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こけし
青柳スミレは、地方に本社を持つ製缶メーカーの東京支店で一般事務の仕事をしていた。営業マン4名、支店長、副支店長、そしてスミレを含め総勢7名という小さい支店で、スミレが与えられている仕事は限られたものだった。本社が地方にある為経費精算、請求書の処理などは本社が行うのですべてチェックして送ってしまえばよかったし、入力作業やコピーといった頼まれ仕事もさほど頻繁に発生することもなく、電話もあまりかかってくることがなかった。スミレは出社して20分ほどで1日の仕事の大半を片付け、あとはこけしのようにただ座っていればよいことがほとんどだった。スミレは毎日17時定時きっかりに、会社を出た。