 こいつは失礼な奴である。友人と敵になっただけでここまで絶望しなくてもいいだろうに。


「大丈夫だ。俺も本当は魔族だからな」


 なので、俺は真実を打ち明けることにした。俺はなんて優しいのだろう。友人に救済の一言をかけてあげるなんて、俺の前世はきっとキリストかブッダか。そのどちらかが確定しただろうな。


『そ、そうか。なんだよビビらせるなよ』

「お前が勝手にビビってただけだぞ」

『まあ、お前と敵になるとか、考えたくもないからな。少しぐらいは現実逃避もしたくなるってもんだぜ。それほどに恐ろしい』


 こいつ本当に失礼だな。


『でよ、この後おれたちと遊ばね?』

「どこで?」

『今の話の流れからわかるだろ!』

「ああ、わかってるわかってる。FWOの中でだろ」

『そうだよ。ビビらせるな』


 達樹はビビりすぎじゃないかね。


『で、どうよ?』

「あー、無理かな」

『なんでさ?』

「俺、足手まといになるわ」


 今の俺のレベルは1であるからな。他のプレイヤーはいくつ上がっているかわからないが、いまだにレベル1はお荷物だろうよ。


『お前が足手まといなら、俺たちみんな足手まといだわ!』

「またまたー」


 俺のステータスは明らかに足手まといに片足つっこんでいると思うからな。たぶん、俺のレベルを宣言した後にパーティ募集かけても誰も来ないであろうという自信はある。それだけ遅れていると思う。


『足手まといでもいいからさ、一緒にやろうぜ』


 俺的にはみんなが魔術を使えるようになってからがよかったんだがな。しかし、達樹にこれ以上引き下がっても意味はないだろうな。仕方あるまい。


「わかったよ。この後な」

『おう! じゃあ、現実で七時頃に神殿前集合な!』


 と言うと、達樹は電話を切る。ようやく、フィールドに出る羽目になるのか。まだ二日目だし、出なくてもいい気がするのだが。ダメですかね?


「スバル? ご飯食べよー」


 かおるが扉を開けて俺の部屋に顔をのぞかせる。


「ん? ああ、わかった」


 俺たち二人は夕食を取りに、一階へと降り始めた。


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