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第二一話


「あれ? 祖母ちゃんは?」


 昼食時。全員が席に着いたときに、俺は祖母ちゃんがいないことに気づいた。


「ああ、母さんは町に行ったよ」

「町? なんか忘れものでもしたのか?」

「違うわ。あたしたちの服を作りに行ったのよ」

「ああ、祖母ちゃん裁縫好きだったな。でも、どこでやるんだ?」

「生産施設が一通りそろっている建物があるらしいぞ、兄さん」

「へえ」


 なるほどなあ。そこまでは見て回っていなかったから、知らなかったな。というか、初日以来町に行っていないんだけどな。図書館にも行きたいし、いつ行こうかね。


「そういえば、お主らはいまだに旅人が最初に現れるときに着とるボロのままじゃったのう」


 師匠すら気にしていなかったとは。俺も、たった今思い出したことではある。慣れれば別に気にならないんだよな。服としては地味だけど、変に飾りがあると動きにくいからな。そう考えれば合理的な服ではある。丈夫かは知らないが。


「まあ、全員【魔力感知】は習得できておるからの。もうすぐ魔術も使えるようになるじゃろうの」


 と、祖父ちゃんが言う。え? いつの間に。


「祖父ちゃんたち獣人なのに、早いね」

「スバル、お主が言うな」


 ならば、もうすぐフィールドに出て狩りを行うことになるのだろうな。それまでに魔術を使い物に出来るようにしなければならないな。


「師匠」

「なんじゃ?」

「これからもずっとこの家に入り浸ってもいいですかね?」

「なんでじゃ?」

「……? 居心地いいからですけど?」

「……はあ」


 師匠は溜息を吐きながらうつむいているが、明らかに喜んでいるのがわかる。俺たちみんなの視線が暖かくなっていく。


「ま、この話は終わりじゃ。午後からは魔力を操れるようになってもらうからの」


 師匠はさっさと食べ終わると、食卓から出ていった。


「兄さん、どうやって操るの?」


 午後。修行の時間に、ユウトは俺にコツを聞きに来ていた。


「自分で考えな」


 しかし、俺は教えることをしない。なんか、教えてはいけないような気がするからだ。


「なんでさ?」

「自分で理解できなきゃうまくいかないと思うぞ。実際のところ、俺と同じように匂いを嗅いで【魔力感知】を全員が手に入れたわけじゃないんだろう?」


 そう、獣人勢は俺と同じような手法で【魔力感知】を手に入れたわけではないのだ。俺と同じ方法で習得できたのは父さんだけである。他は別々のやり方で習得している。

 つまり、【魔力操作】も、俺と同じような方法で覚えられるとは限らないというわけである。だから、教えても無駄な気がするのだ。


「それもそうなんだけどね……」


 ユウトはそれを聞いて顎に手を当て考え込むようにしている。俺の覚えたコツは所詮参考程度にしかならないからな。まあ、それも聞くだけの価値はあるかもしれないが、それが覚える近道というわけでもないからなあ。

 と、そんなことを考えている暇はない。俺は今、とりあえず、全基本属性の魔術を生み出せる訓練をしているのだから。

 一応基本四属性は出来るようになった。次は光と闇の二属性である。……それにしても、簡単な魔術を数回使っただけで枯渇寸前になるのはつらいのだけども。これ、魔力の運用が下手糞すぎるんだろうなあ。

 だから、俺は今残りわずかな魔力を体中に巡らせており、遊ばせることのないようにしている。

 …………。


「師匠」

「なんじゃ?」

「魔力って身体の強化に使えるんですか?」


 よくある、補助魔法やら付与魔法やらに分類される魔法のことである。


「無理じゃな。魔力は精神の力じゃしの。肉体の強化などに干渉できん」


 出来ないのか……。いや、魔導士たちは接近戦で戦うことがないからそこの研究をしてこなかっただけなのではないだろうか? だったら、俺が見つければいい。

 そういえば……魔導士は自身の生み出した魔術を魔法技術協会でスクロール化して、商品として売り出すことで生計を立てていたな。付与魔法は売れるな。俺が第一人者となるのだ。

 そうと決まればさっそく検証していこう。俺は魔力に意識を向け始めた。


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