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第三三話

ストックがなくなったのでしばらく一日一話に変更します。

ストックが溜まりすぎたらまた一斉に吐き出すのでそれまでお待ちください。

「師匠の行く本屋って古本屋ですか?」


 師匠の家にある本は少し古ぼけた本で、定期的に本を買っている割には新品だと思われるものがなかったりするため、ちょっと気になっていた。


「そうじゃよ。昔からの知り合いでの。いろいろと一緒に旅をしたもんじゃ」


 ほう、昔なじみの店なのか。

 師匠は住宅街の方へと歩いていく。目的の場所はそっちのほうにあるようだ。たしかに、大通りの方に本屋らしき店を見たことがないな。大通りにあるのは武器屋、防具屋、道具屋、食料などの露店である。あとは、メジャーなギルドか。それ以外は外れた場所へ行かないとだめなのだろう。


「ここじゃよ」


 と、師匠が指さした場所は一見すると民家にしか見えないつくりの建物である。が、一応本屋だと思わしき看板がついているので、本屋なのだろう。


「他の建物と変わらないのね」


 かおるも同様のことを思ったらしく、口にだしている。


「まあ、自宅を改造しておるだけじゃしの」

「ああ、それで周りと似たような建物なんですね」

「じゃあ、入ろうかの」


 師匠は扉を開けて中に入っていく。俺たちもそれに続いて中へと入っていく。

 中はこじんまりとした建物に入れるだけ本を入れてみたとばかりに棚という棚にびっしりと本が並んでいる。しかし、パッと見ただけでも、綺麗に題がジャンルごとに並べられているので、そこまで探しにくいわけではない。


「あ、いらっしゃい!」


 と、店の奥から元気な女の子の声が聞こえる。

 俺たち三人は声のするほうへと見ると、ツインテールに髪を結んだひまわりのような笑顔をしている小さな女の子がいた。背後には猫の尻尾がひょこひょこ動いている。耳も同じくピコピコしている。


「師匠が昔旅した仲間ですか?」


 実は、外見以上の年齢なのだろうか? 魔族だしありえるだろう。


「いやあ、こんな娘は知らんぞ」

「え?」

「師匠の仲間のお孫さんとかじゃないの?」


 まあ、師匠の仲間なら孫ぐらいいてもおかしくはないだろうからな。そう思っても無理はないだろう。


「あのお、わしの歳的にはまだ孫はいないんじゃが」


 師匠、ジジキャラなのに孫はいないのか。まあ、なんちゃってのじゃのじゃジジキャラだしな。


「ご用件はなんでしょうか!」


 女の子は笑顔で俺たちに問いかける。


「んー、本を探しに来たんだよ」


 俺は女の子に答える。


「本ですか! あたしのおすすめは『愛しのクリスティーネ』という本がおすすめです! とっても面白いですよ!」

「ぶはっ!」


 女の子がとても楽しそうにおすすめの本を紹介すると、ぼーっとした顔で聞いていた師匠が大口開いてむせ込んだように咳をしだす。


「師匠?」

「どうしたんですか?」


 あまりに唐突な出来事に俺たち二人は師匠に近寄る。先ほどの顔はあまりに危険な信号を発していた。


「お、お嬢ちゃん。その本はどこで読んだのかね?」

「ミハエルおじちゃんがくれました! とっても面白かったです!」


 女の子は非常に楽しそうである。それを聞いた師匠は愕然とした表情で店の奥にある扉を見つめる。そこに何かがあるのだろうか?

 俺たちは師匠と同じ場所へと目を向けると、扉についている窓から何者かがのぞき込んでいる。楽しそうに笑いながら。


「っ!」

「ひゅう……」


 俺たちは腰にさしてある刀に手をかける。


「ま、まあ待て! 別に敵じゃあない。お主たちの敵じゃないぞ」


 と、師匠は俺たちの前に手を出して止める。


「師匠、あの人は?」

「ミハエルじゃ」

「ああ、あの女の子に『愛しのクリスティーネ』の本をあげた人ですか」

「そうじゃな」


 師匠は疲れたような目をしている。師匠に何があったのだろうか。


「ねえ、君。お名前は?」

「あたしはサーラです! よろしくお願いします!」


 サーラは頭をぶんと下げてお辞儀をする。


「ねえ、スバル。この子を私たちの娘として育てない?」

「ちょっとそれは……」


 何を言っているんだお前は。さすがにそれはダメだろ。


「その本ってどんな内容なの?」

「はい! それは、主人公のオロートスが自分の愛する女性クリスティーネに恋文を書くという話です! とってもロマンチックで素敵ですよ!」


 ……はっ!


「し、師匠!」

「あー、そのー、な」


 師匠は顔を真っ赤にしながらしどろもどろにしていた。


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