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夏影の彼女  作者: ダイヤ
2/2

見知らぬ人



 良い時間になって来たので早めの昼食を取る事にした。凄く田舎な感じの、飲食店など無さそうな、そんな民宿への道中見付けた古ぼけた感じの定食屋。かなり昔からやっているのが伝わる、年季の入った定食屋を見付けた。


「ここにしよう」


と思い定食屋の傍の駐車場に車を停めた。暖簾のれんには「ラーメン」と書かれてある。その赤いかすれた暖簾をくぐりその定食屋の中へ入ってみた。


「いらっしゃい」


とおばあさんの声が聞こえた。簡素な、時間がそこだけ止まっているような雰囲気の店内、何だか昔来た事があるような思いを抱かせる懐かしい匂いに少しだけ酔った感覚になってしまった。

メニューを眺めて、暫く考えたが暖簾に「ラーメン」と書かれていたので、


「すみません、ラーメン一つお願いします」


とそのおばあさんに伝えると、


「はいはい」


と答えおばあさんは厨房へと戻り黙々と調理を始めていた。

僕はスマホでこの近辺の事を調べていた、が特に何も無い場所であった為地元の人に聞いた方が何か良い場所を知っているのでは、と思いそのおばあさんに聞いてみる事にした。


「はい、おまち」


美味しそうなラーメンがテーブルの上に置かれた。早く食べたい所だが、先に聞いてみる事にした。


「すみません、この辺で何か良い場所とかありますか?綺麗な景色が見れる場所、とかでも良いんですけど..」


そう伝えると


「この辺の人ではないんけ?そうか、そうなぁ、どの辺に行く気してるんけ」


「民宿の刹那せつなという場所に今晩泊まる予定です。知っていますでしょうか」


「あぁ刹那さんね、知っとるよ、あの辺なぁ..あの辺は、大きい神社があるけんど、それぐらいしか私知らないんなぁ..」


そうおばあさんは答えてくれて、少しだけ僕は興味が湧いて来た。


「そうですか、なら、そこへ行ってみますね」


「悪いねぇ..私もあまり知らなくて、何も教えられなくて..」


「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」


そう伝え、僕はラーメンを平らげてお金を払いその定食屋を後にした。


「神社..そんな場所載ってたっけなぁ」


そう思い、再びスマホで民宿周辺を調べてみたが、詳しい情報が出て来ない。僕は別に観光目的でここへ来た訳ではない。これぐらいの、良く分からないぐらいの情報で良い、その感じを楽しみたいとあてもなくここまで来たのだから。蝉の声が聞こえる。暑い日が続くと蝉の声は聞こえるのだなぁ、そんな事を思いながら再び車で民宿刹那へ向かう事にした。


 景色自体は、多分自分の地元とあまり変わらないのだろう、と思う。でもこの地域の景色は、もっと自然が溢れていてあまり人の気配を感じさせない、開かれた感じの場所、のように僕は感じていた。近くにコンビニも無ければスーパーのような日用品を買えるような所があるようにも思えない。住むとなれば、特にお年寄りの人達は大変だろう、そう思わせる程に自然に溢れた場所だった。

暫く真っ直ぐの道を走らせると、道路の右側にその民宿「刹那」はあった。案外分かり易い所に、見付け易い所にあって少し驚いた。民宿の周りには何も無かった。民宿が立っているだけ。後は車が数台停まっていた。僕は民宿の駐車場に車を停めて外に出た後周辺の景色を眺めてみた。すると視線の真っ直ぐの方向に長い長い階段が見えてその上に大きい鳥居があるのを発見した。あれがさっきおばあさんが言っていた大きい神社、なのかもしれない。歩いて行くには少し距離がある、そんな少し遠く離れた鳥居を暫く眺めた。早めに着いてしまったが、もうチェックイン出来るか聞いてみる事にした。


 民宿「刹那」は結構中は広く木造の造りで入ってすぐのカウンターの向かい側には休憩スペースがありゆったりくつろげるソファが五、六台設置されていて中の空間から外の開かれた景色が眺められるようになっていた。と言っても、田んぼ、青々と生い茂る草木、深い山並みしか無いのだが..いや、それが最高の眺めだからこそ良いのだ、と僕は改めて思いを元に戻した。


あの神社はこの民宿の中からは覗けなかった。やはり外に出ないと見る事が出来ないらしい。と、周りを見渡しているうちに本来の目的を忘れている事に気付いた。まずチェックイン出来るのかカウンターの人に聞かなければと。




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