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お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


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69 買ってくださいますわよね

「出来ましたわ」

 アセリアが、ファエンの耳元で囁く。


「お、それはそれは」

 ファエンのニヤリとした笑みは、ともすれば悪巧みしていると勘違いされても仕方がないものだった。


 アセリアは、コッソリと香袋を5つ、ファエンの手に押し込む。

 ファエンが、それをじっくりと眺めた。

 太陽に透かすように。まるで、宝石の品定めをする宝石商のように。

 最後に、手触りを確かめる。

「いい品だ」

「品質には、自信がありますの」

「そりゃあ、俺が持ってきた生地はいいだろ?な!」


 そんな呑気な会話をし、アセリアは布団を手に入れた。

 布団は、ファエンが仕事を終え次第、小屋に持っていってもらうことになった。


「これが、800個作れますわ」

「ああ。いい豆の当てができたところだ」

「それはよかったですわ」


「売るためのルートも見つけてある。貴族の連中だ」

 ふいっと、夜会の景色を思い出す。

「流石ですわ」


 アセリアは、まるで香袋が魔法の薬ででもあるかのように、ほくそ笑んだ。

 あの世界に、一石を投じられるのは、悪い気持ちではありませんわね。


 アセリアは、遠くを見やる。

 先には未来が見えていた。


 豆が手に入る。

 輪作が出来る。

 いい麦が作れるようになる。

 この村で、お腹が空くことはなくなるだろう。


 けれど、思う。


 お腹がいっぱいになって。


 それで?


 麦が売れるほど育つわけではない。

 豆だって、また翌年蒔く分を取っておかなくてはならない。食べられる分は、思ったほどには多くないだろう。


 ただ、冬に飢えることはないようになるだけだ。


 それで?


「それで、ですわね」

 未来を見る視線。

 その先には、森があった。

 リーフが暮らす森。

 木の実が豊富な森。

 なぜこの場所にルーシエンが小屋など持っているのか少しだけわかる。


「将来的に、イチゴを売りたいんですの」


 それは、夢物語だった。

 けれど、それは不可能な夢物語じゃない。

 そして、必ず叶えなければならない夢物語だ。


 ファエンが、

「ほぉお……」

 と感心した声を出した。

 細い目が、更に細くなる。


「それは難しい話だ。隣の村でさえここから5時間かかるんだ。買い取ってくれる町まで行ってたら、ここで商売してからその日中にとはいかなくなる。どうする?お嬢さんは、もう答えを知ってるかい?」


「黒い橋、ですわね」


「そうだ。あの橋が使えるようになれば、イチゴをその日中に売りにいける」


「やはり、あの橋ですのね」


「木の橋だぞ?改修してくれよ。そしたらもっとこの村にも寄ってやれる」


 アセリアが、悲しい笑顔を見せた。

「お金がありませんの」

「金か」

 その言葉を噛み締めると、ファエンは手の中にあった金貨を、指の上でくるくると回して見せた。


「そうだな」

 ファエンが香袋に目をやる。

「いい品物を作ってくれているお嬢さんに、色をつけてやってもいい」


「おいくらですの?」


「100個あたり、金貨3枚だ」


 ドキリとする。

 ここにきて、金貨など、見たこともない。

 それは、未来が少し開けた音だった。

さて、香袋事業が順調ですね!

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