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妖精達が齧ったであろうパンやリンゴが散乱し、棚の皿は床に落ち砕けていた、テーブルの上に小さなブランコが出来ているのには笑った
「野ねずみだって礼儀正しいぞ、まったく」
ルクトがブツブツ言いながら皿を片付けて、ホウキを見付けたバニラ姫が天井の蜘蛛の巣を纏め、カインは腐った食べ物を選別していた
「ふふ、じゃあ僕はちょっと自分の家に行ってくるね」
「ああ、親御さんもその姿を見たら感銘するだろ」
僕は浮き足立って丘を下ると、家々が見えてきた、枯葉を手で撫でながら側を流れる畔を見て、あそこでルクトと旅に出たのだと涙腺が緩くなる。村が近づいた時村人が僕に気付きなにやら慌てている、まあ無理もない突然居なくなった少年がぽっと現れたのだ
「トウリ!生きていたのか!」
「おじさん久しぶり!僕元気にしてたよ」
近所のおじさんは僕に近付くとマントを触ってきた
「これは西の国の紋章か?」
「なんで西の国の紋章なんだ」
「勇者って任命されてその証に頂いたんだ」
「勇者だと」
村人が一斉に息を飲み無言になってしまった、気味が悪く家路を急いぐと1人のおばさんが手を掴んできた
「今は家に入らない方がいい!」
僕はその言葉を無視し手を振り払い家へ走った、灯りの見える赤い屋根の家に僕は懐かしさで涙が溢れ、勢いよく扉を開けた
「お母さん!お父さん!ただいま!お母さん!」
「・・・トウリ?」
そこにはお母さんお父さんだけでなくダークエルフのメイドが何人も居た、その中央の暖炉に毛布に包まりお母さんのシチューを頬張っている肌が黒く白髪の少年が居た、それはまるで僕がかつてそうしていたような振る舞いだ
「あ、え、君は誰」
僕の首から黒い煙が上がっている事に僕は気付かないまま指を指した
「トウリ、この子は母親を亡くした可哀想な子なの、だからね」
お母さんが言い終わるまえに僕は少年にしがみついた
「僕の毛布!僕の服!僕のお気に入りの場所!僕のお母さんだよ!」
「気味わりぃなお前、ぼくぼくぼくーってふざけるな」
少年が体格に似合わない力で僕を掴みあげた
「お前が勇者か!魔物の国を作ろうとしているらしいな!お前みたいなお子ちゃまがなにが出来る」
「なにって、母親ってまさか冥の龍か!」
「ああ!我が母をいい小間使にしてくれたな!死にそうになっている所に魔物を作らせたそうじゃないか!しかもなんだ、以前嫌がる母に魔物を消させただと?侮辱するな!高貴なる冥の龍をなんだと思ってる!」




