私にカメラは向けないでっ
おはようございます…おや、私の腕の中にはくせっ毛の可愛らしい猫耳獣人が…
「何見てるんですか?」
「う?あ、おはよう…あれ」
「おはようございます…」
あれとはなんでしょうか
…あぁ、窓に張り付いている手紙ですか
「おそらく夜のうちに送った手紙ですね」
「てがみ?」
「はい、薬屋の方に今日はナコさんとイチャイチャするので休みますって」
イチャイチャの下りは書いてませんけど、そりゃそうか
「いちゃ…」
わぁ、顔真っ赤
「もう起きる!」
「まぁ酷いです、昨日は私の口付けを奪っておいて…悲しいです」
どっちかって言うと奪ったの私ですし無理やり飲ませるためだったのでムードも何もあったもんじゃないですけど
「くっちっ…」
顔から湯気が出ているようです、そのまま私に抱きついてきました
かーあいー
完全に手のひらでコロコロされてますね
くせっ毛がこそばゆいです
◇
満足です、ナコさん成分を存分に補充しました、それはもう抱きしめて言葉責めして悶えるナコさんをひたすら…
まぁ内容はいいんです、結果としてナコさんは私のベッドでゆでダコになってます
なんか途中からお嫁に行けない…なんて呟くので可愛さが爆発してました
私の部屋の手紙を受け取り、ナコさんの部屋…あれ、ナコさんの部屋からも日差しが入ってるのっておかしくないですか?方角逆ですよ?
これは…触れちゃいけない気がします
空間魔法の歪み方がおかしいです
まぁいいです、ナコさんの方の手紙も受け取りました
「よしよし…」
ナコさんの方の仕事事情は詳しくないですが本部がいい感じに休めるようにしてくれるみたいです
私も薬屋のほうは休んでおっけーな返事を貰ってます
とりあえずお昼が近いですが朝食作りますかね
◇
「うぅ…お嫁に行けない」
あら、まだ言ってます、後ろから抱きしめてもいいですか?
朝食後もこんな感じです
「それ以上いうと我慢できなくなってまた襲いますよ?」
「おっ…」
ナコさんの魔法断裂が切れるまで外に出れませんし
副作用でナコさんは力も無いのでぶっちゃけ一般人以下です
襲いたい放題ですね!
「なにかやることないの?」
ありますよ、フード洗ったり薬調合して備えたり
しかしこれらは私だけでやることですね
「昨日の勇者のことを思い出すことくらいですかね?」
一撃、それもおまけみたいな攻撃だけで劣勢になる
とてもずるいです、理不尽です
どう対策すればいいんですか
あとかかった水の機能です
苦しむのはすぐにおさまりました、追跡も解けているはずです、背中に跡などは見当たりませんでしたが…
「うー…あ」
う?
ナコさん、なにかをおもいついたようです
そして自室からなにかを持ってきました
「あ、それ知ってます、カメラですよね」
…え?それしってますよ?カメラっていう超超超高級品じゃないですか??
「さすがナズ、はい、わらってー」
ひょえぇ、そ、それって回数制限があるって聞きましたよ!?私なんか撮っていいんですか!?
「動かないで、もう!」
あ、はい
「わらってー」
ふ、へへ…
パシャリと音がしました
「…なんかニヘラッてして胡散臭い」
「む、ナコさんも撮ってあげます、きっと私みたいになりますよ」
「じゃあはい」
いや、はいじゃないですよ!?
こ、ここ、これ、高級品って分かってます!?
「お、おお、おち、落ち着いて」
「ナズ?顔が変だよ」
だだ、大丈夫ですよ…え、ぇ
「…あっナコさんのいい笑顔」
本能だけで動きました
カシャリ
「…うおぇ?」
「私の手さえ震えてなければ撮れたはずです」
多分震えてました
「んー、じゃあ一緒に撮ろ!」
カメラを乱雑に私からとり窓際に置きます
おおわ、高級品…
「はい!ピースピース!」
距離が離れてるんですけど撮れ…
カシャっ
撮れたようです
さ、さすが高級品、あちらの世界の文化のものなだけはありますね
◇
お昼後です
ナコさんはだんだんと魔力が復活してきているようです
よかった
水の後遺症などもなさそうです
出来ればしっぽのことを忘れないようにしていたいですね
「そういえば、私たちって連絡が不便じゃない?」
「たしかに…お守りかリストバンドに細工していいか打診してみますかね」
「細工?」
遠隔の連絡は以前から欲しかったので素人ではありますが魔法陣の研究をしてみました
用意した八種類の魔法陣を上手く組み込めれば遠隔の連絡はできるはずです
そしてうちの組織の技術班は優秀なので何とかできるでしょう
ちなみに常識的に考えると魔法陣をいくつも用意するのは無駄です
発想のきっかけの助けにでもなればいいと思います
「手紙の形式で打診しますか、今は外に出たくありませんし」
「さんせー」
…そういえばなにかを忘れないようにしようと、していたはずなんですけど
なんでしたっけ?
◇
「ナズ、闘技場見に行かない?」
日も落ちかけというところ
ナコさんがそう提案してきました
ナコさんの認識阻害は普段通りまで力を取り戻したようです
私は先程から何を阻害されてるのか必死に思い出そうとしてました、無理でした
「まぁいいですよ」
…そういえば闘技場ってどこにあるんですかね
フンフーンと機嫌のいいナコさんについて行きます
家を出て、街の酒場に入りました、おや、酒場に不似合いな扉があります、分厚い…ついでに重いですね
開けると微かに歓声が、薄暗い階段をおりるとそこには闘技場が広がっていました
「地下にあったんですね」
ナコさんに話しかけますが周りの歓声にかき消されてます
ナコさんの口もパクパクしてますが一切聞こえてきません
ずっとワァァ!
と声がしてるだけです
…凄い賑わいですね
見たところ賭博も行われているようです
薬屋で聞いた勝ったの負けたのだのはこれのだったかもしれませんね
…ふぅ、頭がキンキンしています
相当うるさいですね
今は自室へ戻ってきました
戻ってからもナコさんから多少教えてもらいました
提携している酒場は録画なども含めて一日中モニターという映像機械で流している
観客席では色々とマナーがあったり
参加者であるナコさんは他にもサービスがあったり
さらに地下には小さい闘技場がいくつもあったり…
楽しそうに話してくれました
…録画、モニターってなんですか?詳しく聞きたい…ところですがまぁ今日はいいでしょう
ちなみにナコさんの最近の勝率は六割程だそうです
五割越えじゃないですか、いいですね
◇
翌日からは日常です、私は薬屋へ、ナコさんは参加者のみが行けるという場所へ
特筆することも無く戻ってきました、夜ご飯は鶏肉です
食べているとナコさんが組織からのメッセージに気が付きました
私もついでにボスの方を確認しました、近日会議があるので参加しろとの事です、危ない、すっぽかすところでした
「えっと、リストバンドを魔力登録したから専用のものになるらしいよ、明日の朝には届くから中の紙は目を通しておけ、だって」
「きっとあれですね、通信機能の打診が通ったんですね」
さて、翌朝、小さな箱が届いておりました
紙にはリストバンドの機能について
予測通り、頭に言葉が浮かぶようにメッセージを受け取れるとの事
更には魔力を使えば目前に文字として表示する機能も
どんな魔法陣なのかすこし興味があります…
また、任務中や潜伏中などのマークも浮かび上がらせる仕様だったりと高性能化しています
「…えっ」
最後の方にこんな文が
なお、リストバンドの色は前回の任務の時の色をそのままにしている、呼び方は変わらないが気に入っている色があるのならその色の持ち主に直接交渉をしかけていいこととする
今は全員が雷の街だし決闘申し込んでもいいよ
星マーク付きです
なんか腹立ちますね
その後には全員の名前と色、現在使われてない色
あとは洗い方や注意事項でした
「…けっとうかぁ」
ナコさんも呟きます
シロはクロと
アオはアカともミズイロなどとも栄える色、と以前から隊の中では話題でした、色の組み合わせがパートナーといいと仕事が上手くいくなんて話も上がるほどには
「私もクロ色狙った方がいい?」
おや、ナコさん、嬉しいことを言ってくれますね
「以前も言った気がしますが誰が何色だろうと私は構いませんよ……ナコさんはナコさんですし」
「あっ照れてる」
…慣れないことは言うもんじゃないですね
「あっ、カメラはダメです、恥ずかしいので」
数枚撮られました
くっ…
テロン、と頭の中に音が響きました
少し心地のいい音ですね
…あっ、メッセージの受け取り音なんですね
「…えっと?キイロさんから、私と勝負しろ…と」
「キイロ?…あぁ、あの子か」
たしかパートナーがクロの方ですね
「えっと…イヤです、と」
テロンテロンテロンっ
あ、うっさ…
「なんで戦うんですか…欲しいならあげますよ…」
「え、あげちゃうの?」
え、なんですかナコさんその反応
私がシロちんからキイロちんになるだけですよ?
キイロの時は…きょーちんでしたっけ
懐かしい
先ほどのテロンっという音は意識で消すこともできるらしいです
快適ですね
「シロちんはシロちんだから…阻止して欲しいなぁ」
アオさんは部隊内での肉弾戦でいちばん強いからそう言えるんですよ…
テロロンっ
ムラサキ
『ワタシだ、緊急の際もこのように通常と違う音が頭に響くはずだ、魔力を多少消費するが致し方ない、記載し忘れていたが、決闘は特殊な場所を試験的に使えるらしい、訓練としても使っていいので手軽に決闘してみてくれ』
「うっ」
「ナコさん?」
「決闘の申し込みが三通きた…」
…ナコさん人気ですねぇ
「時間指定…とか色々できるみたい」
そんなことをつぶやいていたナコさんが急にシュンっと消えました
…転移?
ナコさんは私が薬屋に行く時間ギリギリに戻ってきました
転移で
「なかなか遅かったですね…ナコさん?」
「…ちゃった」
「はい?」
「負けちゃった…」
えっと…そうですか
「まぁ…そんな時もありますよ?」
「ナズはいいの?」
なにがですか?
「アオじゃなくなっちゃう…」
前々回の任務の時ナコさんアオじゃないでしょ?
「何色になっちゃうんですか?」
まぁオレンジは呼びにくいから嫌ですよ?
「オレンジ…」
「ぉーぅ…」
そういうこともあるんですね
書きたいところまでの繋ぎを捻り出して書いてます
めげそう