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第九話

 そのあと夢でメルが嬉しさのあまり泣きじゃくるのをなだめていたら、ふと意識が離れていくのを感じる。どうやら、もうすぐ起きる頃なのだろう。俺は、二人と別れて意識を手放した。

 朝が来た。俺が起き食卓へ行くともう朝食は完成していた。メニューは……英語の教科書、それも中学校のがよろしい。そこの朝食のイラスト、それが目の前にある。


「師匠、朝食食べた後しばらくここから離れます」

「ふむ、異界の旅人じゃったか。ならば仕方ないのう」


 俺は朝食を食べ終わった後、寝室に戻り、ログアウト。

 今度は家で夕食である。まだ時間はあるが、早めに戻ってきて損はあるまい。

 俺が食卓へ行くと、大体そろっていた。みんな夕食を待っているようだ。作っているのは? 母さんたちと祖母ちゃん。心配はなさそうである。そもそも、男たちは台所に立たせてもらえないが。また別の戦場であるので。


「みんなは何をしていたんだい?」


 父さんが言う。確かに、何をしていたのかは気になる。


「わしは、いい訓練相手が見つかってのう。しばらく戦っておったのじゃが、そしたらもう夕食時での」

「お祖父ちゃん、どこで訓練していたんだよ」

「ほら、あるじゃろ。ログインしてすぐの森。あそこを入っていったらの、瞑想しとる男がいての。強そうなんで、殴りかかってみたら楽しかったわい」

「祖父ちゃん、バカだろ」


 俺の素直な感想である。しかも、祖父ちゃんが言うにはキャラメイクをして街の神殿に来たときに夕食時になったらしい。何をしているんですかね?


「だがの、祝福をもらったぞ。神様らしくての。気に入られたからくれたわい」

「へえ、祖父ちゃんももらったんだ。俺ももらった」

「昴流もか。おれも貰ったよ。祝福」

「もしかして、みんな森の中に入ったの?」


 優斗の質問だが、たぶん、優斗も森の中に入っている。龍血の家の人間はそういうものだ。


「みんなもらっているのか、祝福。オレだけぶっちぎりで強くなると思ってたのにな」


 学人は残念そうにつぶやく。俺も同じことを考えていたが、祝福は結構簡単にとれるみたいだし、そこまで差は広がらないか。


「みんなはどんな種族にしたの?」


 月子母さんが話を変える。薫が鬼人ということは知っているが、他の家族がどの種族かは知らないのだ。まあ、狼と狐の獣人がいるのは確定なのだが。


「おれは狼の獣人だな」

「儂もじゃ」

「俺もだな」

「ぼくも狼の獣人だね」

「オレは悪魔」

「男全員狼じゃねえのかよ!」


 学人はいつもずれるな。まあ、男全員狼の獣人だったら、それはそれで何とも言えない気分になるのだが。


「わしは狐の獣人だねえ」

「私はニュンペー」

「あたしは悪魔」

「私はお祖母ちゃんと一緒です」

「私は鬼人よ」


 美波母さんがニュンペーだから、俺の選択種族は狼と狐しかなかったんだな。で、学人は月子母さんの種族である悪魔があったのだろうか? いや、学人が先に悪魔を選んだという可能性もあるな。


「女性陣は結構別れたわね」

「いや、別れないとおかしいのよ普通は」

「で、種族は確認できたけど、何をしていたんだい? 父さんのしていたことは聞けたけど、みんなのは知らないからね」


 そういえば、そんな話をしていたな。


「オレは街の地図を埋めてたな」

「あたしも大体そんな感じよ」

「なんだ、みんな同じようなことをしているのか」

「いや、俺は魔術の修行をしていた」

「魔術? 昴流あんた、獣人なのに魔法なんか使うの?」

「いや母さん違うよ。魔法じゃなくて魔術。このゲームでは違うものとして扱われているんだ」


 俺は魔術の説明を行う。


「へー、じゃあおれも混ぜてもらおうかな」

「父さんも獣人じゃん」

「儂もじゃな」

「だから、祖父ちゃんも獣人じゃん!」

「昴流も獣人じゃろ? なら問題あるまいて」

「いや、問題はないけど、師匠一人で大丈夫かとね。てか、誰が来るの?」


 全員にっこりと俺の方を見る。あ、全員来るんですね。師匠に謝らなくちゃな。

 俺は、全員に師匠の家の場所を伝えて、部屋に戻った。もちろん夕食もきれいに食べてね。


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