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第十七話

 しばらく森の中を歩き師匠の家であるログハウスが見えてくる。


「ついたようじゃの」


 と、師匠は家に入り地下への階段を下りていく。地下には入ったことがないが、食料などを備蓄するための倉庫があるそうだ。これは母さんたちの証言もある。


「あら、おかえりなさい」


 と、俺たちの背後から声をかけるのはみなみ母さん。運動をしていたのか少し汗をかいているらしく、布で汗を拭いていた。


「そっちも訓練を?」

「ええ、誰もいないから暇だしね」


 どうやら、母さんたちも俺たちと同じように訓練をしていたらしい。


「母さんってニュンペーだから格闘戦とか難しくなるんじゃないの?」


 ニュンペーは明らかに魔法タイプの種族だからな。


「別にそんなことはないわね。いつもと同じように体は動くわ」

「ふーん、別に種族はそこまで大きく変わらないんだな」

「それに、私はSTRとVITに初期ボーナスを割り振っているからね」


 そのせいか。なるほど。


「さて、みなそろって居るようじゃし、続きでもするかの」


 師匠の言葉により俺たちは修行を再開した。


「まだ動かんのう」


 師匠の言葉通り、俺の魔力が動く気配はない。一方で師匠の魔力は流れるように動き続けている。

 魔力の動かすイメージというのは血液の流れに乗せるようなものがふと思いつくものであろう。多くの物語でもそのように書かれることが多い。ならばそういうものかと思うがそうではない。なんせ、その通りにイメージしても動かないのだからな。

 だから、先ほど魔力に関係のあるステータスから考察をしてみたのだが、別に何かがわかったわけではない。ただ、知性と精神に関係のあるイメージを持つ必要があるのか? それもわからない。


「悩んでおるようだのう」

「ええ、もちろんですよ。これも時間をかければいいのですかね?」

「魔力を操作することは手足を操ることと同義であるからの」

「はあ」


 手足を操るような感覚で魔力は操れるということか。ならば、手足を操る感覚で魔力を操るイメージをする必要があるのかな?

 そもそも、手足に操るイメージなんてあるか? 仕組みはある。手足が動く仕組みはあるが、それは考えるものか? いや違う。体が勝手に動いているというのに近い。反射のようなものである。だったら魔力もそうなのではないだろうか? 動かそうと思っているから動かないのではないか? もっとより感覚的なものなのだろう。ならばイメージを必要としないな。魔力の動きはより抽象的なものなのだ。だから、俺は魔力について考えることをやめて動かすとしよう。


「――あっ」


 今、魔力が脊髄の方へ少し動いた。なんでだ? 師匠が動かしているのは魔力が循環するような動きだ。体の表面を巡るようにして動いている。しかし、俺の魔力は脳から脊髄へとわずかに動いたに過ぎない。これは、魔力が動くようになっただけで、魔力を操作することが出来ないからなのか?


「ほう、もう少しじゃな」


 だが、間違っているわけではないそうだ。師匠の反応でわかる。ならばもう少し続ける必要があるのだろう。今日中に出来るかはわからないが、明日もあるのだ。問題はないだろう。


「オッシャ! 魔力を感知できるぞ!」


マナトが吠えているが、まだ【魔力感知】は習得していない。あいつは瞑想状態で魔力を感知できるようになっただけである。


「ほう、マナトもそこまで来たか。では、精霊語を教えるから、それを聞きながらでも魔力を感知できるようになりなさい」

「よし! よろしくお願いします」


 俺は勝手に動く魔力をみている。魔力は脳から脊髄へと通り、そのあと全身へランダムに進んだ後、ふっと元の場所へと戻る。そんな動きを繰り返している。この動きは明らかに血流などといったものとは違うものであろう。だが、俺に魔力の動かし方のヒントを教えているような気もする。そんな不思議な動きだ。

 ……ああ、あ? いや、あり得るかもしれないな。でも、もし当たっていたら? 今日中に【魔力操作】なんてスキルを覚えることが出来るようになるかもしれないぞ。やってみる価値はある。

 俺はその仮説を実証するために再び集中することにした。


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