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【書籍化】この優しさには裏があるはず!~転生幼女の淡綻譚~  作者: たちばな立花


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書籍化記念SS おみまい

久しぶりにお祝いSSを書かせていただきました。

書籍発売です!よろしくお願いします!

 リオーク王国は日常を取り戻した。私の魔力暴走でぐちゃぐちゃになった王宮の一部は、たった数日で無事に修復されたようだ。ほとんどトリスティンの魔法のおかげらしい。

「いやな記憶はないないしましょうね~」と子どもにでも聞かせるかのように言ったあと、彼は王宮を元通りにしたのだという。

 さすが紫の魔法使いは規格外である。


 しかし、まだ解決していない問題があった。

 私とルノーは、こっそりアランの部屋を覗いた。


「陛下、安静にしてくださいと何度言ったらわかるのですか?」

「もう傷口は塞がった。だから問題ない」

「そう言って、昨夜は遅くまで働いていたとか。働くにしても、もう少し体をいたわってください」

「そうは言っても、やらなければならない執務がたくさんある」


 どうやらアランは医師に苦言を定されているようだ。あの事件から数日が経ち、アランの傷は回復に向かっている。しかし、彼は忙しさゆえ、医師の指示を無視して執務を行っているようだ。

 医師はアランに巻かれた包帯を解き、傷口を消毒する。


「陛下、傷口が開きかけております。どうか、安静になさってください」

「この程度、平気だ」


 私とルノーは顔見合わせ、そっと部屋から離れた。


「おとーたま、いたい」

「うん。痛そうだったね」


 アランは私たちには「もう治った」と言っていた。けれど、実際にはまだ傷口は治りきっていない。

 私たちは廊下で立ち止まり、同時に小さなため息をついた。


「僕たちにできることって何かあるのかな」

「おちごと?」

「お仕事手伝えたらいいんだけどね」


 ルノーは眉尻を下げる。

 私たちはまだ幼い。だから、アランの代わりに執務行うことはできない。何せ彼は国王なのだ。


(私も国政に関しての知識はないから、役に立たないし)


 私は肩を落とす。

 魔法であればいくらでも手伝えるのだ。しかし、傷を塞ぐ魔法など知らない。そうなってくると、私は役立たずだ。

 すると、ルノーが笑顔で私に提案した。


「僕たちは何もできないけど、父上を元気づけることくらいなら、できるんじゃないかな?」

「げんき?」

「そう。父上の好きなものをプレゼントしよう! どう?」

「ん。しゅる」


 私はしっかりと頷いた。今の私にはそれくらいしかできないからだ。


「そうと決まれば、プレゼント探しだ!」

「おー」


 ルノーが左手の拳を掲げる。私は真似をして小さな拳を空に突き上げた。



 私たちは二人で王宮の中をうろうろしている。目標は決まった。けれど、肝心のプレゼントが見つからないのだ。

 ルノーが庭園の花を指す。


「花とかどうかな? ありきたりかなぁ~?」

「ん。もっと、しゅごいの」

「そうだね。父上には元気になってもらわないといけないもんね」


 私はしっかりと頷く。

 花程度で元気になるとは思えない。


(やっぱりトリスティンに元気になる薬の調合方法を聞くとか……?)


 しかし、それでは時間が掛かってしまう。

 私とルノーは王宮を探し回った。調理場にも顔を出した。ここは魅惑の場所だ。ここに来るとおいしいものが貰える。


「ルノー殿下、レティシア殿下、どうされました?」


 料理人が笑顔で私たちを迎える。


「今日も最高のブルーベリーが入っておりますよ」

「そうだ! 父上にブルーベリーを持って行こうか?」


 ルノーの提案に私は頭を横に振った。


「め」


 ルノーは知らないかもしれないが、アランはブルーベリーが苦手だ。以前、ブルーベリーをプレゼントしたことがある。しかし、彼は一口も食べなかった。

 きっと、苦手だけれど私には言えなかったのだ。王族にもなると好き嫌いを隠す習慣がある。だから、ルノーが知らなくてもおかしくはない。


(せっかくなら好きなものをあげたほうがいいと思う)


 苦手だとわかっていながら、プレゼントするのはよくないと思うのだ。


「だめか~」


 ルノーが眉尻を下げる。

 すると、母のシェリルに声をかけられた。


「あらあら、ルノー、レティシア。二人ともこんなところでどうしたの?」

「母上! 実は父上のお見舞いがしたくて!」

「あら? 陛下はもうすっかり元気になったのよ」


 シェリルは私とルノーの頭を撫でた。

 私とルノーは顔を見合わせる。どうやら、アランの傷がまだ治っていないことは私たちには秘密のようだ。

 心配かけまいとしているのだろう。


「げんきでも、みまい、しゅる」


 私はシェリルを見上げてハッキリと言った。


「そうね。きっと陛下も喜ぶわね」


 シェリルは目を細めて笑う。


「僕たち、父上に何を上げたらいいか悩んじゃって」

「ん。おとーたま、ほちいもの」

「そうねぇ~。二人の贈り物ならなんでも喜ぶと思うわよ?」

「最高の贈り物がしたいんです! ね、レティ!」

「ん」


 そうだ。せっかくあげるなら、本心から喜んでもらえるものがいい。

 私は何度も頷いた。


(お父様に欲しい物なんてあるのかしら?)


 欲しいものといえば、アランに一度聞いたことがあった。「欲しい物はないか?」と。そのとき彼は、なんと言っていただろうか。


「はっ……! おにーたま」


 私はグイグイとルノーの袖を引く。そして、私は彼の耳元で囁いた。

 私の言葉に彼は目を見開く。


「本当?」

「ん」

「そっか。じゃあ、一緒に父上のところに行こう」


 ルノーは私に手を差し出す。私は彼の手を握った。


「あら? いいプレゼントが見つかったの?」

「はいっ!」

「ん」


 私たちは調理場をあとにした。そして、まっすぐアランの執務室へと向かう。なぜかシェリルもついてくる。きっと、何をプレゼントするのか気になっているのだろう。

 執務室に入るとアランがわずかに首を傾げた。


「どうした三人揃って」

「わたくしは見学よ」


 シェリルがコロコロと笑う。


「父上、少しだけお時間をいただけますか?」

「構わないが、どうした急に?」


 アランは立ち上がり、私たちのもとに歩み寄る。

 私はアランを見上げ眉を寄せた。私の身長ではアランは山のようだ。


「とおい」


 ルノーはキョロキョロと辺りを確認すると、アランの袖を引く。


「父上はソファーに座ってください!」

「ん」

「ソファーで話を聞けばいいのか?」


 アランは私を抱き上げると、ソファーに座る。ようやく彼との距離が近くなった。

 ルノーは私の反対側に座る。二人でアランを挟むと私たちは頷き合った。


「父上、怪我をしたばかりなのにお忙しいと聞きました」

「怪我ならもう治った。だから安心しろ」

「おとーたま、ねんねん」

「レティも、父上にはもっと休んでほしいそうです!」

「そうか。心配をかけたな」


 アランは私とルノーの頭を順番に撫でる。大きな手だ。本当はまだ完全に治っていないのに、「治った」という辺りがアランらしい。


「父上、あまり無理はせず頑張ってください」

「おとーたま、がんばって」


 私とルノーは頷きあうと、アランの頬に口づけた。アランが目を見開く。


「あらあら」


 シェリルが頬に手を当てて笑った。

 アランの忙しさを変わることはできない。今、私たちにできることは応援することくらいなのだろう。

 そして、応援のしかたはこれしか知らなかった。何よりこの方法が有効であることはよく知っているのだ。

 アランがわずかに笑った。


「ありがとう。頑張れそうだ」

「陛下、元気をもらったからと言って、頑張りすぎはだめですよ」


 シェリルがすかさず言う。アランはわずかに肩を竦める。

 その後、シェリルにもおねだりをされ、私たちは彼女にも口づけをプレゼントしたのだった。



2026年8月25日書籍『この優しさには裏があるはず!~転生幼女の淡綻譚~』が発売されます。

これも皆様が応援してくださったおかげです。

イラストはにもし先生!とっても可愛く描いていただきました。


WEB版から改稿と加筆をしてパワーアップしておりますので、読んでいただけたら嬉しいです。

WEB版共々、よろしくお願いいたします。


ゆっくりではありますが、第2章も連載再開したいと思っています^^

(わたくしごとすぎるのですが、腰椎間板ヘルニアになってしまって更新がゆっくりめになりそうです)

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