世界から拒絶された日
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私は村で生まれた。私は小さい頃から「すごい」と言われてきた。あまり自覚はないがみんなが言うならそうなのだろう。勉強も運動も全て器用にこなせた。しかし増長はしなかったので親だけではなく村の方々からも可愛だってもらえた、友達は.....まあいい奴とは思われている。少し得体が知らないと思われているようだが、深刻なほどに仲が悪い知り合いはいない。
今日の村では珍しいことに祭りが開かれている。*ギフトの神託にいく村人たちを送り出しているからだ。
【※ギフトとは神が与えたものとされている。実際に証拠があるわけではないが常識から外れた超常的な力なので神からの贈り物とされている。国によって小さな違いがあれど神託によってギフトが解放されその能力を使用できる。
神託は冬が終わり暖かくなると街で行われる。15歳以上(成人)の人々は任意で受けることができる】
私は今年は送り出される方だが、日常生活で生かせる能力だったらいいなとは思う。
ギフトは言うなれば極端な才能と言える。全員が天才というわけだな。しかし才能の中にも強弱は存在している。上はそれこそ英雄などと言われる神話級の力があれば下はタネを撒く速度が上昇するものまで.....いや結構便利そうだな。
しかし同じ能力にも細かな違いはある。それこそ全く同じギフトを持った者は世界にいないと言えるほどに、まあ村の学校でも教えられるほどのことだからよっぽど基本的なことなんだろう。
私はあまり詳しくは知らないが結局のところ運だから気負う必要もないんだろう。とは言っても少しは緊張する。街は初めていくから、なんというか....
「テオ!なんか興奮してるのか?体硬いぞ」
「君か*ラッグ。私は........そうだね、街に行くのに緊張しているんだ」
「そっか、もうそろそろ出発だって、おやっさんに挨拶は済ませたか?」
「もう済ませてあるよ。帰ってくるとはいえ二週間の往復は少し寂しいものだね」
「え〜俺はどんなギフトか楽しみすぎて寝るれるか心配だな〜!というか帰ってくること前提かよ」
「当然」
ギフトが有能だった場合王都の能力学院に推薦されるらしい。が、あまり関係ない話だろう。
【ラッグ=トール、同じ村の狩人の息子。小さい頃から鍛えられていたので15歳の割にガタイはよく器用。テオとは小さい時からよく遊ぶ中。数少ないテオの本当の理解者の1人。常識を知っているがそれよりも自分の考えを優先するタイプ】
タイミングよく馬車......とは言っても商売用だから村の女子の言う白馬の王子様?みたいな貴族が乗るような奴ではないが、動き始める。
今年は私を含めてこの村から五人ほどが乗った。これから街に近づくにつれ夜村の子供達も乗せていくと言う話だから20人ほどになりそうだな。それも考えているのか馬車の荷台に乗れる面積は大きく、食料は別の馬車に積まれている。
初めは動き出す馬車に興奮していたが代わり映えのない風景になったのでだんだんと飽きてくる。
今日は天気もいいしふんわりと暖かい風が眠気を誘う。
少しうとうとしながら日課......と言うよりかは趣味の考え事をしながら目を閉じる。
今回の街までに必要なことは途中で乗る予定の未定の彼らとの最低限でもいいから交友のための話題だろうか、これはギフトについての話題、街についての話題、があるので大丈夫だろう。
あとは食事、これも村での会話から食糧から必要な量を分けてもらえるようだ。
他には男子女子共に二週間プライベートがなくて大丈夫なのだろうか?まあこれは私が考えることではない、か。
考えることといえばこれくらいしか無いのが知識の乏しい村人の悲しいところなのだがこれくらいがちょうどいい気もするが....
「おい!テオ!」
「んぅ?」
「夕飯だとよ!美味しそうだぜ!」
「ああ、ありがとう」
私は眠っていたのだろう、4時間ほどか。荷台の外からはいい匂いがする。
手伝いができなかった、気分を害してないといいが...
外に出るとこの馬車隊の御者や護衛の方々が鍋を囲んでいた。
「お?起きたのか、ほれこっちこい」
私たちが出るのに気づいた、がたいの良い男性が近くを叩く。
「ありがとうございます」「ま〜す」
「うんうん、さ、無くならないうちにとっとけ」
「「いただきます」」
もらったお椀に料理を注ぐと、いい匂いが強くなる。野菜、鶏肉が適度なバランスで煮込まれている鍋、パンももらってとても満足できる料理だった、しかし..
「なんか豪華すぎじゃ無いですか?」
「ああ、そうだな。新しい奴が乗った初日の夕食は豪華なものにすると言うのがうちの隊長のルールなんだそうだ」
答えてくれたのは左前に座っていた商人だった。
「なるほど、教えてもらってありがとうございます。それで隊長とは?」
「商隊長、この街行き馬車の手配をしているのは街、大きく言うなら国。その国から依頼される商隊のうち1つを管理している方だよ」
「すごいですね」
「ああそうだな。ギフト《鑑定眼》が二世代連続で出たから中小商隊から一気に大商隊になったところの後継さ。小さい頃《鑑定眼》が出なかったことで期待外れと言われたが全て実力で覆してきた素晴らしい人だ」
「それ、私に言ってもいい奴なんですか?」
「むしろ言ってくれって言われている」
「そうですか」
「へ〜、ギフトが合ってなくてもそんなことできるすごい人がいるんだな!」
「なるほど、確かに私たちにはありがたい話ですね」
「そういえば、この商隊は朝はとても少ない、それで足りるか?」
「はい私はもう十分です」
「俺はおかわり!」
「ああ、まあ明日も早い。他の奴らはもう寝ている。ちなみに男女別だから安心して眠れ」
「配慮までしていただきありがとうございます...では、私はこれで。おやすみなさい」
「おうおやすみ〜」
「君もそろそろ寝るんだよ」
「は〜い」
それからの旅は順調に進んだ。たまに魔獣や野獣と対敵したが護衛の方が倒してくれた。
「ついたぞ〜」
「じゃ、裏で待ってるから、案内に従ってな」
おろしてもらったのは教会の前。私の他に20名あまりのものが降りる。
初めて見る街はいろんな人が歩いている。エルフ、ドワーフ、そして人間、獣人もいる。みんな同じ言語を話していて、村には人間しかいなかったので全てが初めてだ。
「大丈夫ですか?ついてきてくださいね」
「あ、はい」
みんな揃って聖堂の奥に入っていく。時間はちょうど良かったみたいで今行われているらしい。
「神よ我らに道をお示しください」
「あ.......」
信託は信託を下したものと下されたものしかわからない。詳しい効果は下されたものしかわからないが名前だけである程度の傾向がわかるらしい。
「それがあなたのギフトです。よく考えて使いなさい。では次の方」
「司教様一度休憩を...」
「いえお気持ちはありがたいですが年に一度の大仕事です。はやく知りたい若者を待たせるの申し訳ないですからね」
「では、えっと1人づつだから君から行けるかい?」
「は、はい!」
一緒に馬車に乗ってた子が祭壇の前まで歩いていく。儀式自体は20秒とかからない。サクサク(と言うと人生がかかってるのでなんだが)進んだ。私の前のラッグの番だ。
「緊張するなぁ、...行ってくる」
「行ってらっしゃい」
「........うん」
普段は少しうるさいほどのラッグが近くにいる私にしか聞こえないような声で言ってきた。意味はないのだろうが、問題ない、そう言う意味を込めて少しで伝わればいいと返事をした。
「神よ我らに道をお示しください」
「..........ん?」
「シスター、彼を案内してください。説明をお願いします」
「わかりました」
ラッグが教会の裏に連れて行かれる。驚くもの、悔しがるもの、私はなぜか「やっぱりか」と思っていた。
教会の裏へ連れていかれるのは将来が有望な能力を持っていた時、つまり王都の学校へ推薦されるということだ。
「次の君こちらへ」
「わかりました」
着くまではあんなに緊張してた体がスッと動く。なぜか緊張はない。私は本番に強いのだろうか?本番とやらが今回しか経験がないのでわからないが。
祭壇の前まで歩き、皆がそうしていたように膝をつき、目を瞑り、祈る。
形ばかりの祈りだ。私はラッグとは違う。彼が特別なのだ。彼と離れてしまうのは少し悲しいけど私ではどうしようもできない。
「神よ我らに道をお示しください」
その瞬間世界が歪んだ。視界が金と白で埋め尽くされ頭に何かが入ってくる。ここまでは去年の人たちから教えてもらった。だがここまで痛いものなのか......目が、目が痛い.....
ギフト『悪魔の瞳』
能力:縺翫≧縺セ縺後←縺
制限:縺ッ繧九°繧?a縺ョ縺九↑縺溘⊇縺励r縺ソ繧
「ぅぐ、あ、ぁぁ、」
頭が痛い。急いで能力を解除する。
「あ...」
少しづつ落ち着くに連れまずい事に気がつく。ここは教会、相手は神父、神と悪魔は常に対極にいるようなイメージがある。これは大丈夫なのか?
「聖騎士を呼びなさい!悪魔の生まれ変わりだ!!殺しなさい!浄化しなさい!」
「くっ」
これは危険だ。聖騎士を知っているわけではないが騎士とついているからにはせいぜい剣を握ってから五年程度の私が相手にできるような相手ではない。逃げないといけないのだが土地勘もないのに逃げ切れるか......難しいだろう。なら、賭けだがこれくらいしか思いつかない。
「待ってください!私の能力は危険なものじゃありません!確かに名前は危険そうですが普通の能力です!」
「黙りなさい!今までギフトに悪魔を冠したものはろくなことをしなかった!未来の危険はここで摘み取る!」
ダメだ、どんな能力かすら聞いてくれない....確率は低いが逃げるしかない、のか。
その考えになった途端私の体は動いていた。案内された道を遡って走っていく、追えという声と同じ馬車に乗っていた知り合いたちの驚いた顔を置き去りにしながら全速力で廊下をかける。
先に教会の方が大人数で壁を作ってるのが見える。
「すいません!通らせてもらいます!」
追いかけっこと同じ要領だ。相手にこういくだろうと予測させて...ずらす。1人目、2人目、3人目!
あとどれくらい....
「聖騎士様がきてくださったぞ!」
っ!予想より早いが、まずはここを抜けることを優先しよう....
「通りますので、少し退いてください」
聖騎士の声か、男性の声が聞こえてくると同時に周りの教会の方々が引いていく。その流れに合わせて私も逃げるがやはり限界がある、廊下を多分今までで1番の速度で走り抜け教会の表に来たときに後ろからの足音が一気に大きくなった。後ろを少し見ると馬よりもよっぽど早い速度で三名、追ってきている。
このままだと20秒ともたずに追いつかれる....
単純に逃げるだけじゃダメだ....目の前の人だかりに突っ込みながら、馬車で視線を切りながら次の人だかりへと移動する。さすがに聖騎士もこの中じゃ速度は出せないだろう。そう信じて。
近くにあった服屋から一般的な帽子とシャツを買ってすぐ着替える。街の流れに乗りながらひたすらに歩き続ける。これからどうすればいいのか、考えてもわからない。村に帰るのは危険だろう。かと言って私が金を稼げるかと言ってもそうじゃない。なけなしの金も偽装に使ってしまった。もう時刻は夕方だ。周りの人がどんどん少なくなっていく。
とりあえずは今日聖騎士に見つからないように......いや、明日になれば検問が強化されるかもしれないそうなれば私はほぼ絶対に死ぬ。
どうすればいい、考えろ。とりあえず人が少なくなったせいで目立つ表通りから裏路地に入る。外壁方向へ向かいながらも考えはまとまらないままだ。まずは検問の様子を見てから決めようと頭の整理が落ち着いてきたときだ...
「すいません、ここに金髪の男の子を見かけませんでしたか?」
「え?」
聞き覚えのある声だった、あの......聖騎士の声だ。
どうするか、この会話で分かったことは
1.相手が私のことを男の子とわかっていること。
2.外見の特徴が金髪しかないこと
この二つ。もしかしたらカマをかけているかもしれないので、出ている情報以外は絶対に口に出さないほうがいい。
私ができることは帽子をできるだけ外さない。私がその男の子と一致しないようにする。この二つだ。
「あ、僕ですか?ん〜そういえば見たような気も......ああ、少し前ですが走りながらあっちへ行ってましたよ〜」
声は裏声、できるだけ女性っぽく話す。普段が私なので僕と言ってみたが逆に怪しかったか?
「そうか、ありがとう.....ところで君はこんなところで何をしているんだい?親御さんは?」
「僕は夜の散歩ですね。人混みが苦手で、あまり昼は外に出れなくて...健康に悪いからって、こうして散歩してるんです」
「そっか、ここは危ないから表通りを歩きなさい。夜だしここは怖い大人がたくさんいるよ、最後にその帽子を外してもらっていいかな?」
まずい....考えろ、外さなくてもいい方法。はずしてもばれない方法。
「その...実は散髪に失敗してしまって......男性の方に見られるのが恥ずかしいですが、見せないといけませんか.....?」
「ああ、申し訳ない。リーサリさんお願いします。私たちは向こうを見ていますので」
「は〜い、了解です!ごめんね〜これも仕事でさ〜恥ずかしいかもしれないけど少しだけ我慢してね〜」
「は..い」
女性がいるとは思わなかった。後ろにいたうちの1人が兜を外しながら前に出てきて、他の2人は後ろを向いた。
危険だな.....しかしここで行動を起こしてもすぐに捕まる、ならわずかな可能性に賭けるしかない...のか。
顔半分を帽子でかくすようにして
「あ、あのこれでいいですか?」
「..................」
「あ、あの」
しくじったのだろうか、女性が私の顔をジーと見つめて動かない。
「リーサリ?どうしたんだ?終わったか?」
「.....か、か、かわゆい!!!かわ良すぎるよ!ちょっとつり目になっていてそれが潤んでるのとか!ドストライクすぎます〜〜」
これは大丈夫なのか?少なくとも今すぐは殺されないのかもしれない。帽子をかぶり直し少し離れる。
「あ、ありがとうございます」
「いいって!本当のことを言ったまでだよ!その髪型も似合うね!そもそも目の色が黒色って話だから目の色が青の君はそもそも違うね〜金髪は一緒だったけど!今日は残業かな〜」
後ろの2人もこちらに向き直り残念そうに肩を落とす。
「体型が似ているからもしかしたら君かなとは思ったんだけど違ったか....危険な人物らしいから早めに捕まえておきたいんだけどな、こりゃ今日は無理かな...あ、ごめん!君の前で言う話じゃなかったよね。それじゃあ夜道に気をつけてね!」
「バイバイ〜街で見かけたら声かけてよ!」
最後のひとは会釈だけして帰っていた。
彼らとは逆方向に歩きながら表通りと裏路地を繋ぐちょうど垂直になっている道に座り込む。今になって恐怖が巻き返してきた。一歩違えてたら私は死んだのだ。今ほど顔が女々しいことに感謝した瞬間はないだろう。母に似ていてよかった。
それにしても黒目.....馬車のみんなが言ってくれたのかな、嬉しいな。
が、立ち止まっている暇はない。今が最大のチャンスだ。外見が間違われている今のうちに街の外に出ないと。
外壁に向かって歩みを進める。もう頼れる人はいない。仲の良い人ほど危険に晒すわけにはいかないだろう。外に出てから....何をすれば良いのだろう。私は死にたくない、それだけなのだ。
外に出る前に一回、能力をつかってみようか?いざという時の自衛能力は必要だろう。なんとなくだが未来が見えるというのは感覚でわかる。まあ未来が見えたところで基本的なところで差をつけられたら反応できないのだがやらないよりかは良いだろう。
人目につかないところで能力を発動してみる。いつでも解除できるようにしながら慎重に発動していく。
痛い....が1秒後まではかろうじて見える。特に変化はないが、私が「こうしよう」と思うだけで未来は変化していく。なるほどこれを戦闘に組み込むのは相当難しそうだ。
とりあえず能力は解除して外壁へと向かう。能力がどんな感覚かはわかったのであとは外で試せば良い。
歩いていると検問が見えてきた。検問付近は夜になっても明るく人だかりができていた。私は神託帰りの商人達が並んでいる列に並ぶ。
「次、って1人ってのは珍しいな」
「あ、はい。少し急ぎの用があって」
「ふ〜ん、特に記入するものはないな。じゃあ荷物審査だけするぞ」
「はい大丈夫です」
「って持ち物少ないだろ!悪いことは言わないからちゃんと準備してからにしろ!特に夜はやめておけ、帰りがわかりにくくなる」
「それでも、大丈夫です」
「何が大丈夫だ!......っ!すまない、その権限は門番にはなかったな。せいぜい気をつけてくれ、行って良いぞ」
「ありがとうございます」
門の外に歩き出す。今日はできるだけ街から離れる。運がいいことに馬車の流れは少ないながらも続いている。彼らに合わせて移動すればかなり安全に移動できるはずだ。
食事に関してもある程度の山菜の知識ならある。ちょうどこの季節は山菜が食べられる季節なので少しは大丈夫だろう。街から離れたらどうするかを本格的に考えたほうがいいな。
当面の目的は衣食住の確保と言ってところか...行き道はあんなに幸せに満ちた体だったのに、たった1日でここまで変わるものなのだな。周りが馬車.....複数人で行きの私達のように楽しいそうに話している中、1人だけで流れに任せて歩いていると世界から拒絶されたような錯覚すら覚える。しかし私がギフトを解放されても庇ってくれた人たちがいた。それだけで少し幸せな気持ちになれるものだ。しかし疲労は溜まっている。一歩が重い。それでも少しでも離れなければ....
気持ちだけに突き動かされ夜通し歩き続ける。昼から一食も食べていないので体が至るところで悲鳴をあげている。周りの商隊もある程度集まって夜営を始めた。が止まらない。止まった瞬間死ぬんじゃないかと、ひたすらに歩き続ける。今日ばかりは一切眠気がなかった。あるのはただただ痛い疲労感と空腹感。それだけだ。もう月明かりとポツポツある商隊の焚き火しか明かりがない。ひたすらに一歩を出し続ける。翌朝になったら少し山菜を探そうか。
考える時間だけはたくさんあった。視界のほとんどは闇。練習も兼ねて1秒先を見ながら歩いてもみた、失敗したが。
これからどうすればいいか、ひたすら離れよう。この方向へと歩いていけば必然的にこの街からは離れられるだろう。問題はこの情報が他の街に行っていた時私は街へ入れないと言うことだな。この可能性は高い。普段から体と頭を隠せるコートのようなものが欲しいな。いろいろ考えれば考えるほど楽しそうな案は出てくる。その中には人との接触を経つと言うのもある。時間が経てば人は忘れるものだ。
問題はどの案も実現できそうにないこと。本当に他者への配慮というものが必要ないから夢をいくらでも描ける。掲げられる。だが掲げるだけだ。実現は相当難しい。最終目標はそれでもいいかもしれないが掲げたものは生活をするにあたって必要とも言えることばかりだ。まず生活に適して人目につかない土地なんてほとんどないだろう。
食事だってそうだ。この季節が終われば私は食べるものがなくなって近いうちに餓死するだろう。
とりあえずは明日を生き残ることを目標にしよう。そう決心した時私はもう歩いていないことに気がついた。いつの間にか地面に倒れていたのである。昼からいつ殺されるのかもわからないまま止まらずに歩き続け食事もとらず接敵。なんとか切り抜けたが心も体も疲弊している。その状態でいく先もわからない状態で歩き続ける。体が限界と、もう動けないと。弱音でもなんでもない。単純に体力の限界がきたのだ。けれど歩かなければ死ぬ。それもこんな目立つ場所で気絶なんて.............
「死にたくないのに......なんで、うご、かな」
2話目以降は少し短くなります。
ご了承下さい。