中篇①
スマホをガラステーブルに置き、その横にある小さな箱の蓋を開け中の指輪を手に
握り締める。
半年前にプロポーズを決意し、瞳の誕生日に間に合う様に装飾デザイナーの友人に俺の描いたデザイン画をもとにオリジナルの指輪を依頼し先週出来上がった。
1ヶ月前から誕生日当日は、デートの約束もした。なのに………
彼女に初めて会ったのは、俺が高2の時。
親友の拓斗の家に行った時に、姉だと紹介されたのが瞳。
勉強を教わったり、3人で遊んだり、彼氏の為の手作りスイーツの毒味したり…
いつからだろう、拓斗と同じ様に弟扱いに苛立つようになったのは……
いつからだろう、会った事も無い彼氏に嫉妬する様になったのは……
いつからだろう、好きになったのは…独り占めしたいと思い始めたのは……
男らしく告白と思い悩んでた時、
「告白するのか?他人なら止めない。彼氏のいる姉ちゃんは止めとけ、今はな。姉ちゃんに振られて気まずくなって、俺達もギスギスして疎遠になるのは嫌だ。諦めるか、好きって想いを大事にしながら男磨け。もっと大人になったらチャンスもあるさ。姉ちゃんとあの男は長続きしない。俺も縁が切れるより、チャンスを待つことに決めてる。俺に出来るんだから咲耶も出来るだろ。」
と言う拓斗に同意し、今までと変わらない日々を過ごした。
まさか拓斗の好きな相手が俺の妹とは…完全に個人的理由か、思いつつ感謝はしてた。
瞳が就職し、俺と拓斗と仲間で会社を起ち上げ忙しく会えない日々が続いた。
まさかパーティで再会するとは思わなかった。彼氏と別れ、今はフリーと拓斗から聞いて
た。今がチャンスと世間話しつつ半強引に食事の約束を取り付け、ライン交換した。
それから週1、2ペースで誘い3ヶ月たって初めて彼女を抱いた。
俺のマンションの合鍵も渡し、食事を作って待ってくれたりと交際は順調良く続いた。
瞳の作詞、作曲が認められだし交際2年たった頃、結婚を意識し指輪を注文した。
気のせいか、その辺りから会うペースが減った感じがした。
今迄は、猫被り彼女優先にして来た。けど会える日が減るとストレスが溜まる。
だから会えた日は我儘言ったり、構い倒した。
会うたび誕生日のデートの約束も確認した。
そして今日が瞳の誕生日。
なのに免許更新って………誕生日忘れてる?
何も言わず引っ越しとか、何か不満あるのか色々話終らないと指輪渡せない気がする。
握り締めてた指輪を箱になおしながら思う。
何があっても離さない。絶対に逃がさない。