四話‐2
上空に湧き上がる槍と矢を避けつつ、時には銃声も聞こえる、いつ龍に当たるのかと冷や冷やしているが青年が龍に何かをささやき続けていると龍も落ち着いて弾丸を避けているようにもみえた。だがそれも長くは続かなかった、尻尾に矢が刺さってしまった、龍は鍵盤楽器の高音のような悲鳴を上げ軌道がふらついてしいまった。
「落ちる!」
僕が叫ぶと同時に青年は龍の首を掴んで曲げた。ふらついていた軌道がまっすぐになり、騎兵隊の届かないところまで飛ぶことができた、小高い山の頂上に降り立ち少しの休息をとることにした。
龍は尻尾に刺さった矢をなめている、そこにルクトが薬草をすり潰したものを塗り込んでいる。しみるのか龍の顔にしわができた、そこで一瞬で矢を引き抜いた、エメラルドグリーンの液体が噴出している。また甲高い悲鳴が聞こえたので僕は耳をふさいだ、こちらまで痛い気持ちになる。
「大丈夫なのか?」
ルクトに問いてみるが何とも言えない表情をしている。
「身心信仰の伴うものだろう」
「え?なんて?」
青年が焚火を焚いてからこちらに来た
「龍って神に近い存在だから信仰があれば多少の傷なら何とかなるのさ」
そういうと青年は足を折り座り、両手を掲げた。ルクトも胸の前で十字を作り祈りを捧げている、その祈り方は僕たちのいた村とは違うやり方だ、やはりルクトは僕たちの仲間では無いのかもしれない。
すると噴出していた液体が徐々に無くなり、傷口が塞いでゆく。龍は落ち着いた表情になり眠りについた。
「不思議な体だな」
僕がぽつりと言うの二人は何てことない顔でいなした。
先ほどの焚火で鍋をこしらえている、ルクトが何かを鍋に入れている、肉か何かだ。
「何を入れたんだ」
「妖精だよ、前の村で入手したんだ」
僕はあの感触を思い出し失神しそうになった。




