5.討伐隊
ちょっと早く投稿します。
睨み合うガゼルとギル。先に口火を切ったのはギルだった。
「討伐隊のチームリーダー、ギル様が話しかけてやってんのに、その態度はどういうことだ!?」
血の気の多い会話。魔族はみんなこうなのだろうか。イオはビクビクしながら、やりとりを見ていた。
「ミリアム、ダリル!みなしごの後ろを見てみろよ!」
イオはドキリとした。
「羽が生えてるぞ!こいつ天族じゃないか!!」
「うっそ、こんなに近くで見るの初めて!!」
ミリアムと呼ばれた赤髪を2つに結んだ少女が、じろじろイオを見てくる。もう1人のダリルと呼ばれた太った青年も、鼻息を荒くしてイオを見ていた。
(怖い・・・)
イオは今までエデンの中でしか育ったことがなく、魔族と関わりを持った事はなかった。最初こそガゼルが助けてくれたが、たまたま彼が親切だっただけで(口は悪いが)、他の魔族がどんなものなのかイオには未知数だった。
パンッ!!
「貫け、雷!!」
ギル達に黒い稲妻が襲いかかり、3人とも「ぎゃあああ!!」と感電してしまった。ガゼルは稲妻を出す時に、手を合わせてから詠唱し術を発動させる。普通は詠唱だけでいいのに、珍しいとイオは感じていた。それとも魔族はみんなこうなのだろうか。
「なにするんだよ!!討伐隊の俺様にこんなことしやがって!!」
「いきなり知らない奴にジロジロ見られて、こいつが怖がってただろ。」
「うるさい!みなしごの話なんか聞くかっ!!焼き尽くせ、フレア!!」
ギルの詠唱の直後、ガゼルの目の前に炎が燃え上がり襲いかかってきた!さっと避けるが、周りの木に飛び火してしまった。これでは森が焼けてしまう。
「だから言ったじゃないの!火はだめだって!消火するにはちょっと大袈裟だけど・・・まぁいっか。荒波の如く襲い掛かれ、タイダルウェーブ!!」
ミリアムが詠唱すると、燃え広がり始めていた木々に向かって滝の様な水が掛かり、火はあっという間に消えてしまった。
(討伐隊の方たち、すごい・・)
イオは法術以外の魔力による術の発動を次々と見て感動していた。天族の使う法術は、神の力を借りるため光を伴った術がほとんどだった。
(魔族って、火や水も操れるんだ。)
頬を染めてギル達を見つめていると、ギルと目が合った。まじまじとじっくり見てくる。
「お前・・・すごくかわいいな、天使ちゃん。」
「!?」
その場にいた全員が、凍りついた。すごくかわいいな、天使ちゃん???
「透き通る真珠の様な真っ白い肌、眩い朝日のような煌びやかなショートの金髪・・・憂いを帯びた黒い瞳!!そして、君の純白の翼を見る度に、俺の胸が高鳴る。・・・あぁ、そういうことか。」
ギルは片手を胸に当て、もう一方の手は天に伸ばしポーズを決めながら喋っていた。
イオ以外のその場にいる全員、嫌な予感がした。
「どうやら俺は、君にハートを射られてしまったようだ、天使ちゃん。」
ギルはバレリーナの如くクルクルと回転しながらイオの前まで行くと、跪いて手を取り、口付けをした。そして上目遣いでイオの顔を見つめていた。