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第十話


 ログイン。リビングには師匠が本を読んでくつろいでいた。


「お、来たか」

「はい、師匠。その……言いにくいのですが」

「なんじゃ?」

「俺の身内が師匠の下で修業したいと言っていましてね。もうすぐ来るんですよ」

「ふむ……まあいいじゃろ」

「軽いですね師匠」

「家のすぐ前はそこそこ広いしの。それに、昔は数十人の弟子と修行をするなどというのはよくあることじゃ。気にせんよ」


 師匠は何でもないように答える。俺はそれを信じるしかないので、何も言わない。


「さて、昨日の続きじゃな。そこに座って魔力を一人で感じ取れるようになりなさい。まあ、最初の一回はわしが手伝ってやるがの」

「よろしくお願いします」


 よし、その感覚を掴んでさっさと魔力感知はできるようにならねば。


「目標としては、こうやって話していても常に魔力を感じ取れるようになることじゃからな。意識しないと魔力が感じ取れないようでは実戦で使えんぞ」


 ……今日中にできるかね?

 俺は、一回師匠に手伝ってもらい魔力がどんなものだったかを思い出して、何度か一人で魔力を感じ取れるように練習をするが、全くうまくいかない。うんともすんとも言わないのである。なので今は軽く体を動かしている。気分転換は大事だからな。


「兄さん、来たよ」


 と、優斗が俺に声をかける。その後ろには俺の家族全員が立っている。ふむ、確かに宣言通りの種族なのだろう。人間と変わらないように見えるのも何人かいるけど。


「ふむ、結構いるのう」

「問題あります?」

「ないわい」


 俺は、安堵すると祖父ちゃんたちの方へと向き直る。


「こっちでの名前は?」

「男がカタカナ、女がひらがな」

「適当過ぎるだろ。お前ら」

「兄さんもあんまり人のこと言えないと思うけどね」


 まあ、現実で何か犯罪に巻き込まれるようなことがあったら、その犯人の首が物理的に飛んじゃうようなことが起きそうな人たちしかいないわけだから、堂々としているのだろうといえるのかもしれない。どうなんだろうね。


「さて、さっそく始めようかの。円になるように座ってくれ」

「師匠、俺は?」

「お主はこんなことやっても意味ないからの。早く感じ取れるようになりなさい」

「わかりました」


 俺はみんなが見えるところに腰かけると、そのまま目を閉じ魔力を探し始める。うーん、探すというわけではないのだが感じるというのが何と表現すればいいか。手を振ってなんか少し硬い空気があるというような存在なのである、魔力とは。で、師匠の魔力が流れると、異物が体の中に現れるわけであるから、すぐに反応する。そこまでは行ける。で、それを基に自分の魔力を見つけられるのだが、自分の魔力は異物ではないため、感知に反応しない。つまりそれは感知ではないということですね。


「休憩じゃ」


 師匠がどうやら、向こうを休憩にしたので、俺も休憩する。


「兄さん、どうやれば魔力って感知できるんだ?」


 マナトが俺にコツを聞きに来ている。いいことだ。だがな……


「そんなもの俺が知りたい」

「え? 兄さんも知らないの? できるから外されたんじゃ?」

「違う違う。師匠の手助けありだと、魔力を感じ取れるようになっただけだ。補助輪ついた自転車を乗れるようになったからと言って、自転車に乗れるとは言わないだろう?」


 しかも、魔術を使えるようになる合格点が自動二輪を乗れることである。難易度高くね? まあ、難易度高いって言ってたからやるけどね。

 かおるは俺の隣でじっと俺のことを見ています。隠し事はないので俺は堂々としている。かおるは満足そうに元いた場所へと戻る。わかってもらえたのかな?


「おぬしら、いい筋しておるの」


 今は昼食。女性陣が作った料理を食べながら師匠はそう言う。みんなして、魔力を感じることは出来るらしい。師匠が魔力を流すのをやめるとわからなくなるらしいけどね。いや、祖母ちゃんは感じ取れている雰囲気がある。こういうのは祖母ちゃんが最も得意なのである。


「それとも、異界の旅人だからここまで早い習得なのかのう?」


 師匠。俺は手詰まりが起きています。全く先に進めていません。少しも魔力を感知できないんです。

 いや、焦ってはならない。焦れば焦るほど魔力は姿を見せてくれなくなる。深呼吸でもして落ち着かなくては。


「スバル、大丈夫?」


 かおるは心配そうにしているけどね。これはただ上手くいかないから困っているだけだ。別に体が悪いわけではない。


「ああ、大丈夫だ。ゆっくりと進めていければいいさ」

「そうね。お互い頑張ろうね」


 かおるは俺に向かってにっこりとほほ笑む。俺も笑顔で返す。午後からのエネルギーは補充できたんじゃないかな。


「しかし、僕たちは全員フィールドに出てモンスターを倒していないわけだが、それはいいのかね?」


 ユウトがそんなことを疑問に思ってしまったらしい。


「いいじゃろ別に」


 それにこたえるのは祖父ちゃん。なんと、戦場に出なくてもいいとは。心変わりでもしたのかな?


「今はこの修行が大事じゃからの」


 だよな。うんうん。


「それでは、再開でもするかの」


 食休みも終わり、修行の再開である。俺はまた一人自力での感知の修行だよ。みんなは、俺のレベルにすら到達してないからね。


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