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幽霊な君に僕は魅かれた

作者:

まず最初に一言

完全な自己満足作品です。

これだけは頭の片隅に置いておいてください。


ちょっと書きたくなったから書いた、そんな作品ですので内容はそんなに期待なさらずに。 読める程度にはなっていると思いますのでその点を踏まえてどうぞ楽しんで言ってください。

天翔 一生(あまかけ いつき)


幽霊が見えるだけのごく普通の一般人。


めだった特技があるわけでもなく、家系が神社や寺関係などでもなく、普通に幽霊が見えてしまう。




今日も一生は普通の人には見えないものを横目に友人と学校へ向かっていた。


「でさー傑作だったのが店長がさひと睨みしただけでさ、そのクレーマー帰っちゃったの」


「マジで、お前のバイト先の店長どんだけ怖いんだよ」


「俺は逆らおうとは思えないな」


友人2人の会話を軽く聞き流しながら今日はやけに浮いてる人の数が多いなぁとそんなどこか抜けた事を

思う。


「……き……つき……おーい! 一生!!」


「え? ああ!?」


気づくと校門の目の前を半ば通り過ぎようとしていた。


「何ボケっとしてんだよ、校門通り過ぎんぞ?」


「あ、ああごめんごめん、なんかまだ眠くてさ」


「一生は朝は駄目だなぁ」


「ほっとけ、いくら寝ても寝足りないのは育ちがいい証拠だよ」


友人と話しつつも、自分の横をすぅーっと通って行く幽霊を横目に見てしまう。


見えてしまうのが気になって仕方ないのだ。


無論学校内でも言えることで、在校生の半分くらいの数の幽霊が漂っているのを見えてしまう。


それは授業中でも関係なくフヨフヨと漂っているので、授業どころではない


「……け、……がけ! おい天翔!」


「え、あ? はい」


「はいじゃない! ちゃんと授業に集中しろ!」


「あ、すいません」


またやってしまった、朝にも似たような事があったなと思い出しつつふと"浮いている"一人の女の子と目があった。


一生を見て目を見開いている。


(あー、見えてるの気づかれたかな?)


そう思ったのもつかの間、その女の子が僕を見ながらふよ~っとちょっと位置をずれた。


一生が目で追うと。


女の子はさらに動く。


それをさらに目で追う。


それを見たとたん女の子はぱあっと目を光らせ近づいてきた。


(ま、まずいぞここでちょっかいを出されて反応したら僕が変人になってしまう!)


心の中で過度な事はしないでくれと必死に祈願しながらその女の子が近づいてきても知らないふりをする。


そして、一生の背後に回ったかと思うと、つぅーっと指先で背中を撫でる。


背筋からぞわぞわ来る感覚に


「うわぁああ!?」


悲鳴を上げて立ちあがる


クラス中の視線が一生に集中した。


「な、なんだ!?」


「す、すいません! なんでもないんです!」


(い、言えない、幽霊に背筋を指先で撫でられたなんて!)


クラス中からクスクスと笑い声が聞こえる中、気まずい雰囲気を出しながら一生は席に着く


さりげなくその女の子のほうを見ると腹を押さえて笑っていた。


一生は見えるのと同時に幽霊との干渉が出来る。


つまり自分が触れたいと思ったり幽霊が触ろうとすれば接触出来てしまうのだ。


今回は幽霊の女の子から触れてきたので、一生には予想外だったのだ。


幽霊は普段自分が見ることが出来る存在に気づくと、逃げだすかとり憑くかのどちらかなのだが、今回のようなケースは初めてだった。


それからその日はその女の子にいいように悪戯され続けた。


耳に息を吹きかけられたり、見えてしまうため目の前に立たれると黒板の字が見えずに勉強にならなかったり、昼休みの購買の争奪戦に行く途中に足を掛けられて大幅に出遅れたりと地味に面倒な悪戯ばかりを受けた。


その日の帰り道、女の子はずっと一生の後をついてくる。


人気のいないところで一生は振り返って


「どうして逃げもしないしとり憑きもしないの?」


と聞いていた。


女の子はにこやかに笑いながら


「あなたと友達になりたいから!」


不意打ちだった


あまりにもその笑顔が可愛いく見えてしまった。


「……普通は僕みたいのが居ると幽霊っていう存在は逃げ出すか襲うかのどっちかだけど君は違う」


「他の人はよく知らないよ、私死んだばっかりだし」


そこで合点が行った。


死んだばかりの人間は幽霊としてどう過ごすかをよく知らない。


ただ、幽霊になるには何かしら理由があったりするのだが。


見えてしまうのでとりあえず簡単な知識だけはと持ち合わせているのだが


どう見ても彼女には幽霊になるほどの未練があるようには見えない。


思考を巡らせていると、間抜けした声で断ち切られる


「ねーねー、あなた私が見えてるんでしょ? て言うか見えてなきゃこうやって会話できてないし」


「うん。それがどうかした?」


「死んじゃって一人ぼっちで暇だから友達になってよ」


「え? いや何を……」


「いいじゃんいいじゃん、別にとり憑いて殺すとか、体奪うみたいなことはしないよ、暇なんだよ。ね? いいでしょ」


まだ名前も知らないその子は僕にその言葉を残してその日はどっかに言ってしまった。


こうして僕に初の幽霊の友達が出来た。


次の日もふよふよ漂っている存在を暇つぶしに数えながら学校に向かう。


「……なんか最近ここら辺一帯多くないか?」


「何が~?」


「そりゃ幽れ……え? うわぁあ!?」


声のしたほうを見ると昨日の女の子がいつの間にか背後にいた。


「おはよう! 今日は昨日みたいな邪魔はしないから安心してねっ」


「さすがに困るから本当にやめてね……えーと」


「ああ、自己紹介してなかったね、私は水上 綾(みずかみ あや)死ぬ前は学生」


「微妙に悲しい自己紹介だね……」


「いまさら、死んじゃったことを嘆いても仕方ないけどねえ」


明るく笑う彼女はとても死んだ人間には見えなくて僕も自然に気を許していた。


「僕は天翔一生、天に翔けるって書いて一生(いっしょう)っていう字」


「一生天を翔ける……あははっ」


「笑わないでよ」


「あっ」


一生が拗ねたそぶりと同時に綾はさっと一生から離れる。


「よう一生、今日は早いんだな、んで誰と話してたんだ?」


そこに一生の友人の一人が遅れて登校してきた、からかうつもりなのかいい笑顔で絡んでくる


「ん?友達だよ、もう行っちゃったけどね」


「ふふ~ん、友達ねえ~」


「な、なんだよ?」


興味津々といった感じで笑顔を向けてくる友人にちょっと気持ち悪さを覚えたが、それ以上は何も言ってこなかったので一生から何も言うことはなかった。


授業を乗り越えて昼休みを迎えると教室が騒然となる


「いっく~ん」


それと同時に綾がふよふよと一生に近づいてくる


「いっ君ってなに?」


「一生だからいっ君」


恥ずかしさを覚えながらも別に問題ないので特に気にはしなかった


「いっ君お昼は?」


「今日はなんと自炊してきたのだ」


そういって胸を張って弁当を出す


「さて、いただきます」


自分で作ってきた弁当なのでいまさら味に関しては何も言えずもそもそと食べていく。


その間、綾はじっと一生の弁当を見続けていたが。


一生が目を向けるたびにはっと我に返ったように視線をそらす。


「……幽霊のなのに食べたいの?」


「あーなのにってなんだよなのにって、死ぬ前は人間だったんだぞー」


「死ぬ前はって」


一生が幽霊と干渉しないのには今みたいに自分と居る世界が違うためなのもある。


こういう会話も好きではないのだ、見えてしまうから負い目を感じてしまうのだ。


「いっ君、体貸して」


「え!? とり憑かないって言ったじゃん」


唐突な要求に焦るが何となく次の言葉は予想できた。


「いっ君のおべんと食べたい」


予想通り、心の中で一生は呟いて綾に向き直る。


「貸すのはいいけど、それで未練なんか作らないでね」


「わあ! ありがとう!!」


弁当を一口食べた後、綾は一生から離れて笑顔を見せる


「美味しかった!」


「乗り移って味まで感じられるって幽霊って意外とすごいね……」


「それはほら、幽霊なのにいっ君に触れたりしたじゃない? 多分何するにしても出来るのっていっ君みたいな特殊な人限定なのかもね」


「特殊な人……か」


一生にとっては、干渉の範囲は話をしたりちょっと触れたりするまででこれ以上は出来ないと思っていたのだ。


今回ので体を貸し与えることによって感覚まで与えられることを知った。


「ねぇ? 水上さんはどうして幽霊になったの?」


「もう! 水上さんなんて呼ばないで綾ってよんでよ~」


「え? いや、でもほらあんまり慣れ慣れしいのもどうかと」


「私はいっ君って呼んでるのに?」


意識したら途端に一生の顔が赤くなる。


「……ッ!?」


「幽霊相手に真っ赤っか」


けらけらと笑う綾を尻目に一生は少しふてくされながらも質問をもう一度する。


「あ、綾……ちゃん、はなんで幽霊になったの?」


「硬いなあ、まぁいっか。 で質問の答えだけど、私にも分んない」


「なんか未練があったんじゃないの?」


「どうなんだろうねー? 死に際の事とか覚えてないんだよね」


あっけらかんという彼女は本当に未練がないようだった。


綾はしばらく思い出そうと唸っていると急に何かひらめいたように口を開く


「死んだ場所行けば分かるかも!」


「普通死んだ人間がそんな所行きたくないでしょ……」


「いいの行くの!」


「えー……」


ということで放課後になって一生は綾に振り回される羽目になった。


まず、綾の家前まで来てそこから死ぬ日の1日を繰り返してみようということになった。


一生は正直乗り気ではなかったが彼女は楽しそうにしているので、やきもきしたまま付き合うことにした。


綾の一日は普通の学生と大して変わらなかった。


学校へ行って、放課後遊んで帰ったということだ。


その途中で自分の行動を思い出せなくなった。


「どうしたの?」


「こっから分んなくなっちゃった」


そっか、じゃあ彼女はこのあたりでと憶測を立て辺りを見回した。


しばらくしてやけに幽霊の多く集まっているところを見つけた。


「綾ちゃん綾ちゃん、あれ!」


「何いっ君? なに見つけたの?」


綾と一緒に霊の集団に近づく。


霊たちは一生に気づいたのか皆去っていった。


「ここで事故があったみたいだね」


「花束が添えてある」


事故の痕跡はなくなっていたが、道に花束が添えてあるのを見てそう悟った。


あまり気持ちのいいものではないが、ここで記憶がなくなり花束が添えてあるということはそういうことなのだろう


「さっきの霊もそうだけど、ここで結構な人数が亡くなってるみたいだ」


「そっか、私もここで」


「多分だけどね」


「でも、死んだ場所と死因が事故ってことは分かったねー」


なんともいえない気持ちにとらわれ一生は言葉を返せなかった。


それからは綾も空気を読んだのか帰宅を促して、その場を後にすることにした。


「じゃあねー」


「……うん」


昨日と同じ場所で別れて綾と友達になった2日目の終わりを迎えた。


翌日も綾は変わりない態度で一生と一緒にいた。


「今日は授業中にもいるんだね」


「いっ君と一緒にいたほうが退屈しないから」


赤面したのを隠すように一生は顔をそむける。


「あは、照れてる照れてる」


今日は最初のような悪戯とかではなく別な意味で授業に集中できなかった。


「いっ君今日はどっかで遊んで行こうよ」


放課後になってからそんなことを言われた


幽霊にそんなことを提案されるというのになぜか一生はおかしくなって笑ってしまった。


教室に残ってた人からの視線が集中した。


その視線に耐えかねて一生はあわてて教室を飛び出した。


「いっ君おかしい」


「誰のせいで……」


まだ横で笑っている浮遊霊に悪態をつきながらも、彼女が遊びに行きたいと要望を出したのでそれに応えることにした。


「で、どこに行きたいの?」


「幽霊でも楽しめる場所!」


「そんなものありません!」


「じゃあ、いっ君の好きなところでいいや」


そう言われて自分がよく行くところを思い出して幽霊でも一緒に楽しめる所を思い出した。


「あ、楽しめる場所一か所あった」


「え? どこどこ?」


「まぁ着いてきて」


一生が連れてきた場所はゲームセンターだった。


「一緒には遊べないけど、僕の体使えば遊べるでしょ?」


「いっ君不良だー」


「いつの時代の子だよ」


「一緒に遊べるのがいいー」


「無理を言わないの」


綾は少し落ち込んだそぶりを見せたがすぐにある物に目が行く。


「いっ君あれやろう!」


綾がさしたものはプリクラだった


「いやいやいやいや!? 僕一人で入るのはずいぶん勇気居るし、一人プリクラは寂しすぎるよ!」


「ほら心霊写真とかもあるんだし私も写れるよ! ……多分」


「それはそれで怖いんだけど……」


「いいからやるの―!!」


断っても聞きそうにないので、恥ずかしさを忍んで


一人でプリクラを始める。


隣には綾がいるが、他の人から見れば可哀想な人にしか見えないであろう。


『3、2、1、パシャ』


「……うわー虚しい」


そうして完成したプリクラは


「……写ってるし」


「ね!ほら写った!」


綾がしっかりと写っていた。


思いっきり笑顔で一生の肩に手を掛けて後ろから顔を出す形で、完全に突込みどころ満載の心霊写真だった。


「もう少しどうにかならなかったのこれ」


「良いじゃん、幽霊らしいでしょこれのほうが」


「幽霊って主張するのもどうかなあ?」


「それどっかに貼ってよ、記念記念!」


「心霊写真を好んで貼る人なんていないよ……」


「携帯にでも貼っちゃえ!」


「それは一番見られる選択だよ!」


何度かの押し問答結果、一生が折れて携帯の裏側に貼った。


綾は嬉しそうに笑っていた。


そんな綾を見てまぁ、いいかと思えてしまっていた。


その後も綾がやりたいというものを全てやった後に帰宅することにした。


そしていつも別れる場所で


「じゃあねー」


綾は去っていく


その背中が一瞬寂しそうに見えた。


「綾ちゃんっていったい夜は何してるのかな……?」


呟いたのは誰も聞いていなかった。


次の日は昼まで綾は現れなかった。


どうしたんだろうと思いながら友人と昼食を取っていると綾がいつもの通り飛んできた


「お昼よういっ君」


「あ、綾ちゃん、今日は来ないのかと思ってた」


「あー、夜は暇だから空を気の向くままに漂ってるんだけど、昨日ちょっと行きすぎちゃったみたいで、帰ってくるの時間かかっちゃった」


「夜そんなことしてたんだ……」


「帰る場所なんてないからねー」


「お、おい……一生、何と喋ってんだ?」


一生は最近になって綾といることがだんだん普通に感じてきた。


しかし相手は幽霊であって、今の一生は何もないところに話しかけている状態である。


そこを忘れて普通の声量でしゃべった時には変な誤解をされるのは時間の問題だろう。


まさに今の状態がそうだったと気づくのは友人に心配されてからだった。


「えっ!? い、いや何でもないよ」


「いや何でもなくないだろ……綾ちゃんって誰だよ?」


「き、気のせいだよ」


苦しい言い訳だと思いつつも誤魔化すほかないので必死に白を切る。


さすがに綾もまずいという顔をしていた。


「なぁ、お前最近なんだか変だぞ? 付き合いも悪いしさ」


「最近忙しいから疲れてるのかも? 今日ゆっくり休めば大丈夫だよ」


友人は怪訝そうな顔をしたがそれ以上は聞いてこなかった。


心の中でごめんと謝りながら綾が居たほう見る。


そこに彼女はいなかった。


綾がいなくなったことに胸の中でもやもやした気持ちを抱えたまま放課後まで過ごす事になった。


もしかしたら疲れているっていうのを本気でとらえられたかもしれないと思っていた


帰り道に綾を見つけた。


綾は塞ぎ込んでいた。


「綾ちゃん……」


「……いっ君」


よく見ると綾は泣いていた。


「どうしたの?」


「グスッ……私がいっ君に迷惑を掛けてる」


「……いっ君疲れてるって言ってたし、だから私のせいかなって、他にも生きてる友達がいるのに私がいっ君一人占めしてたりとか、私ずっと迷惑掛けてたと思ったらいっ君のそばにいちゃいけない気がして……」


生きてる友達という表現になぜか脱力した。


「なんでそう思うの?」


「だって私はもう死んじゃってるんだよ? 幽霊なんだよ? いっ君を変な人にしちゃってる」


「…………」


うまく言葉が出なかった。


一生からしてみれば彼女は悩みなんてない明るい女の子だと思っていた。


普通は気にするところを気にしないと決めつけていたのだ。


「私もう、いっ君から離れないと、成仏しないと」


その言葉を聞いた自分の中に、離れるのが嫌だ!という感情があった。


「……あ、綾ちゃん」


「……ッ!」


一生が近づくと綾はビクッとした。


「綾ちゃんは僕の友達でしょ? 友達と一緒に遊んだりしたいっていうのは普通の事だと僕は思う」


「でも、それは生きているからでこそ、私といっ君は本当は出会えないんだよ?」


「僕は綾ちゃん友達になれてよかったと思う、だって僕に幽霊が見える事が初めて良いと思えるようになったんだよ?」


「…………」


「綾ちゃんに成仏はしてほしいけど、でも、もう少し友達でいてもほしいんだけど……駄目?」


「それは……ダメだよ」


答えを聞いたとたん自分の足元が崩れていくような感じがした。


ああ、また、見えるだけになっちゃうのかと思った。


「だって、これ以上友達でいたら私の未練が出来ちゃう」


「……え?」


「楽しいのに終わりにしたくなくなっちゃうよ……」


「綾ちゃん……」


「……僕はそれでもいいよ、その未練を晴らせるまで僕は付き合うよ」


「ダメ、いっ君を私のわがままに巻き込めない」


「綾ちゃん。僕にとっては、生きている人でも死んで幽霊になった人でも、些細な問題でしかないんだよ」


「……何を言っているの?」


「僕には見えているんだ、皆が、生きてる人でも幽霊でも、どんな人だって見えてるんだよ」


「…………」


「実を言うとね、僕もちょっと楽しかったんだ、見えてるだけじゃなくてこうして友達としての干渉が出来ることに。だからもっと僕を楽しませて」


そこまで言って綾に微笑むそして


「なんて、わがまま言ってみたりね」


おどける。


「いっ君、……あはは」


いつしか綾は笑っていた。


「いっ君はひどいよ、幽霊をこの世に引き留めちゃうなんて」


「うん、本当だね」


そして、一生はさっきの感情に対して抱いちゃいけない感情があったことに気づいていない。


綾もまた同じ感情を持ち始めていた。


帰り道


「じゃあ……ね」


「……あ、あのさ」


「どしたの?」


「もしよかったら……」


一生はここまで言って止まった。


自分は今何を言おうとしたと自分に問いかける。


「……いっ君?」


「もし……さ、夜の間は暇なら僕の家……来てもいいよ」


言ってしまった。


これ以上は踏み込んじゃいけないと綾も分っているからここで別れていると気づいていたのに。


一生は自分が情けなく思えた。


彼女がどこかに言ってしまう気がして怖かった。


「いっ君」


「……うん」


「それはダメだよ、そうしたら私、居着いちゃうよ」


少し暗い顔をした後顔をそむけて


「本当に成仏できなくなっちゃう」


胸に突き刺さる一言を言われた。


でも一瞬、一生はそれでもいいとも思えてしまった。


(何を考えているんだ僕は!! そんなの綾ちゃんが望むわけがない!)


「ごめん、綾ちゃんがどっか言っちゃうような気がして」


「……大丈夫、まだここに居るよ」


"まだ"、この言葉が一生の胸の中に残り続けた。


次の日綾は別れた場所で待っていた。


一生はそれがちょっと嬉しかった。


「おはよーいっ君」


「おはよう、今日はここにいたんだ」


「うん、だって動いてないもん」


「……え?」


「だってー昨日みたいにお昼まで帰ってこれなかったりするといっ君泣いちゃうでしょ?」


「な、泣かないよ!」


「だからずっとここに居たの」


それ以上会話は続かなかった。


昨日からちょっと気まずい雰囲気がある。


どれほどたったか先に口を開いたのは一生だった。


「昨日ずっと一人で寂しくなかった?」


「うん、平気だったよ。慣れちゃったし」


「そっか、ずっと一人だったんだっけ」


「ま、今はいっ君居るから夜以外は寂しくないけどね」


「そっか」


また会話がなくなる。


それから学校へ着くまで2人はただ一緒に行動しているだけだった。


授業中、綾は一生の隣でじっと立っていた。


昼休みには普通に話せるまでになった。


放課後はまた綾が遊びに行きたいと言うので、綾の行きたいところに一生は付き合った。


そして、別れる場所で、お互いに動こうとしなかった。


「……いっ君行かないの?」


「綾ちゃんはずっとここにいるの?」


「うん、私はこれ以上は行けない」


「…………」


言葉が出ない、けど体が動いた。


「ごめん……」


謝って済む問題じゃないかもしれない。


彼女はこれから自分を嫌いになって関わろうとしなくなるかもしれない。


だけど、一人は寂しいからせめてもう少しだけ一緒にいようと思った。


だから、強制的に彼女を引っ張った。


本気で、自分から干渉しようとしたのは初めての事で自分でも驚いていた


「え、ちょ、いっ君!?」


彼女は困惑したまま一生に引っ張られる。


「ごめん!」


そうして自分の家へ招き入れる。


「……いっ君、なんで連れてきちゃったの? もう私絶対未練になっちゃう」


「でも、一人は寂しいよ」


そう言って一生の見た先には両親の仏壇があった。


「わかっちゃうんだよ一人の辛さが」


「いっ君のお母さんとお父さん……」


「二人はちゃんと成仏してくれたよ。この目でしっかりと見た」


「そうしたら僕は一人ぼっちになった」


この話を誰かにしようと思ったことはない。


「この家は僕一人には広いから……」


だけど……自然と言葉が出ていた、そんな感覚だった。


「だからさ、成仏するまでの間だけでいいから一緒にいてください」


「えへへ……プロポーズみたいだね」


「認めたくなかった、認めちゃったら絶対綾ちゃんと離れられなくなるから。でも僕――」


「待って待ってー、言っちゃダメだよそれだけはダメダメ」


「――好きなんだ」


「――ッ!?」


彼女の言葉を無視して続けた。


嫌われてもいい、ただ自分の気持ちを表した。


それが彼女にとってどんなに残酷なことかもわかってた。


自分はひどい奴だ。それがわかってて伝えたんだからひどい奴だ。


「……何で、何で言っちゃうの? ひどいよいっ君は、本当にひどい」


「うん。わかってる、でも謝らないよ、謝ったら余計ひどい奴だ」


「グスッ……いっ君はひどい」


「まだ数日だけど、ここまで綾ちゃんと過ごして、こんなに楽しかった、だから僕は正直に言うよ」


一生は綾に向き直って、深呼吸をする。


そして――


「僕は、水上 綾さん。君の事が大好きです」


僕はこの世で一番やってはいけない事をやってしまった。


「……ずるいよ、いっ君」


「うん」


「私だっていっ君と一緒にいるの楽しいし離れたくないよ」


「うん」


「でも好きになっちゃったらダメなんだよ?」


「いっ君はまだ生きてる、私はもう死んじゃってる」


「うん」


「生者と死者は向き合っちゃダメなんだよ」


「だって、絶対認められることのない関係だよ」


「それでも、僕は綾ちゃんともう少し一緒に居たい」


「ダメだってばあ……」


涙声で訴えてくる。


辛い思いをさせている、自分はひどい人間だ。


神様は僕を天国には迎えてくれないだろう。


でも――


(それでもいい、もう少し綾ちゃんと一緒に居られるなら)


「僕が死ぬまでじゃなくてもいい、僕がもう少し成長して綾ちゃんと少しだけお別れ出来るようになるまででいいんだ」


「うぅ…ひっく、グスッ」


「もうちょっと、子供な僕に付き合ってください」


「そして、少しの時間だけでいいから僕の恋人になってください」


「―――」


彼女の言葉は発せられなかった。


代わりに大粒の涙を零して泣き崩れてしまった。


「うっ、うあっ、うわぁぁああん」


この時の彼女を見て一生は罪悪感に押しつぶされそうなのと、自分に正直になった清々しさの両方が一生の中で渦巻いていた。


綾が泣きやんだのはほとんど深夜になってからだった。


「落ちついた?」


「うん、ごめんね」


「何で謝るの? 綾ちゃんは悪いことしてないよ、むしろ悪いのは僕で――」


「そうじゃなくて、まだお返事してないから」


「あ……」


「いっ君」


綾が一生に向き直って


「う、うん」


一生もそれに倣う


「私もいっ君の事が好き」


「天翔 一生君の事が好きです」


「たった数日一緒にいただけで、人と一緒に居居るのがこんなにも嬉しい事だと知りました」


そのあと少し伏し目がちになって


「だけど私は、もうあなたと同じ時間を過ごす事は出来ないし、住む世界も違います。そしてこれからもずっと私と一生君の関係は誰にも認めてもらえない」


そして決意のこもった目で聞いた。


「――それでも、私を好きでいてくれますか?」


一生は


「もちろん」


笑顔と共に答えた。


彼女の顔はみるみる明るくなって


「――ッ! いっ君!! 大好きー!!」


飛び込んでくる。


一般的に幽霊は人を通り抜けるが一生は違った。


しっかりと受け止めた。


「綾ちゃん、少しの間だけど、よろしくお願いします」


「こちらこそ!」


ゆっくりとお互いの顔が近づいて――


そして、唇が重なった。


誰にも認められない、人間と幽霊の不思議な恋が成就した。


その次の日から綾はずっと一生の傍にいる。


「おはよーいっ君」


「いっ君お昼はー?」


「どこか遊びにいこうよ」


「んーやっぱり、いっ君のご飯おいしい……っていってもいっ君の体で味だけ感じてるだけだけどね」


「お休み、いっ君」


一生にとって毎日が楽しかった


綾にとっても同じだった。


―――数年後


「じゃあ、行ってくるね。綾」


そう言って、家を出る。


「はーい行ってらっしゃい、いっ君。と言ってもずっと一緒なんだけどねえ」


「まぁ、確かにそうだね」


「まさかそのままいっ君の守護霊になっちゃうとは思わなかったよ」


実は綾は一回成仏したが、なんとそのまま守護霊として戻ってきたのだった。


理由としてはあの事故に綾は含まれることは無かったのだという。それが起きてしまった事で不憫に思った神は望みを一つ叶えるという条件を与えた。


生き返ることも出来たという。


しかし綾は一生の守護霊になることを望んだ。


「こんな都合のいい事って中々無いよね」


「本当だよねーこれからはいっ君が死ぬまで面倒みてあげるから」


「よろしくお願いします」


「あ、そうそう、この世だったら彼女とか別に作っても大丈夫だからね」


「え? 急にどうしたの?」


「あの世で私の事好きになってくれればこっちでは我慢するから」


「あはは、相当未来だね……」


「いいんだよーどうせ私はもう年を取らないしずっとこの容姿だもん!」


「それにね、私の事が見えてるいっ君とずっと一緒だから気長に待ってられるよ」


「ねっ、未来の旦那様っ!」


この時、ああ、幽霊に魅かれてしまった僕は永遠に、この子には勝てないと一生は思った。


~fin~

どうも(レン)といいます。

最後まで読んでいただいたらありがとうございます。


投稿の初作品が幽霊ネタっていうのはかなりハードだった。


と言ってもそこまで時間掛けたわけでもないのでいきなり超展開になったり話がすごい飛んだりといろいろと抜けている場面もありますが


やっぱりどんな駄文であれ、恋愛物は想像しやすいですね。

幽霊と恋愛というのも中々面白そうで、そう思って書いては見たものの、自分が書きたい部分がわからなくなり、最終的家の中でのネタを書きたかったのに全部没になるという始末……


読んで面白いのかどうかわかりませんが、書いていては楽しかったです。


あ、後主人公の名前が紛らわしすぎてすいません。

ちょっと作品ともかけたかったので一生という字を使い(いつき)にさせてもらいました。空白の数年間一生と綾がどう暮らしたかなどは、皆さんのご想像で膨らませてください、そうすることで物語はどのような道にでも進むと思います。

けして書いてないからということで人任せというわけじゃありませんよ!!ほ、本当ですよ!!


……そうすると自分には考え付かなかったような面白い物語が出来るかもしれないですね。それはちょっと楽しみです。


これから書く作品の多くが恋愛モノだったりするかもしれませんが暇つぶし程度に読んでもらえれば幸いです。


それではまた次回の更新があればお会いしましょう!

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