こちら地の街にて私より
勇者さんとパーティーを共にして何週間か経過しました
何か言うことといえば…
そうですね、私の所属している部隊が別の街に移動しました
継続的な仕事中の私とかはそのままに、別の街での仕事が入ったようです
部隊長は勇者の動きに合わせるため…
つまりは私のためにこの街に残っているようです
とっても助かります…
勇者パーティーがおふたりの理由も地味に判明しました…と言っても大層なものではありませんが
身体能力上昇によって普段の感覚とは変わります
また、その魔法も常にという訳では無いので、その感覚の違いに上手く対応できる方がいない、ということらしいです
一応一人だけ残っているようですが、あのドラゴンの時、罠に引っかかり重症中との事です
どんな方ですかね?
私は感覚が変わっても戦闘中はじっとしてるので特に…
そういうこともあって長くパーティーにいるらしいです
…気に入られました
この段階になると私にはいくつかの選択肢が与えられます
まず前提として、組織に対しての影響はどうか
特に関わってきていないなら、ということにはなりますが
組織をぬけて勇者パーティーとして過ごしていく、その際には抜ける魔法儀式も行われるらしいです
まぁ抜けることは無いと思いますが
そして、組織に関わってくるならば、私たちの目的の妨害などを行うのであれば
陥れて、消すなりなんなりするのか
または、組織を裏切るか
…酷い選択肢ですね、それなら私は陥れますよ
えぇ、もちろん
◇
わたしが例のごとくパーティーでの飲みに睡眠薬を混ぜてお二人をうつらうつらさせ始めていた頃です
「にゃー?お姉さん何したにゃー?」
その行為が見られてしまいました
別に見られても問題はありません、ただおふたりと酒絡みするのが鬱陶しいからだったので
ただまぁ悪い気分はしてましたので焦ってしまいました
「あっ、いやっべつに!?…にゃぁ?」
なんですか「にゃー」って
「…あっ、しまった……お姉さんこっちにお酒くださーい」
誤魔化そうとしましたがその語尾にツッコミを入れてしまいました
するとどうでしょうか、その方はレドさんを押しのけて私の前に座るではありませんか
「どーぞー」
お姉さんがお酒を運んでくれました
「さっきのはなかったことに」
え、にゃー、は隠してたんですか?
露骨じゃありませんでした?
「いやです、いいじゃないですか可愛いですよ」
媚びてる感じがして
「うー…お姉さんなんて言うの?」
「おや、人に名前を」
「私はナコですぅ」
「…ナズと言います」
少し喧嘩腰になってしまいましたが名乗ってくださいました
…なんか弄りたいですね
「ナコさんは何をしてるんですか?」
この質問には複数の意図があります
冒険者なら職業を答える質問になりますが…アバウトに聞くことで先程のようにガバって、というのを狙ってます
「むぅ、答えたら秘密にしてくれます?」
「…ふむ、というかとりあえずフードとりません?」
食事の席ですよ?
「そうやって答えないつもり?」
ムスゥとしながらフードを取りました
おや、バレてますね
ですがアレです、多分ですけど認識阻害の魔法がかかってます
組織のフード付きローブを使ってる私の感覚がそう告げてます
…ほら出てきたのは淡いくせっ毛のある黄色のショートヘア
に、生えている可愛らしいお耳
「…獣人さんでしたか」
「…認識阻害の魔法を耳にかけてるはずなんですけど」
そういうのって意識すれば容易に解けます
まぁ怪しんでかからないとダメですが
「それで?何をなされてるのですか?」
「…はぁー、冒険者ですよ、女武闘家、獣人の脚力を使って、なかなか有名なんですよ、わたし」
女武闘家ってそもそも少ないですもんね
私の意図したガバガバは出ませんでしたか
獣人は立場が不遇なところがあります
なんでもあちらの世界、機械の世界では大変珍しいらしくて、その影響が響いています
行き来で亡くなった方もいますが…
今は専属の写真集などそういう娯楽方面で重宝されているらしいです
そのうちに冒険者なんかして貴重な獣成分が失われたらどうするんだと機械の世界から苦情が来ました
なんか寄付するから…どうたらーこうたらーと
あちらの世界の組合かなんかが世界の行き来そっちのけで保護を優先してきたんですよね
そのせいで奴隷化の事件も起きたり、とにかく獣人関係は非常にめんどくさい事になっているようです
…だから耳は誤魔化そうとしながら冒険者をしてるんですね
「写真集」
「うっ、それはやめてください…アレは実質軟禁される愛玩動物ですよ…」
へにゃぁと、見るからにしょんぼりするナコさん
かわいい
「…それより、ナズさん」
おや、急に元気になりましたね
わたしの弱みでも握ったんですか?
「さっきの粉って」
あぁ、握られて…ないですね、別に
「これですね、安眠用のお薬です」
「ほにゃー…」
何だこの人みたいに見ないでください
にゃーがでてますよ
「この人たちは冒険者です、明日も命をかけるのです、睡眠には気を使うべきですよ」
特に戦闘要因は私にとって大事ですからね
「たしかに…それで粉を持ち歩いてるんですね、私も欲しいです」
あ、それはダメです、だって成分の強い違法な植物から効能が薄まるようにして作ってますもん
そっちの方が多く作れるんです、安上がりなんです
「いやです」
「えー、いいじゃないですか、減るもんじゃないですよ」
「いや、粉が減るんですけど…」
適当言ってますねこの人
あっ
「じゃあ耳をモフらせて下さい」
そこそこに興味があるので
「えぇ…」
まじのドン引きをもらいました
しかし、不思議ですね、そこに猫耳がある、そう、その事実だけで不思議とご褒美な気分もします
…これがエムな気持ち?違いますね、気の所為です
◇
結局モフりました、安眠薬には負けたようです
ついでに使い方、後で思い出しましたが強力な粉も渡してました
…なんかぐびぐびお酒を飲んでいました、私
…猫耳、恐ろしい!
あたりは静まり帰ってます
随分と時間がたっていました
先程…上司に似た方が「お客さんこれで最後に、明日に備えてくださいね」
とお酒を置いてってくれました
多分あれ上司な気がします
酔ってるのであんまり覚えてないですが
「もーにゃー、お仕事いやにゃー、殴ってはペイ、殴ってはペイにゃ」
あたりは酔いつぶればかりです、ナコさんも語尾がこぼれております
なんか冒険者の個人ランクが、つまりは雷の街のランクが高いらしくて、挑戦者を迎え撃つお仕事が舞い込んでいるらしいです
「よしよしぃ」
あぁ〜猫耳もふもふー
「ナズ優しいにゃぁ…」
この柔らかいくせっ毛もまた可愛いですね
あははははー
◇
目が覚めるとそこはギルドに併設されている酒場でした
横にはアウスさん、机を挟んでレドさんが寝ております
「…酔いつぶれた」
昨晩は久しぶりに幸せな…夢ではなく現実ですね、ナコさん、またモフりたいです、しっぽとあるんですかね?
酒気とかで色々と気持ち悪いので自室に帰って水浴びしてきました
やってられません
「…うぅ、体が痛いです」
座って寝たからですね
ギルドに向かう途中の日差しが眩しいです
◇
酒場…食事処?は朝食をとる方で賑わってます
朝ごはんは一日のエネルギーをとるのに大切ですから
「ねぇナズちゃん」
「はい」
「悪の組織って知ってる?」
ング…
「ゴホッゴホッ」
朝食のスープが変なところに!!
「大丈夫か?」
「ゴホッ…だい、じょぶ、です、悪の組織?でしたっけ?知らないですね、何かの組合か何かですか?」
焦ってます、悪の組織と聞かれながら組合はないでしょう、不味い、私の知能が低下しております
…そうです、違う悪の組織の可能性もあります
「なんでも各地の魔導書を燃やしたり冒険者に襲いかかったり、盗みを働いたりするらしいよ」
あー、それなら違いますね、そんな怖いこと私たちしませんし
「ひぇー、怖いですね、本当に」
…あ、私の所属してるとこじゃないのは知りません
そっちの人ですかね?
うちの組織って人殺しとかしてるんですか?こわっ
「それがさ、ダンジョンのひとつを占拠してるみたいでさ」
あ、うちですね、その悪の組織
「それは…」
「そんなわけで今日はそいつらを潰しに行こうと思うんだ」
うへぇ…
◇
どうしましょ、どうしましょ
陥れるべき、ですよね
あぁ、決めきれないままにダンジョンまで着いてしまいました
だって私にそんな力はありませんもんっ
「ここ、みたいだね、どうやら何人もの冒険者が返り討ちにあってるらしい、昨日大規模な編成で返り討ちにあったことで僕達にも話が回ってきたわけなんだ」
どうしましょ…
そうだ、ここにはきっと上司、または他の部隊のお強い方がいるはず
その時に
「緊張してる?」
「あっいえ、そんな」
…下手な挙動もバレる原因になるのでは?
「対人戦って滅多にないからね…」
あっ、そう、そうですね
私たちはダンジョンに足を踏み入れました
他の部隊の下っ端さんがボコされては縄に縛られ、をされています
私はおふたりの後ろにコソコソついて行くだけ
…ダンジョンの中は洞窟でした、また、採掘しても崩れないように木組みが設置されております
ランタンが明るさを確保してくれています
私は縄で縛る役目です
…うぅ、すいません、ですが怪しまれないためにも、緩くしとくので…
救いとしては私と同じ部隊の方がいない事ですかね…
◇
ちょっとした大広間に出ました
そこの中心では雰囲気の違う方がチェックシートを片手にこちらを睨んでいます
多分、幹部の方です、何となく見覚えがあります
…そしてすっごいえっちい格好です
風邪引きますよ?
「ほぅ…三人でここまで乗り込んでくるとは、命知らずだな」
なんですか?悪の組織はえっちい格好をしないといけないみたいなノリですか?お腹冷えますよ?
「長らく占拠していたようだが、それも今日までだ」
レドさんが勇者っぽいこと言ってます
あ、勇者でしたね
「ふん…勇者と魔法使い?魔法使いだな、うん、それと…あぁ、盗賊か」
私が渋い顔をしながらコソコソとリストバンドを強調します
「私は」倒さないでください、と
あとアウスさんの職業は迷われるようです、分かります
「めんどくさい、そうだ、あいつを使うか…おいっ!」
「はいはーい」
そう言って奥から出てきたのは
ピッケルを持ったアオさんでした
◇
青いリストバンド、認識阻害フードとローブ
フードから出てる長い薄黄なロングヘア
そして宝石採掘中であっただろうなピッケル
あぁ、アオさんは残って仕事をしていたようです
「こいつらは勇者パーティーだ」
「…昨日と違って潰せばいいんですか?」
「まぁ、そうなるな
私は奥で待つことにする、お前の上にいい報告ができるようせいぜい頑張るんだな」
「はいはーい…っと!」
次の瞬間にはアウスさんが殴られていました
アオさん、恐ろしく速いです
「フバッ」
そして私にはピッケルの柄の部分がおでこに
軽傷ですが…体がぐらつくには充分です
「うぅん…」
ダウンする振りでもしておきましょう
「アウス!ナズ!…速いな」
「ゴホッゴホッ…くっ!」
アウスさんは壁際まで吹き飛んでましたが立って耐えてます
私はそこら辺で寝転んでますね
◇
レドさんとアウスさんはなかなか奮闘しました、しかし速さが段違いのアオさん
アウスさんの黄色いバフで何とか堪えているという感じです
ちなみにバフは私にもかかってます
どがぁっ!と私の横にレドさんが転がってきました
「ひぅっ!?」
「…ナズ、気がついたか、アウス!」
「ふっ!」
三人を緑のリングが通っていきます
傷が癒える、回復魔法のようです
「ナズ、済まない、魔力が尽きた、しばらく耐えてもらってもいいか?」
あっあっあっ
たたかう?わたしが?アオさんと?
むりむりむりむり!
「たのむ!少しだけ!」
ひえぇ!断れません、そんなボロボロで悔しそうに頼まれたら
「うぅ…」
いやいやと立ち上がります
見ればアウスさんが吹き飛ばされている瞬間でした
「がはっ!…強い」
「……つぎは盗賊がやるんですかー?」
アオさんも困ってます、私も困ってます
「あはっ…そう…ですね…」
そうなっちゃいますね、いやですね
へんな顔になってると思います、見ないでください
「…シロちん」
ボソッとアオさんがつぶやき下をみます
アオさん…
俯いたと思いきや直ぐに顔を上げます
その顔は笑顔です、笑っていました
「本気、出しちゃおっかなぁ」
え、ぇえぇえ…ナンデぇ?
◇
私に戦闘技能はありません
ほんとです
本当なんです
血って嫌じゃないですか
痛いのって嫌じゃないですか
「ひっ」
アオさんのただただ速い拳を勘と感覚に頼って運に縋って避けています
ひたすらに避け続けています
「ひゃっ」
何とか一撃も貰わずに避けてます
目の前を足が通り過ぎていきました、こわっ
「…ちょこまかと!」
アオさん…ちょっ、手加減、手加減してください、さっきのアウスさんやる時より速くなってます
それは唐突に起きました
ガクンと、体が重くなったのです
いえ、正確には身体能力上昇のバフが消えました
「うっ…」
乙女らしからぬ声を上げながら腰を屈めます
そこに突撃してきたアオさん
ゴスっと衝突し奇跡的に頭突きが炸裂します
「ごはっ!?」
私も頭に衝撃がきます
これを痛みと捉えた私は咄嗟の行動に出ました
アオさんを組み伏せたのです
男性との力量差があっても組み伏せれる絡み方
男性にやるのは羞恥の方が勝つのでやりませんが
「はにゃっ」
べしーんと地面に貼り付け、足で抑えます
アオさんから変な声が聞こえました
…まぁ力量差があっても魔法で押しのけれるんですけどね
「ナイスだ!ナズ!」
「あとは任せろ!」
レドさんとアウスさんが意気揚々と立ち上がります
「ふっ!」
その瞬間、アオさんが白いものをばら撒きました
同時に黒い霧も立ち込めます
…この黒い霧には広範囲に広がり、同時に留まるように特殊な風の魔法が組み込まれています
「うわっぷ」
「ぐっ!」
レドさんとアウスさんが倒れる音がします
「…睡眠薬」
直ぐに聞こえてくるのは寝息でしたので
「…シロちんは効かないのかにゃ?」
私もお守りを握ります、これは黒い霧を見えなくする機能がついてますので
「アオさんって猫耳ついてたんですね」
黒い霧が見えなくなりそこで見えたのは無理な姿勢で起き上がったアオさん、獣人のナコさんでした
口元と鼻までを黒い布で覆っています
…さて、ナコさんは本名ですかねぇ?
私はナズじゃ、ありませんし
「腕を離すにゃ、あと胸を足でグリグリするにゃ、ついでに寝るにゃ」
…なかなかありますね
私の拘束は左手を軸に拘束してますが右手はフリーです、よって薬をばらまかれたんですかね
「あ、私はこの薬効かないんですよ」
いつも頻繁に飲んでますし
慣れですよ、慣れ
「ずるにゃ」
「ここぞとばかりににゃーにゃー言いますね」
「ナズは獣人に弱いにゃ」
分かってるじゃないですか、その服ひん向きますよ?
「…はぁ、まぁいいです」
襲わないでくださいね?
拘束を解きました
コロンと転がり素早く立ち上がるアオさん
「眠り転がしましたね、どうしましょうか」
この勇者たち
「…シロちん一緒に次の街行こ?」
おや、アオさんからそんな提案が来るとは
私としては構いませんが
あ、いえ、そこそこ長い私には分かります、アオさん何か別の理由がありますね
「本音は?」
「パートナーだから残されてるにゃ、別の幹部に預けられてるから扱いが酷いにゃ」
地面斜め下を見ながらにゃーにゃー呟きます
…今までよく長いこと獣耳を隠せてましたね
「シロちんは私に興味が無さすぎにゃ」
おや、心を読むようです、すごい
「パートナーとしてもっと気にかけて欲しいにゃ」
…パートナー
パートナーだったんですね
衝撃です
私たちの部隊は主に女性です
そしてほとんどが二人組になっています
部隊というか組織の方針で二人組推奨らしいです
互いに助け合えよ!って訳らしいです
同時に部屋も二人で一緒に使います
それはちがくないですか?
「え、今までどうしてたんですか?」
「…?どうってシロちんが雷の街に帰ってこないから…むしろシロちんこそどこで過ごしてたの?」
んん??
何か、何か面白いことが起きてますね
とりあえず、私は次の街
雷の街に行くことにします
ちょっと変な切り上げ方になってしまいましたね…
…毎日投稿できる人はやべぇってよぉくわかりました、自分が書いてると気がついたら寝てますもん、小説書くの向いてないんですかね