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追放される聖女

小さな村の教会にてーーー


「聖女様!お祈りの時間です!」


ドアを激しくノックする女


「ウルセーなぁ、周期だって言ってんだろ〜?」


ドアを体で抑え股間を押さえながら、めんどくさそうにそう答える修道服姿の女


「聖女はデリケートなんだ、今日はもうお開き

そうみんなに伝えといてくれ」


「えぇ!?困ります!出てきてください!」


ノックがさっきより激しくなる


「神聖な儀式を中止しろだなんて

そんなの村の人達が許すはずがないじゃないですか!」


「あ〜うるせぇなぁ…そういうの適当にまとめるのがお前らの仕事だろぉ?あ、ほらぁ…お前がうるさいから血がこぼれちゃったじゃん」


ぽたぽたと血が落ち、床を真っ赤に染める


「とりあえず、"今日はできません"って

適当に伝えたらいいから、お前も女ならわかるだろ?それどころじゃない」


女はそう言われるとピクッとなり、ノックしていた手もぴたりと止まる


「あーイライラするぅ、とりあえず今日はそっとしておいてくれない?儀式はまた明日やるから」


「……絶対ですよ?!」


そう言って女はドアから離れ、やがて足音も遠ざかっていった


「たくっ…何が神聖な儀式だ

どうせいつもと同じ、村の男達にもみくちゃにされるだけだろ、あんなんただの輪姦だよ」


女はそう言って血の付着した紙をクズかごに投げ入れた


「聖女様は今日はとても具合が悪く

お祈りは中止とさせていただきたく……」


村では修道士達が必死に村人達の怒りを沈めている最中であった


「はぁ?ふざけんじゃねーよ!」

「昨日もそういってたじゃん」

「こっちは溜まってんだよ!」

「やらせろー!」


中止の知らせを受けた村人達から激しくヤジが飛び慌てふためく女修道士達ーーー



「なぜ君が不自由なくこの村で暮らせていけるかわかるかね?その身を村人達に捧げているからだよ」


女は村の村長に呼ばれ

お叱りを受けていた


「食事も捧げ物も全てこの村の者達が汗水流して集めたもの、タダではないのだよ?」


「相応に応えてやらなきゃ不公平ではないかね?」


村長は机に肘をつけ、ギラリと目を光らせる


「でも村長、昔は無限に出来たけど今は生理があるから……」


女の反論に対して村長はハァと深くため息を吐きながら、こう続けた


「身寄りのないお前を拾い、世話をした…

あの時は本当に手を焼いたもんだよ」


それを聞いた瞬間、女は黙り込んだ


「この村が大きくなってもうどれくらい経つだろうか、お前と私が二人で築き上げてきた

この村を…思い出の場所を私は無碍にすることなど到底できない」


「このままでは君は破門だ

この村にいられなくなる…私にそんな判断をさせないでほしい」


「村の期待に応えること、それが村発展への近道なのだよ、彼らの期待を裏切ってはならない」


「いいかね?」


女は何も言い返せず

「はい」と返事する事しかできなかった


「わかりました」


そう言って部屋を出た聖女は

しばらく廊下を歩き、村長に聞こえない場所でスゥーっと息を吸い込み、言葉と共に一気に吐き出す


「腐れハゲが」


聖女は唾を吐く


「何が身寄りのないお前を〜だ、何が村の期待を〜だ!村発展したいだけじゃねーか!」


聖女は床を強く踏みつける


「みんな自分の都合ばかり考えやがって

私の事なんて、ただの使い勝手の良い道具としか見てないくせによぉ」


「村の男達は聖女聖女って慕ってくるが

身体が目当てなだけだし、修道士どもは白い目向けて裏で悪口言ってきやがる

おまけに変な病気かかっちまってずっとま○こかいーし」


股間をぼりぼりと掻きながら

イライラを吐き捨てる聖女


「誰も味方なんていない、この村にいて

いい事なんかひとつもなかった、拾われた頃は救いだと思ったが全然そんなことはなかった

更なる地獄が出迎えてくれただけだった」


「散々利用した挙句に破門だと?

どこまで図々しいんだ、私だってな

別に好きでここにいるわけじゃねぇんだ!

飯が食えなきゃこんな村、今すぐ出てってやる

飯が食えなきゃ聖女なんて今すぐ辞めてやる!」


聖女は拳を強く握りしめた


「ふっ、上等だよ

私がいなきゃそもそも村はここまで大きくならなかった、私がいなきゃこの村の体制はすぐに崩れて奴らは行き場を失うんだ、どっちの立場がデカいかハッキリさせてやろうじゃねぇか!

破門にできるもんなら破門にしてみやがれ!その瞬間お前らは終わるんだ!私はいつでも準備万端だ!かかってこいクソが!!」


聖女はシャドーボクシングをして気合を入れた


次の日、聖女は村長に呼ばれ

破門を言い渡された


「は、破門……!?」


「代わりが見つかってね

村の儀式は彼女に任せることにしたんだ」


「なんでも怪我や病気を呪文一つで綺麗さっぱり消してしまうそうだよ、ヒーラー聖女と呼ばれているそうだ」


「ヒーラー聖女……」


村人の股間付近に指をかざし、呪文を唱えるヒーラー聖女


「うぉー!?ち〇この痛みがなくなったぞ!?」

「スゲェ!!本物だ!!」

「ヒーラー聖女万歳!!」


村人達に囲まれて

ヒーラー聖女はにまぁっと笑みを浮かべた


「これからは彼女がこの村を支えてくれる事だろう

彼女なら必ずこの村の発展に大きく貢献してくれるはずさ」


村長は大きな期待の眼差しをヒーラー聖女に向けた


「じゃあ、そーいう訳だから

君はもう自由だ、どこへでも好きに生きたまえ!」


そう言って聖女を村の外までつまみ出す村長


「はい、1ヶ月分の食料と3日分の宿代ね

今までご苦労さん、達者で!」


そう言って村長は一人村に戻り

追放された聖女だけが虚しくそこに残された


冷たい風が彼女を寂しく横切るーーー



「マジで追い出されたし、なんだアイツら

血も涙もねーのか?」


聖女は呆然としながら自分の置かれた状況を受け入れ

まっすぐ道を歩き、時折止まっては村の方を見て再び道の方を見る動作をした


「まぁ別に…いいけどな

私は元からこんな村、見限るつもりだったし

抜ける手間が省けたって感じ……」


聖女はちらっと村の方を振り返りながら

一歩ずつ進んでいく


「あの女、絶対性格悪いぞ

後で泣きついてきても、もう私知らんからな

せいぜい後悔するがいい」


振り向くたびに村がどんどん遠くなる


「バーカバーカマヌケ、うんこ」


かくして聖女の居場所を求める旅が始まったーーー



追放される聖女(完)

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