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第二四話


「母さんお帰り。早かったね」


 と、父さんが迎える。その半歩後ろには祖父ちゃんが立っている。


「ええ、こっちだと簡単に出来るようになっててねえ。すぐに出来ちまうもんだから、早く帰ってきちまったねえ」


 そういいながら祖母ちゃんは視線を宙にさまよわす。


「はい、これね。みんなの分あるから」


 と祖母ちゃんは一人ひとりに服を手渡していく。


「ふむ……これはなんじゃ?」


 師匠は祖母ちゃんが作ってきた服に興味があるようだ。

 手触りの感じでは木綿製であることがわかる。今の麻の服からランクアップしている。これはいいものである。

 と、どんなものかメニューからアイテムの項目を選択し、そこにもらった服を入れる。


【木綿の和服】


 ああ、これ袴か。

 装備は自分で着替える必要があるから、いったん部屋へと戻る。師匠はおいていかれることになるが、お披露目があるので師匠はそこで待っていてください。


「うーむ、むむむむ……おぬしらはどこに行くつもりなのじゃ?」


 装備を着替え終わり、しばらくその場で着心地などを確かめた。祖母ちゃんは現実でも俺たちの服を作ったりしている。そのため、俺たちの体格なんかを完全に記憶しているため、不具合などは一切ない。ちゃんと、可動域にも考慮されているため、初期装備の数倍動きやすい。たとえ、ステータスに加算される数値が低いとしても、この服ならば数値以上の効果を引き出すことが出来ることだろう。

 しかも、俺たちは獣人となっているため尻尾があるのだが、その尻尾を通す穴まで開いているのである。しかも窮屈に感じないように出来ている。確かに、祖母ちゃんも獣人だから、尻尾の対応は出来るのかもしれないが、それでも適応力高い。

 で、俺は外に出てきたのだが、外には袴姿の家族の姿が。

 それで、先ほどの師匠の言葉である。


「ようやく、本来の姿になれたのう」


 うん、家ではみんなして和服だからね。家自体が日本家屋ということもあり、俺たちだけ現代に居ながら時代が古いからね。さすがに、電気ガスを使わない生活はしていないし、出来ないが。


「うん、僕たちだけ違うゲームしてるよね」


 ユウトが何かを言っているが、今さらである。俺たちは、これからも気ままにプレイすることだろう。この世界の街並みはどちらかといえば欧州の外観に似ているのに、そこを堂々と和装で闊歩する俺たちである。

 ……楽しそう。気分は岩倉使節団である。


「いやあれだから。あの……東の果てにある島国から渡ってきた和人の魔族だから。そういうロールプレイで行くから」

「ゴザル口調とかつけるべきかなあ?」


 俺の発言を聞いたマナトはそんな疑問を持つ。


「いやあ、別にいらないんじゃないかな。忠を尽くす相手がいるわけじゃないしねえ」


 と、父さん。そういうものかね。俺もそんな口調する気はないけど。


「でも、これで刀がないとなあ。おしゃぶりくわえてない赤ん坊みたいなもんだよこれ。だれが木刀作る?」


 と、俺はしばらく自分の姿を見て思ったことを言う。

 そうである。ここまできて、俺たちの腰には刀の一本すら差していないのである。これではぶらぶらしている。なんかしゃんとしていないような変な気分になってくる。


「ふっふっふ。安心せい。それも作ってきておるからねえ」


 と、祖母ちゃんが取り出したのは十本の木刀。俺たち全員分のである。


「お祖母ちゃん! ありがとうございます!」


 と、真っ先に駆け寄ったのが、なんとあいかであった。あいかは格闘戦よりも刀を使った戦いを好む傾向がある。だから、今まで少し物足りない顔をしていた。あと、そこらに落ちている木の棒で素振りをしているところも見ている。相当ストレスが溜まっていたのだろう。


「ふふんふふんふふん」


 あいかは非常に上機嫌である。それをみながら俺も貰った刀を自分の腰に差す。ああ、これはいいものだ。


「さて、確認するために体でも動かすとするかのう」


 と、祖父ちゃんが俺たち全員を見回しながら楽しそうな笑顔でそう言葉を発した。俺たちも全員それにつられて笑ってしまう。

 そこからは言葉を必要としなかった。……ただ、木刀が折れないことを祈るのみである。


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