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本当の恐怖

 レミィ!!


 どうしてお前がそこにいるんだよ!


 なんでお前が犯人なんだよ!


 

 なんでそんな悲しい目してんだよぉ。


 ……何も聞けねえじゃねえかよぉ。



……何も伝わらねえじゃねえかよぉ。



……お前の事信用してたのに一方通行だったのかよぉ。



 「あっ」



 逃げるしかねえ、ここは……。逃げるしかねえんだ。俺はリンデの為にまだ殺される訳には行かねえんだ。かっこ悪いかもしんないが今は死ぬわけにはいかないんだ。俺にはしなくちゃいけないことがあるんだよ!



 「ハァハァ」


 「あらどうしたの、リュウ? そんな息切らして」



 やばい……来る……気配を感じる……。


 咄嗟にリンデの背後に隠れる。



 「あ、姉様、リュウちゃん見ませんでした?」



 !!



 「え、リュウ? リュウなら……」



 お願いだ……言わないでくれ……何も言わないでくれ……俺が……殺されちまう。まだ死にたくないんだ……俺はまだ……だって俺は……リンデを守りたいから……。…………



 「そこの廊下を走っていったわよ」



 「そうですか」


 


 え? 俺は助かった。レミィの歩く音がどんどん遠ざかりやがて聞こえなくなった。でも、リンデはどうして……。



 「もう、どうしたのよリュウ? 体をブルブル震わせて……。そんなにレミィが怖かった?」



 お、俺は勝手に体が震えていたのか? 情けねえ、超情けねえ。



 「大丈夫よ、レミィは。あなたに対して悪い事なんてしないし、あなたを傷つけようとも思ってないはずよ。確かに、口は悪くて不器用でちょっと可愛げがないかもしれないけど……。何も変わってない。あの子は昔から変わらずとってもいい子だから……。私を信じて」



 リンデ……。俺は……レミィを……信用……




 ……できない。


 あの闇の中にいたレミィを俺はどうしても信用できない。したくてもできないんだ。それと同時にリンデの言っていることを信用できない自分が信用できない。リンデを守るって言いながらリンデをレミィへの盾にした自分に信用できない。思いっきり守られてるだけじゃねえか、俺。


 今は誰も何も信用できない……。


 リンデを守りたいという気持ちに偽りはない。本気で確かにそう思っている。でも、その根底に以前の感覚が記憶が思いが根付いてしまっている。



 もう……死にたくない……あんな痛い思いをしたくない……もう二度と大切な人と別れたくない……。でも、リンデが死ぬのも……嫌なのに……俺は……もう分かんねえよお……。


 



 「リンデ様、お時間でございます、今すぐ大広間に」


 「あら、もうそんな時間なの? わざわざありがとう、チル」


 「いえ」


 「じゃあ、ちょっと待っててね、リュウ」


 え?? ちょっと待って、おいて行かないで!! くそっ、体が動かない。まだ、体が怖がっている。今まで感じたことのない恐怖感に怖気づいてる。




 …………。



 いつのまにか部屋には俺しかいなくなっていた。ついていくことも止めることもせずに思考を停止していた。無意識に簡単な何の解決法にもならない選択肢をとってしまっていた。




 いや、これでいいんだ。きっと……俺がついて行ったところで何もできない。言葉も話せない。この頑丈な歯があるだけで魔法が使えたり特別強いわけじゃない。どうしようもないんだ……。



 そうでも言わないと自分の身が持たなかった。そうやって自分を慰めないと自分の事を許せなかった。そうやって諦めさせないと自分がリンデを裏切ったようで……。その考えを否定できなくて……。

 



  その瞬間、廊下側ではなく中庭に面している側の壁がぶっ飛んだ。



 ……え?


 

 まるで時間が止まったかのように頭も体も動かない。巨大な穴から吹かれる風が忙しく通り抜ける。それだけが唯一時間が進んでいるのを証明していた。



 そうか……。悟った瞬間には一目散に駆け出していた。本当の恐怖。そんなもの考えるまでも無かった。これがその答え。痛い思いをしたって良い。死んでしまっても構わない。ただ一つ、まだあまり理解しきれていないこの世界で一人にはなりたくない!絶対にリンデは殺させない!!



 中庭に植えられていた木々、立派な屋敷の外壁、しまいには屋敷の内側、色々な物が破壊されていく。それが事の重大性を顕著に表す。しかし、明らかに標準がこちらに向いている訳ではない。つまり俺が狙われている訳ではない。リンデはチルに呼ばれて大食堂に向かったはずだ。確かにリンデが狙われている根拠はない。でもリンデが狙われていない保証もない。




頼む、無事でいてくれ。リンデ!!



 


 

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