お兄ちゃんへの想い
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私の名前は『小鳥遊ほのか』。
15歳の高校生です。
私には学年は一緒ですけど一つ上のお兄ちゃん『小鳥遊太一』がいます。
私は幼い頃からお兄ちゃんを一人の男性として愛しています。
あれは小学生の時でした。
昼休み、みんなでケイドロをして遊んでいた時でした。
なんと学校内に野良犬が侵入してきたのです。
みんな急いで逃げましたが、一人逃げ遅れた私は野良犬に追い詰められていました。
ああ、ここで私は死ぬんだ・・・そう思った時でした。
腰を抜かして座り込んでいた私の前にお兄ちゃんが両手を広げて立っていました。
「僕のほのかに手を出すな!!」
その時のお兄ちゃんは白馬の王子様に見えました。
「もう大丈夫だから・・・。ほのかは絶対絶対守るから!僕はっ!ーーほのかのお兄ちゃんなんだーっ!!」
お兄ちゃんが叫びながら野良犬に向かって突進すると、その迫力にびっくりしたのか野良犬は逃げていきました。
それからというもの、家の中ではよくお兄ちゃんにくっつくようになっていました。
そしていつの間にか私はお兄ちゃんに恋に落ちていました。
2年前のことです。事故でパパとママが亡くなってしまいました。
私はしばらく失意のどん底にいました。
それから数日後のことです。
遠い親せきだというおじさんとおばさんが訪ねてきました。
今まで一度も話したことのない人です。
「大きくなったな。太一とほのかは覚えてないかもしれないが」
「そうね・・・あの時はまだ二人とも赤ちゃんだったものね」
「・・・・・・」
私は返事する気力もありませんでした。
「先日はろくに挨拶もできなくてすみませんでした」
そう云いながらお兄ちゃんが二人に頭を下げます。
「いや、しかたないさ。君たちはまだ幼いのにあんなことになったのだから」
「はい・・・。それで今日は何のご用でしょうか?」
お兄ちゃんが訊ねる。
「うん、あんなことがあってまだ間もないんだけど、君たちはこれからのことをどう考えているかい?」
「えっと・・・」
お兄ちゃんは黙り込みます。
「二人はまだ子どもだろう?君たちに残された選択肢は2つしかない」
「・・・・・・」
私は黙って聞き流します。
「はあ・・・」
「一つは児童養護施設に入ること。どこの施設に入るかや、二人一緒に入れるかは分からない」
「そうですね」
児童養護施設?
絶対イヤです。私の家はここです。
しかもお兄ちゃんと別になるかもなんて論外です。
「もう一つは私と、そこの加奈子さんが君たちを引き取り養子になること」
「え・・・?」
「私なら多少の蓄えはあるから太一を大学まで入れてやることができる」
そして加奈子さんも口を開きます。
「そうね。うちも家計は厳しいけどほのかちゃんだけならなんとか育てていけると思うわ」
余計なお世話です。
するとお兄ちゃんが訊ねます。
「えっと・・・それって、ほのかとは離れ離れになるってことですか?」
「っ!?」
私は思わず顔に出してしまいました。
「そう・・・なるね。すまない、私も加奈子さんも君たち二人ともを養えるほどの余裕はないんだよ」
「ごめんなさい・・・」
そして二人が申し訳なさそうに頭を下げます。
「いえっ!頭を上げてください。ほとんど関わりのなかった僕達を引取って養ってくれるだけでもありがたいことなんですから!」
お兄ちゃんが云いました。
お兄ちゃんと離れ離れ?
そんなことは絶対絶対ありえません。
この人たちはパパとママを亡くした私からお兄ちゃんまで奪うのですか?
「どうだろうか?」
おじさんがそう尋ねてきました。
拒絶するのは今しかないと思いました。
「おーー」
お願いしますと言おうとした瞬間。
「絶対にいやです!!」
私は全力で叫びました。
「ほのかちゃん!?」
「ほのか?」
二人とも突然の私の態度に驚いていました。
「ほのか、加奈子さんの養子になればきちんと大学まで進学して将来幸せになれるんだよ?」
幸せって何ですか?
私の幸せはお兄ちゃんと一緒にいることです。
「ええ・・・そうよ。贅沢はさせてあげられないけれど普通の生活は約束するわ」
「お兄ちゃんのいない幸せなんて絶対絶対ありえないです!お兄ちゃんと離れるくらいなら私は中卒の方がマシなのです!」
「ほのかちゃん・・・」
もはや私にはこの二人が私とお兄ちゃんを引き離す敵にしか見えませんでした。
「帰ってください!ここは私とお兄ちゃんの家なのです!」
「いや、しかし・・・」
「パパとママとお別れして・・・その上私からお兄ちゃんまで取り上げるというのですか!!」
私は泣きながら思い切りテーブルを叩いてしまいました。
するとお兄ちゃんが口を開きました。
「あの・・・、僕たち二人で生活するのはダメでしょうか」
「え!?」
「なんだって?」
「父さんたちが残してくれたお金でなんとか高校に通えるだけの費用はありそうなんです。それで、高校に入学したらバイトしてなんとか卒業まで生活できると思うんで
す」
お兄ちゃん・・・。
私もお兄ちゃんと一緒にいるためならバイト頑張ります!
「いや、でもなぁ・・・」
「そうね・・・」
二人は悩んでいました。
「お願いします!!僕もほのかと離れるのはイヤです!どうか」
するとお兄ちゃんは二人に向かって土下座をしました。
「お兄ちゃん・・・」
「太一!?」
「太一くん!?」
そして少しの間の後、おじさんが口を開きました。
「わかったよ。君たち二人は戸籍上は私の養子にしよう。二人は養えないからこのままここで暮らしなさい。少しだが生活費も仕送りしよう」
「私も少しだけど援助させてちょうだいね」
「「ありがとうございます!」」
私とお兄ちゃんは口を揃えてお礼を言いました。
こうして私と、大好きなお兄ちゃんの兄妹二人だけの生活が始まったのです。
学校での私は、お兄ちゃんを愛していることを隠すためなるべく離れて行動するようにしています。
このことを知っているのは親友の『神宮寺さくら』ちゃんだけです。
そしてある日のことでした。
突然クラスメイト全員異世界に召喚されてしまいました。
私はお兄ちゃんに泣きつきたいのを必死に我慢していました。
そしてステータスプレートというものを渡されました。
そこに血を垂らすと、ステータスが浮かび上がりました。
名前 小鳥遊ほのか
職業 魔術師(属性:火、水、風、土)
レベル1
体力80
魔力150
力70
素早さ80
スキル なし
と表示されていました。
これを見て周りは何やら騒いでいましたが私はそれどころではありませんでした。
(はやくお兄ちゃんに触れたい)
ただそれだけを考えていました。
何やら花山院くんがみんなに言っていたような気がしましたが私は聞いていませんでした。
その後部屋に戻った私はさくらちゃんに聞き捨てならないことを聞いてしまいました。
「ほのか、さっき杉山がみんなに話してたんだけどさ・・・太一くんのステータスが」
私はそれを聞いてお兄ちゃんの部屋に走りました。
「ちょ、ほのか!?」
お兄ちゃんのステータスが平均よりもかなり低い・・・。
それは死ぬ可能性が高いということです。そして、お兄ちゃんの部屋に入ると思わず抱きつきました。
「お兄ちゃん!」
「ほのか!?どうしたんだ?」
お兄ちゃんが訊ねます。
「どうもこうもないのです!こんなよくわからないとこに連れてこられちゃって・・・でもお兄ちゃんが一緒でよかったのです」
「そうだね・・・。でもほのかは僕が必ず守るから。お兄ちゃんだからね」
やっぱりお兄ちゃんは素敵です。
「お兄ちゃん・・・」
するとドアの外から声が聞こえてきました。
「ほのかー?」
さくらちゃんです。
「さくらちゃんが呼んでるから行きますね」
「うん、おやすみ」
「おやすみなさい、お兄ちゃん」
そして私は一番伝えたかったことを最後に云いました。
「お兄ちゃんも絶対絶対ほのかが守るのです」
こうして私たちはクラスメイト全員異世界に転移してしまいましたが、私はお兄ちゃんがいれば大丈夫なのです。
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