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茗荷9
「私、誠二さんのこと…、ずっと好きだったんです」
直子は心に秘めていた思いを伝えていた。
「直ちゃん…」
誠二さんは暫く沈黙してから、
「ありがとう」と言った。
「寿屋に俺が居る間に、また茗荷貰いに来てよ。俺も直ちゃんと離れるのが辛かったんだ」
「行きます。誠二さん、私、誠二さんにとっては、まだまだ子供ですか?」
「子供なんかじゃないよ、綺麗な女性だ。いつの間にか、俺も直ちゃんのことを好きになっていたよ」
「でも、惚れていない…?」
「いや、直ちゃんは茗荷のように強い女だ。狭い庭で順応して、毎年、芽を出す。そんな女が俺は好きなんだ。上手く言えないけど、直ちゃんとはまた、ずっと会っていたいと思っていたんだ」
沈黙が続いた。私は答えがもらえず、立ち尽くすのみだった。
「直ちゃんが、こんな、俺を好きで居てくれるのなら…、俺は直ちゃんと付き合いたいよ」と誠二さんは答えた。
直子は涙が出てきた。階下では、兄がタバコを吸って待っていることだろう。
完