七‐9
「これは国交のチャンスです父上、西の国がこうして視察を送ってくださったという事は友好の印、皇女である私が行けば株は上がるでしょう」
「ならばわしが行くわ!それか第一王子が良いだろう、お前は大人しくしておれ!」
「私ならば数多くの兄弟で居なくなっても問題ありません、それに武術も極めております、私が適任でしょう」
「わしの子供は一人も居なくなってはならん!特に末娘など城に居れ!」
国王の血管が切れたのか国王の顔は青白くなり倒れてしまった
「国王の許可が下りました、共に旅をしましょう!トウリ様!」
「だめだって言ってませんでした?」
「あれは許可の印です!」
今までこうしてきたのかなと何となく想像が出来た、他の王子も皇女も苦笑いしている
「とりあえず今は魔物の存在を確認しましょう」
おそらく第一王子なのか青年が立ち上がり兵の配置と僕らの寝床確保をしてくれた
僕らは何日か滞在し森を偵察することになった、魔物らしいものは確認できず、時には木を相手に剣術を鍛えたり、一緒に行動している兵から教わったりした
「雪が止むとそんなに酷くないですね、僕らが来たときは大変な時だったんですね」
「そうですね、海の氷も薄くなり砕氷船も出れるようになったと聞きました」
「それではまた国交が進むんですね」
「はい、国は以前のように豊かになるでしょう」
僕とバニラ姫がお茶を飲んでいるとルクトが戻ってきた、その腕には布にまかれた何かが抱かれている
「ルクトそれ何?何か見つけたの?」
ルクトが布をめくると、緑色の鼻と耳の尖った小さなミイラが現れた
「何それ?見たことない」
「僕も見たことない、バニラ姫これはこの国の生き物ですか?」
「いいえ、どちらかというとおとぎ話に出てくるゴブリンに似ています」
「これが魔物かもしれない、生まれたばかりでこの雪に耐えられず死んだんだろう、他にもこの様な生き物だったものが居た」
そこにカインが戻ってきた
「おい、これは魔物か?」
その腕にはまだ息のある耳の尖った白い肌の赤子が居た
「これはエルフというおとぎ話の生き物に見えます、伝説の生き物ですね、害は無いはずです」
「という事はおとぎ話だった生き物がこの世界に生まれたという事か」




