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プレゼント  作者: lycoris
7/13

滅びの村

ふぅ…なんとか終わりました。

途中で何度か戻ろうか迷ったけど、もうあそこには戻りたくなかった。

だから遠くなってもいいから、河原を目指した。

あそこで、サンタにあれを貰ってからだ。

そこから何かが狂い出したんだ。

俺ではない、俺じゃない、俺じゃないんだ。

サンタだ、サンタなんだ、サンタが悪いんだ。

違う、間違ってる、絶対に俺じゃない。

ブツブツと呟きながら、重い足取りで家から少し離れた所で近所の人と鉢合わせになった。

「うわあああ」

咄嗟に悲鳴をあげたのは、近所の人の方だった。

「うッ」

突然の大声で頭に痛みが走り、目の上を抑える。

その手には血がついていた。

いや、全身血に染まっているこの身体を見れば、誰でも悲鳴をあげるだろう。

抑えていた方の目が血のせいで、視界が真っ赤に見えた。


「ひ、ひぃぃいい!」

腰を抜かして尻餅をついた。

なんだ、あの化け物は?いや、本当き化け物なのか?

相手は動かない。おかげで少し冷静を取り戻した。それによって思い浮かんだものは最悪のものだった。

「や、やぁ、こここkんにちゎ、げg、元気かぃ?」

恐怖で声が震え、かすれた。

通じているか分からない。

早く返事してくれ!じゃないとこっちがもたない!一刻も早くこの場を去りたいんだ!

心の中で念じる。すると目を抑えて俯いたままで、口が開いた。

返事は意外なものだった。

「ぁ…ぅ、うるさい…」

小声だがハッキリとそう聞こえた。


「そ、そうかい。すまなかったね。そそれじゃぁね。こ、今度、とt、遠くの町に行くんだろ?き、気をつけてね、一応」

震える声がそう告げた。

そうか、やっぱりこいつもか。

こいつも、余計な心配だと分かっていながら、俺を気にかけるんだな。

あぁ、鬱陶しいな



やっと、河原に着いた。

長かった。

ゆく道ゆく道でいろんな人に会った。

中には、会った事ない人や久しぶりに会った人、忘れていた人、そんな人々に会った。

会う度に、足止めをくらって、今は少々、いや、その数の多さにかなり苛立っていた。

体中血だらけなのは変わらないが、時間が立ったからか、血の色が濃くなって染み付いている。喉も枯れて、潤っている。

腹もまだ入るが、満腹だ。手には肉片を持ち続けている。

逃げ出した時に捨て忘れたのかな?

足取りは更に重くなっていた。やはり満腹が原因か?

それにしても疲れた。だいぶ歩いたから。、疲れ以外にも、体中が痛んでいた。

何日かかけてやっと着いた河原。

そこには黒い衣装のサンタクロースが座っていた。

「ほっほっほー、久しぶりじゃのお」

拳に力が入る。

「貴様ぁぁ、あれは一体なんだったんだ!?」

低い声で脅すように問いかけた。

「ほほう、どうじゃったか?気に入ったか?あれはのう、 おっと、まだ人が喋っておるじゃろう。聞いたきたのはそっちだろう?」

挑発するような声が聞こえてくるが、まずはこいつを一発殴る。

「うがぁあ!ぅおらぁっ!」

「ほっほっほ」

あっさりと交わされる。しかも、最小限の動きで。

「どうやら、あれを食べたらしいな。美味かったろう?」

あれは食べ物だったのか。

「いや、そうとも言えるし、言えない事もあるのう。」

こいつは何を言っているんだ。

「もっと欲しいか?

ほっほっほ、やっと止まったか。約束だしな、ほら、やろう。」

そういうと、サンタは片手であれを取り出した。なんで、俺は殴るのをやめたんだろう?あれが欲しいからか?そんなはずは無い。俺はあれが欲しいだけだ。

「ほれほれ」

サンタがあれを見せつけてくる。

クソックソッ、約束だろ、よこせよ!この!

避けんなよ!この!

「おわっと、しまったのう」

やっとサンタの手から離れた。

やったぜ!これでまた、あれが食える。

だが、あれはサンタの手から落ちたあと、粉々に砕けてバラバラになってしまった。

「あぅ?」

「ほっほっほ、もう無いぞ。貴様が悪いからな。

そう、恨むなら貴様を恨め。」

クソッ、どこへやった!?

「ここにはないぞ?だが、あそこにあるぞ」

そういうと、サンタは河原の方を指差した。

前に見た時はそんなものは無かったはずだが、ここから見ても、河は澄んでいるから、中にあったら分かるはずだが…

そう思いながらも、河の方に向かい、河の中を覗き込んだ。

見つけた!!本当にあった!!やった!!

河の中のそれを取り出そうとし、手を伸ばす。が、触れない。

確かに届いているはずだが。何故だ!

もどかしさに苛立ち、乱暴にそれを取ろう踏ん張る。が、どうしても取れない。

「ああああああああああ!!!!」

発狂した。もどかしすぎる。

「もっと効率よく両腕を使って、って、聞いてないな…」

「うがぁああ!」

両手で水面を乱暴にすくい上げる。

何度かやってみると、やっと掴んだ。

「うぅぅ…うがあああ!」

ガブリとかぶりつく。

「がああああああ!!!??」

同時に痛みが走る。だが、食べるのを続けた。いや、食べるのをやめられなかった。

「ほっほっほ、やっと見つけたかい。そうかそうか、美味いかよかったのう」

美味い!美味い!!

だが、痛みが段々体中に広がっていく。

そんなの御構い無しに、食べ続ける。

気づくと、立ち上がる事が出来なくなっていた。それでも食べ続けた。

「うがあああ!!ぉぉううああああ!!」

痛みが強くなってきた。

流石に食べるスピードが落ちてきたが、食べるのをやめなかった。


そして、最後に、それを残し、それを口に含んだまま、

俺は死んだ。

最後まで食べる事が出来なかったが、最後まで食べるのをやめなかった。

こんま美味いものを食べて死ねるなら本望だった。後悔があるとするならば、もっと食べたかった。

最後に食べたのは、今まででこ食べ物の中で一番美味しく、それに、今までで食べたあれの中でも一番美味しかった。だが、涙の味もした。これはどのあれにも共通したが、最後に食べたのが一番涙の味がした。

そう、最後に食べたあれは全てにおいて一番であった。





「ほっほっほ、この村にはもう用は無いな。それじゃあの。」

黒服のサンタクロースは、満足げな表情を浮かべ、この辺鄙な村を去って行った。


ということで、最終話です。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。

夏休みの間だけで何とか完結出来ました。

(宿題はまだ終わってないけど)

出来れば8月中に完結させて、他の話もやりたかったですが、これだけでも終わらせることができて幸いです。


それでは、次はそろそろ贈り物の更新をしたいと思っています。


それでは

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