メルカリダスの奇跡脱出
周囲を探索していたアレン達──
ここには出口は無い。勿論入口も無いようだった。
こうなると脱出の手段はたった一つである。
翠輝鉱石を使って転移魔法陣を描く──その一つだ。
そしてそれを可能にする事が出来るのが……
またしてもアリスとアリサだった。
彼女たちは元々古代アーティファクトである。今は人間(召喚獣だけどね?)になったけれどもその知識は古代人のものである。
転移魔法陣は失われた技術。古代人のみぞ知る技術なのだ。
「アリスとアリサ?本当に転移魔法陣出来るの?」
『『はい。可能です。ご主人様。しかしこちらから用意できるのは現存する転移魔法陣への入口のみ。出口は完全に運任せになってしまいます。海底や火山や遺跡など古代人がかつて遺した魔法陣に飛ばされることになります。それでもよろしいですか?』』
それにしても2人同時に喋るのはすげぇな。しかも行動は別々に出来るんだから便利すぎる。
「うん。それでも行こう。ここに居ても餓死するだけだ。誰も助けには来ないだろうし。」
『『わかりました。ご主人様。転移魔法陣完成まで暫しお待ちください。』』
「アリサアリスよろしくね!」
『アレン様?ちょっと進言しても宜しいですか?』
チビが進言したいと言ってきた。
「なんだい?何か懸念材料でもあるかい?」
『はい。念の為ですが全員分の属性全耐性の魔法をかけてから転移するのはいかがでしょうか?誰か使える者がいればいいのですが……』
「あ。そんなこと?それなら俺が使えるよ?ちょっと魔力が切れちゃうかもしれないけど11人なら何とかなると思う。」
アレンはバフ、デバフ、斥候と幅広い支援を《郢曲》でしてきた。その中で全属性耐性というバフを使うことも多かった。必要魔力は高く当時は1度使用するとたった4人の為に半分くらいの魔力が一気に持っていかれた記憶がある。レベルが上がり計算上は11名でも何とか魔力枯渇無く使えるはずなのである。
『全属性耐性ですか……?それ凄すぎません?』
「ん?そんなことないさ?チビの絶対防御の方が有用だろう?」
『ま、まぁ単体相手ならばワタシの絶対防御の方が有利かもしれません。しかし……全属性耐性ですよ?火山でも雪山でも海の中でも耐性を発揮できるんですよ?オールラウンダーな魔法じゃないですか?それを前のパーティと来たら……ぶつぶつ』
チビが《郢曲》の文句を言っている。あまり声に出して言わないのだがかなり印象が悪いようだ。
『『はい!出来ました!』』
「はや!そんなにすぐ出来るものなの?」
『『今回は掘ったり埋め込んだりしてませんから簡単です。それでは皆さんこちらへ!』』
俺たちは促されるように魔法陣の中へ向かう。
「じゃこれは俺がかけるからね。《全属性耐性》」
全員の体を一つ一つの泡が包む。
「じゃアリス?アリサ?頼むよ。」
『『はい!ご主人様!ではいきます!イルマ・カイジュール・マーサ・ルメッサ!!!』』
「『『『『『『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーー』』』』』』」
《メルカリダスの奇跡》の最深部で古代転移の魔法陣を使った俺たち。転移罠とは異なり視界がグルグルと回り暗転する。
ピチャ……ピチャ……
「いてててて……ここはどこだ?火山でも海底でも遺跡でも無さそうだな?あ!皆は?無事?」
『は、はい何とか…』など次々に声が上がる。何とか皆無事な様子だった。《メルカリダスの奇跡》の最深部に出口が無かった時は本当にどうしようかと思ったが何とか抜け出すことが出来たようだ。だがまだ安心は出来ないだろう。足元は濡れ上からはぴちゃぴちゃと水滴が落ちてくる。ここはどこだ?
周囲は薄暗くほぼ何も見えなかった。「ライトボール」俺は灯りをつけた。
「えっ!?ここは……水路?」
『冷たーい!……レン様お尻濡れちゃったー!』
俺たちはどこかの水路の中に落とされたようだった。
「ここに転移魔法陣の出口があったって事だよね?」
『『そうでございます。ご主人様。こちらをご覧下さい。』』
アリスとアリサに促されて上を見る。
「あ。ほんとだ!逆さまに転移魔法陣が書いてある!」
転移魔法陣は発動直後の影響かほんのり青白く光っていた。
「ここはどこかの地下水路で間違いなさそうだね?」
『そうですね?とりあえず出口を探しましょうか。』
「そうだね?とりあえずこのままここに居ても仕方ないしね。じゃ行こっか?」
『『『『『『はい!』』』』』』
俺たちは地下水路を歩いた。水は排水では無いのか別に嫌な匂いを発していなかった。しかし暗い場所特有の動物や魔物が時々襲ってきた。鼠や鼬の類だ。蝙蝠の魔物も襲ってきたが小回りの聞くジークが瞬殺していた。
『あ!あれ出口だよね?』
ヒカリが声をあげた。こういう時強運のヒカリがとても頼りになる。
「うん。そのようだね。ガウ?見てこれる?」
『ガウ!見てくるガウ!』
翼をパタパタさせ上に上昇する。小さな光が見えるのはここから5m程上部にあるのだ。飛べるガウが適任だ。
「どう?外が見えたかい?」
ガウが降りてきた。
『外が見れたガウ!外には畑が広がっていたガウ!安全そうガウ!』
良かった。何とか外に出られそうだ。
「じゃあガウ順番に皆を上に上げて貰えるかい?」
『分かったガウ!任せて欲しいガウ!』
アレン達は次々と地下水路から外へ向かって出ていく。殿を務めたテイラーは1人でピョンっと飛んでいた。流石だ。
俺たちが見た外の景色は今まで見たことも無いほど長閑な田園風景だった。
拙い文章ですが読んで頂きありがとうございます。
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