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監禁

 何なんだ、この感覚? 一度も味わったことがないので言葉にするのはとても難しい。しいていうなら、体の奥深くを無理やりドリルでこじ開けられそうな感じ? 痛みも少し伴っている。恐らく誰にも伝わらないんだろう。でも、一つだけ言える。ゾクゾクする。そのゾクゾクは計り知れない怖さを含んでいる。平静を保つのが今できる限界だ。しかも、時間が経つたびにこじ開けられそうな痛みも計り知れない怖さもどんどん増してくる。




 「ワン?(あれ?)」



 俺は寝てたのか?痛みも怖さも無くなったと思ったら寝転んでいる自分がいた。寝ていたのか、気を失ったのかは定かではないが……。ここはどこだ?……いや、見たことある?確かチルの後をついて行ったときにちらっと見たことはある気がする。という事はここはリバイン邸の一室ということか……。書庫として使われているんだろう。たくさんの本が綺麗に棚に収納されている。そうこうしている内にこの部屋に来るまでの経緯を思い出す。




 確か……屋敷をのんびり歩いていると見たことない人が横切る。立派な髭が特徴でリンデのお父さんよりも年老いて見えた。そんな彼について行ってみようと思った瞬間後ろから……。



 あれ?俺は監禁されているのか? という事は目覚める前のあの感覚は変な薬品を嗅がされたからで説明できる。待てよ、ここはリバイン邸だ。という事は犯人は……この屋敷の人間なのか!?



となると犯人は?リンデはそんなことする訳がない。レミィは……?確かに毒舌ではあるがこの前の姉を元気づける姿を見ると犯人と思えない。それにリュウタンなんて言いながら顔をスリスリしてくるんだから俺が嫌われているとも思えない。後は、リンデのお父さん、チル、アルトの三人。リンデのお父さんは……分からない。そもそも何を考えているのか分からない。チルは天然だと思う、それに良くも悪くもこの屋敷の人に従順だ。自分の意思で俺を監禁するとは考えにくい。アルトは……?一番接点がない。好青年という印象を受けたけどあくまで印象でしかない。本当にそうかは分からないと言ったところか?


 まとめると一番怪しいのはリンデのお父さんか? でも、動機も全く思いつかないしお父さんもそんなことをする風には見えない。むしろ、俺は今まで屋敷で見たことない人を追いかけていたんだから外部犯の可能性もあるか?


 でも俺を監禁しても意味がない気がする。リンデやレミィを監禁する理由はお金なり後ろ盾の座なり色々ありそうだが……?どうして俺なんだ? いくら何でも犬を助ける為に大金を用意したりする人はあまり多くはないと思うが……。



 さっぱり分からないので少し部屋を歩き回ることにする。いくらリバイン邸内といえどもドアを開けられないので入ったことのない部屋はかなりある。こういう時じゃないと調べられないからな。



 実に便利だ。見たこともない文字がすらすらと読める。どういう仕様でこうなっているのかは未知だがこれは相当でかい。何せここには恐ろしいほどに大量の本がある。これで少しはこの国の事、このリバイン家のことが分かるかもしれない。


 なるほど、ここには図鑑系統が並んでいる。動物図鑑に植物図鑑、鉱物図鑑、化け物図鑑……って化け物図鑑? この世界には化け物とかいるのかよ。怖すぎるだろ! で、こっちはリバイン帝国の起源、リバイン帝国の栄華……歴史か、今は時間がないのでパスだな。


 今、俺が一番気になること。エステルに聞いても分からなかったこと。リンデの母親、サラス女王の死。その殺人犯として何故リンデが責められているのか? 彼女がそんなことするわけがない。絶対にない。



 お? これなんかどうだ? 「サラス女王の死ー犯人の正体は?-」 偽の情報と真の情報を見極めないといけなくなるが……。やむなしか。前足で引っ張り出し前足でページをめくる。元人間なだけあってこの辺の使い方は慣れた。



 まずは事実を掘り出す。サラス女王が死んだのは三年前。現場はこのリバイン邸。外部からの侵入は見られず内部犯説が濃厚。しかし、確たる証拠がなく犯人を見つけることが出来なかった。このあたりが真実ってところか? 動機の面で考えると一番怪しいのがリンデ。サラス女王が亡くなれば彼女が次期女王の座の第一候補になるのは免れない。しかも、サラス女王とリンデの間に不仲説が噂になっていた。


 なるほど、整理すると現場検証では犯人は分からない。でも、動機的に考えてリンデが怪しい。とてつもなく身も蓋もない話だ。国民はリンデの事をあまり知らないから疑ってしまうのも無理はないのかもしれないが……。


 リンデが一人で母の殺人を自分のせいにされてひどく悲しんでいるのを知っている、偉大な母の跡を継ぐ責任の重さに悩んでいるのを知っている。そんな彼女が犯人なわけないだろ! 当時の彼女の事を俺は知らないが仲睦まじく、母が二人の娘を愛し、二人の娘が母を慕っていたのを容易に想像することが出来る。命を懸けても良い、リンデは絶対に犯人じゃ……。



 ギィィィ……



 急いで身を隠した、誰か入ってきたようだ。そいつは電気もつけずそろそろと足音を立てないように近づいてくる。わざわざ電気をつけない当たり、俺をさらった犯人で確定なんだろう。奥へと進んでいく犯人に気づかれないように棚の上を渡ってドア側に回り込む。



 「ワン!」



 正体を見せやがれ! 何の目的で俺を監禁したのかは未だに全く分からないが、少なくとも俺の敵であることには違いないはずだ。






……なんでだよ?


……どうしてなんだよ?



……なんでお前がここにいるんだよ!




……レミィ!!

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