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精霊魔術師

 次の日から僕たちの職業に応じた訓練が始まりました。

しかし、魔術師なのに使える魔術がない僕はただ体を鍛えるしかありませんでした。

そして、空いた時間は書庫でこの世界の資料を勉強していました。

そんな毎日が一ヶ月ほど過ぎた頃にはかなりこの世界に詳しくなっていました。

この世界にはたくさんの魔物がいること。

魔物はさまざまな独自のスキルを使って襲い掛かってくること。

魔法には基本四属性の他に、聖魔法・闇魔法・時空魔法・召喚魔法があるということ。

これらの特殊な魔法を使う魔術師は『ユニークマジシャン』と呼ばれるらしい。

中でも、精霊を直接召喚して使役する『召喚魔術師』は過去数例しかないのだとか。

そして、僕たちは訓練として初めてダンジョンに潜ることになった。

訓練なので王国騎士団も一緒だ。

騎士団長のエドガーさんは元金ランク冒険者で、王国最強の剣士らしい。

ダンジョンの中は暗い洞窟で、襲い掛かってくる魔物をみんなで退治しながら進んでいた。

「よし、今日はこれくらいにしておくか」

エドガー団長がそう云ってみんなで引きかえそうした時だった。

「お、あんなとこに宝箱があるじゃんか」

杉谷くんがそう云いながら、部屋の隅に置かれた宝箱に走り出した。

「バカ!不用意に開けるな!」

云うが遅し。杉谷くんが宝箱を開く。

その瞬間、僕のいた地面が突然消えた。

「罠だ!みんな離れろ!」

幸い?なのか、罠の上に立っていたのは僕だけだったようだ。

(ほのかが無事で良かった・・・)

そう思った時だった。

クラスメイトの前じゃ絶対に呼ばなかった呼び声が聞こえてきた。

「お兄ちゃん!!」

なんと落ちていく僕の体にほのかが飛びついてきたのだ。

「小鳥遊さん!!」

「ほのか!!」

花山院くんと神宮寺さんの叫び声を最後に僕たちは落下していった。

あれからどれくらい経ったのだろうか?

朦朧とする中僕を呼ぶ声が聞こえた。

「・・・ちゃん!お兄ちゃん!」

目を覚ますとほのかがいた。

良かった・・・ほのかが無事で。

「良かったのです。痛いとこはありませんか?」

「うん、大丈夫みたい。ほのかは?」

「私も大丈夫なのです。なんとか風魔法で衝突は防げたのです」

そうか、あれだけの高さから落下して無事だったのはほのかのおかげだったのか。

「上に戻るのは・・・無理そうだね」

「はいなのです。他の出口を探すしかないのです」

「だね・・。っ!?ほのか危ない!」

こちらめがけて何かが飛んできた。

ほのかを下に伏せさせてギリギリかわすことができた。

「今のは電撃・・・?」

放たれた方を見ると、狼のような魔物が体にビリビリと電気を纏わせていた。

「ファイヤランス!」

ほのかが狼めがけて魔法を放つ。

すると狼が咆哮をあげた。

その咆哮によってほのかの魔法がかき消された。

「そんな・・・!」

「ほのか!どうやら僕たちの敵うレベルじゃないみたいだ。こいつは僕が惹きつけるから逃げるんだ!」

「お兄ちゃん、ダメ!!」

しかし、僕は囮にすらならなかったようだ。

「ガルルッ!」

狼が放った電撃はたったの一撃で僕を吹き飛ばしたのだ。

「ぐはっ!」

壁に叩きつけられた僕は口から血を吐いた。

「お兄ちゃん!!」

(くそっ・・・このままじゃ、ほのかが・・・守るって約束したのに)

するとそこへ聞いたことのない声が聞こえてきた。

『太一・・・力が欲しい?』

少女のような声だ。

「ああ、ほのかを守れる力が・・・ほしい」

『なら、私が力をあげようか?』

「力を・・・くれ!」

『でも、太一の魔力はまだ万全じゃないから肉体が後でどうなるかわからないよ?』

すると狼がほのかに近づくのが見えた。

「俺の体なんかどうだっていい!!つべこべ言わずに早くよこしやがれ!!」

ほのかを助けられるなら命だってくれてやるよ。

『わかった。じゃあ契約だね。私は水の最上位精霊ウンディーネ。契約に従い、力を授けます』

次の瞬間、身体に力が溢れてくるのを感じた。

「おい、犬っころ!」

狼に向かって叫んだ。

すると、再び電撃が飛んできた。

しかし、不思議なことにその攻撃はスローモーションに見えた。

「もうそんな攻撃は当たらねえよ」

そして、俺を見ながら涙を流すほのかの姿があった。

「俺の大切な妹を泣かせたのはお前か?ほのかを傷つけるやつは誰であろうと殺す!」

俺は右手を伸ばし、魔力を込めた。

圧縮した水が矢となり飛んでいく。

高圧の水はあっけなく狼を貫いた。

ほのかは・・・無事だった。

安心して膝をついた瞬間、身体中に激痛が走った。

「ぐあっ・・・・!」

さっき壁に叩きつけられた時以上の痛みが俺を襲う。

「お兄ちゃん!!しっかりして!」

ほのかが慌てて駆け寄る。

『太一!あそこに回復できる泉があるわ』

ウンディーネが指差す先に大きな水たまりがあった。

「ほのかっ・・・あの水を・・・」

泉を指差した瞬間、俺の意識は途絶えた。

そして、目を覚ますとさっきの痛みは綺麗になくなっていた。

「お兄ちゃん!よかった、目を覚した!」

「ほのか?俺、どのくらい気絶してた?」

「・・・俺?えと、5分位でしょうか」

「そうか、とにかくお前が無事でよかった」

すると、さっきの声が聞こえきた。

『おめでとう、太一!魔力障害を乗り越えた太一はみごと私の力を使えるようになりましたー』

目の前には羽の生えた水色の服を着た女の子が宙に浮いていた。

「なんだお前?」

『なんだとは失礼ね!さっき名乗ったじゃないの。私は水の精霊ウンディーネよ。ディーネって呼んでね』

「精霊・・・だと?」

「ディーネちゃん・・・可愛い」

『でしょでしょ?妹ちゃんはよく分かってるじゃないの!そう、精霊よ。太一、あなたは精霊魔術師なの』

精霊魔術師・・・本で読んだことがある。

魔術師が大気中の微精霊から力を借りるのと違い、精霊そのものを召喚して力を使う魔術師だ。

「精霊魔術師だって?」

『そうよ。今のはあなたは私と契約して私の力を使えるようになっているわ。その証拠にステータスプレートを見てみて?』

そう言われ、ステータスプレートを確認する。

名前 小鳥遊太一

職業 魔術師(精霊魔術師)

レベル25

体力5860

魔力21000

力9530

素早さ10350

スキル なし

と表示される。

さっきまでとは桁がいくつか変わっていた。

『あ、そうそう。さっき太一が飲んだ回復の水だけど、貴重だから持っていってね。水なら魔法でいくらでも収納できるから。ここの食料は魔物しかないから食べる時は絶対回復の水を飲むんだからね。じゃあ私は疲れたからちょっと寝るねー、おやすみー』

ディーネは一方的にそう告げて消えてしまった。

「お兄ちゃん!とにかく無事でよかったのですよー。それにしても精霊魔術師なんてすごいのです」

「まぁ、ほのかを助けるのに必死だったからな。お前が無事で何よりだ」

そう云いながらほのかの頭を撫でる。

「ふえぇ、お兄ちゃん?」

「とにかく出口を探さなきゃな。まずはディーネが云ってたように泉の水を・・・」

魔力を込めると水は異空間に収納された。

便利な力だな。

「んで。まずはメシだな。あんまし美味そうじゃないけど」

さっき仕留めた狼の皮を剥ぎ、精肉する。

「ほのか、魔法で焼いてくれるか?」

「はいなのです!火よ!」

いい感じに焼けたので、まずは俺が一口かじる。

すると、さっきほどじゃないが身体に激痛が走った。

「ぐあっ、なんだこれは!?あ、そうだ!回復の水!」

俺は慌てて回復の水をコップに出すと一気に飲み干した。

「はあ、はあ・・・治まったか・・・。ほのか、気をつけろ。先に水を飲んでから食べるんだ」

「わかったのですよ」

そして水を飲んだあとに食べたほのかは大丈夫そうだった。

そして食べ終わったあと、ほのかが意外なことを口にした。

「なんか魔力が上がったような気がするのです」

「なんだって?」

ほのかがステータスプレートを確認する。

「やっぱりなのですよ!食事したらステータスが上がったのです」

名前 小鳥遊ほのか

職業 魔術師(属性:火、水、風、土)

レベル30

体力650

魔力860

力500

素早さ470

スキル 迅雷

と表示される。

全てのステータスが300ほど上昇していた。

それは俺も同じだった。

「魔物を食べるとステータスが上がるのか。だからあの痛みか・・・。迅雷ってのはあの雷攻撃のことだな。スキルまで使えるようになるみたいだな」

そして、俺たちは出口を探すため先に進むことにした。


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