九‐9
その言葉にじわりと染みる感覚を感じた、初めてお婆さんに会った時の事を思い出した
「僕ら1度黒龍を倒したんだ自信があるとは言わないが、力になるよ」
「じゃあ任せようかね」
「おばあちゃん!」
うさぎ耳の青年が慌てるが、お婆さんは静かに頷いた。カインはお婆さんを見つめていた
「その龍はどんな生体なんだい?」
ルクトの質問にあちこちから声が上がった、大きくは無いが紫色でしっぽに毒があり牙や爪が長く刀の様だと
「凶悪な顔してるんだよー!」
ミミも興奮している、お婆さんによると毒は油っぽくそれを飛ばしてくるらしい
「それはいつ来るか分かる?」
「分からないが前来た時から1週間は経つからそろそろじゃないかね」
「じゃあこのまま待とう、僕らも準備しよう」
「お前らは魔法が使えたな」
うさぎ耳の青年がじっとこちらを見つめていた、その片目は潤んでいるように見える
3日程たち、獣人達とよく遊んだりもした、成獣は少なく皆幼い子たちばかりだった
「情を抱いたらダメだよ、いつか裏切るかもしれない」
ルクトがそう囁いた、僕は頷いたが、納得した訳ではない。まだ分からないじゃないか
「見てーミミたち狩り出来たよー」
森からミミとミミと同じ歳の子達が出て来ると、その後を引き摺られるように大きなイノシシが括られていた
「ミミはおばあちゃんから人間から奪うんじゃなく自分で狩るって教わったんだよー」
と嬉しそうに報告してくれた、僕は何とも言えない幸福感を感じイノシシを解体した
「トウリは料理できるー?」
「トウリに料理させるな!」
ミミの質問に遠くにいたカインとルクトが走ってきた、そこにバニラ姫がイノシシの肉をすくい上げた
「私が調理致しますトウリさん」
「みんなしてそんな事言うー僕だって練習したら出来るよー」
「トウリさん、1度皆の腹を壊した事お忘れですか?」
「そんなー」
そんな事を言ってると、バニラ姫はあっという間に何品もの料理を作り上げた、街に残っていた調味料や大鍋が役に立っていた
「今日もいい出来です」
バニラ姫、いい嫁さんになりそう、マクダビン王と結婚するのかな
みんなで食事をし、冒険のはなしをしたりし、獣人達が脅威とは思えなかった。その時遠くから笛の音が聞こえた
「おいでなすったよ」
「例の龍?どの方向だ?あちこちから鳴き声が聞こえる」
「これは鳴き声じゃない、羽音だよ」




