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6.対決

 ギルはイオに(ひざまず)き手を取ってキスをした後、ずーーーっとイオの目を見つめていた。


「きっっっっっしょ・・・・」


 ミリアムは「おぇー」っと吐く真似をした。イオはどういう事なのか分からず、ただただ真っ青になって立ち尽くしており、ガゼルもその光景を呆然と眺めていた。その横ではダリルが興味なさそうに鼻をほじっていた。


「もう君のことしか考えられない!!」


 ギルはとても惚れっぽい性格だった。幼少の頃からキザでナルシストだったが、ここ数年は異性に目がなく、いつも一緒にいるミリアムとダリルはとばっちりを受けていた。(ちなみにミリアムは子供の頃から一緒にいるので異性として認識していないらしい。)3人組のリーダーで腕は立つが、面倒な人物だった。その上、気に入らない者は徹底的に排除する性格であり、両親がいない、目つきが悪い、気味が悪いという理由でガゼルを幼少の頃からいじめてきた。最も、毎回返り討ちにされていたのだが。


「おい、こいつが嫌がってるだろ。さっさと離れろ。」

「なっ、なにをする!?お前こそ、汚い手を離せ!!あぁ!!天使ちゃんの手がぁ・・・!!」


 ガゼルが無理矢理ギルを引き離し、解放されたイオはホッとした様子だった。その時ーーー


「姫様から離れろ!!!」


 後ろの茂みから怒声が聞こえた。ガゼル達が振り向くと、昨日イオを追っていた天族の金髪の大男と赤い髪の女が立っていた。


「ファガス、魔族共を片づけなさい!私は姫様を確保する!」

「御意。」


 ファガスと呼ばれた(いか)つい顔をした大男は、空中へ羽ばたくと杖を持った右手を天へ掲げた。


「光よ、集まれ・・・」


 ファガスの杖に光の粒がどんどん集まる。やがて眩しい大きな光となって法術が発動する瞬間ーーー鞭を振るったミリアムが杖を叩き落とした。地面に杖が転がる。


「あんた達、誰なの!!?」

「おのれ・・・」


 ファガスの厳つい顔がさらに厳つくなった。


「きゃぁぁぁぁ!顔が怖いっっ!ギル、助けてよ!!」

「えぇ!?俺様が!?」


 ミリアムがギルの後ろに隠れた。その瞬間、ファガスは素手でギルに襲いかかった。ギルは腰に差していた剣を引き抜こうとしたが間に合わない!そのまま腹を殴られると後ろの木まで吹き飛ばされ、気を失った。飛び退いていたミリアムは驚いた。


「ギルッ!!?」


 すかさずファガスはミリアムの背後に回り、首の後ろを叩くとミリアムを気絶させた。


「よくも2人を!!ボク、もう怒ったぞぉぉぉ!!!」


 ぼーっと見ていたダリルが顔を真っ赤にして怒鳴った。そしてファガスに向かって走っていくと、パンチを繰り出した!ファガスが避けるとダリルのパンチはそのまま地面に食い込み大きな地割れを起こした。振り向いたファガスは目を見張った。


「・・・なんと!!?小僧のくせに、見事な腕力だ!」

「はぁー・・・はぁー・・・」


 肩で息をしていたダリルは、怒りの形相で目を光らせ、ゆっくりとファガスを振り返った。




 一方、赤髪の女はイオを捕まえようとしていた。

 女が手を伸ばし、イオの腕を掴もうとした時だった。パンッ!という音と共にガゼルの短い詠唱、そして紫色の光を帯びた黒い稲妻がイオと女の間に走った。女は後ろに飛び退き、ガゼルを睨みつける。


「魔族の小僧如きが、邪魔をするな。」

「何があったのか知らねーけど、無理矢理ってのは良くないんじゃないか?」


 女は返事をせず、杖を天に掲げ詠唱を始めた。ガゼルがイオを振り返る。


「逃げろ!!!」


 イオは一瞬ためらったが、頷くとすぐに駆け出した!後ろから轟音が鳴り響いたが、イオは構わず走った!


 走って、走って、走り続けた!!何度も葉っぱや枝が顔に当たり、森の木の根っこにつまずいて派手に転んだ。それでも前を向いてイオは走った。息を切らしながら無我夢中で走り続け、足が重くて、それでも止まらずに走っていた時だった・・・ようやく遠くに街が見えた!


(逃げ切れる!!)


 そう思った時だった。

 空からファガスと赤髪の女が舞い降りて、イオの前に立ち塞がった。ファガスの手にはロープで縛り上げたガゼル、ギル、ミリアム、ダリルが居た。4人とも気を失っていた。


「姫様、追いかけっこは終わりです。また逃げたら、この者達はこの場で処刑します。」


 イオはビクッとすると、しばらくの間ガゼル達を見つめた。そして俯くと、口を真一文字(まいちもんじ)にして涙をこぼし、小さく震えていた。


「ふふっ、そうです。抵抗などせず、そのまま私の方へ来てください。」


 イオは素直に女の言う事に従った。


「フレイヤ殿、この者達はどうしますか?」

「エデンへ連行し、投獄しておけ。姫様の誘拐犯としてな。」


 イオはパッと顔を上げると、抗おうとした! だが遅かった。フレイヤと呼ばれた女が短い詠唱を終えると、イオの両手首、両足に光の輪が現れ拘束されてしまった。


「全ては我らの悲願のために・・・。」


 フレイヤはイオを抱き上げると空を飛んだ。ファガスもその後に続く。驚くべきことに、ファガスは4人を吊るしたまま悠々と空を飛び、フレイヤと共にエデンを目指した。

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