流れ星よりも素敵な宝物
「ねぇ、おかあさん!いま見えたねぇ!みた?」
「ん?なにを?」
「おほしさま!しゅーんって」
空がオレンジ色をした川沿いの土手で、わたしは繋いだ手を離して両手を右から左に大きく動かせば、お母さんは瞳を大袈裟に開いてわたしに目線を合わせて座ると、
「流れ星かぁ〜!お母さん見逃しちゃった〜!!」
「おかあさん見なかった?なんでぇ〜?おっきくてしゅーんてしてたよ」
お母さんはあんな特別な物を見逃してしまったのだと、なんて勿体無いと寂しくなれば、温かな手で両頬をつかまれた。
「う〜ん。見逃しちゃったけど、お母さんはもっと良い物見たわ」
「えぇ〜?もっといいものぉ??」
あんな素敵な物より良いものってなんだろう?お母さんは見てないから、流れ星の綺麗さを知らないのだと頬を膨らませた。
「あのね、お母さんは流れ星を見て『うわぁ〜』って目が輝いたあなたを見れたの」
「わたし?」
「うん。あなたよ。だってね、流れ星はまた見えるかもしれないけど、流れ星を見たあなたの事を見れる事、この先ないかもしれないじゃない?だからお母さんは流れ星よりもすっごいもの見ちゃったの。いいでしょ!」
「へんなのぉ〜流れ星の方がいいよ」
「お母さんにとってはすっごい素敵な物だから。だって宝物は人それぞれだからね」
そう言って笑ったお母さんはすっごく幸せそうで、よくわからないけどわたしもとってもとっても幸せな気持ちになったのを、大人になった今も、わたしは星空を見上げると思い出す。
「ねぇ、おかあさん!いま見えたねぇ!みた?」
「うん。見えたよ。でもお母さんはもっと素敵な物を見逃しちゃったなぁ〜」
きゅっと握られた小さなその柔らかな手を、今度はわたしが座って目線を合わせると両手で包み込んで微笑んだ。
小説家になろうの「冬童話 流れ星」の募集を見て書いた作品です。
誰かの心に届きますように。