私の趣味は取り寄せたコレです
引越しというか毎度の事ながら上から指定された部屋で過ごしています
引っ越した先の部屋は夜になると二件先の酒場が盛り上がるので割とうるさいです
ただ冒険者が多く街の外の情報がここまで響き、多く得られます、その情報あんまり使わないけどね?
たまに得られる冒険者の強さについては役に立ちます
なんでも、ランクと呼ばれる受けれる依頼の難易度、区切り
それとは別の順位というのがあるようです
どこで使われるかと言うと主には雷の街の闘技場らしいです
各々順位を持っており上位だとサービスが増えたり、何かとお得らしいです
その順位も対人戦が主に上げる手段らしいのでいつかはエントリーしたいですね
上手く行けば外食の時にデザートが増えます
拠点を転々としている私ですが雷の街は行ったことがないですね、聞くところ大きな街で夢も広がります
◇
以前の街では隣に勇者がいながらも数ヶ月程住んでおりました、気にしてなかったのですが隣人はまず集める情報として必要かもしれませんね
今思い出せば日頃の行動の音が漏れてたのか心配です
今回の宿は少し手狭ですが一般的と言えばそうでしょう、冒険者向けなので砥石とかが付いてるのは必要ありませんが、とりあえず壁は厚そうです
下手に魔力遮断材を使うと逆に怪しまれるのでせめて熱源探知は遮断できるようにしておきます、パーティーの罠探知をする人はこのスキルはよく訓練されてますし、できる方が多いからです
さて、住むところの整理もしましたし次は周辺、地理の把握です
前回を基準にするなら、どこが取引場所になっても
身バレしないように自宅に帰れるルート、人通りの少ない場所
その他諸々を頭に入れておきます
上からはやれとかは言われてません、むしろ放置気味ですよね
ですがいうて悪の道側、基本からするとやっとくのが普通ですよね
魔物は街の外に現れます、今回、外に出るための門も依頼を受けるギルドも遠目の場所です、冒険者から離れれるのでよさげですね
街の外にはダンジョンと呼ばれる場所もあります、基本はちょっとした小山の洞穴に膜が張っていて異次元へと繋がっています
お宝も多く眠っているらしいです
◇
さて、今日はお仕事の日です
仕事内容の書かれた紙によると
ダンジョンの占拠になります
なんでも極秘のルートから仕入れた情報に、あるダンジョンで宝石の発掘が可能との事です
…街の外の魔物は常日頃殺気立って徘徊している訳ではありません
では冒険者はどうお金を稼ぐのか
そう、ダンジョンなのです
うぅ、占拠なんて鉢会うに決まってるじゃないですかぁ…
◇
「あ、やほー…この街だとシロちんね、おけー」
「やぁー…アオねりょーかーい」
薄黄な淡い雰囲気を醸し出している髪の毛ロングな女性と挨拶を交わします
街のそこそこ高い壁を越えてきました、私は変装とか上手くないので門番を越えれません、なので物理的に壁を越えてきました
風が冷たかったです
さて、近くの森で合流したのは同期の子です、よく一緒に仕事をしますが彼女の本名は知りません
配布されるリストバンドは色が違います、その色をそのままコードネームとして私たちは呼び合うのです
そういえばこの仕事やめようと思えば辞めれるらしいですよ?忘却魔法とかもあるらしいですし、辞める時はよく相談しろよ?とは言ってましたが誰とですかね?
その時名前がトリガーで思い出さない為、って仕事説明会で言ってました
ちなみに前回の街では私がアオでした
他の部隊では完全に番号読みの方がいらっしゃいましたね…にーろくごーさんさん…うん、忘れましょう
どこか抜けているような雰囲気のアオさんですが以前どこぞの冒険者を返り討ちにしていたのを覚えています
私たちの部隊は女性がほとんどで男性は数名、その男性にもアオさんは殴り勝つほどには攻撃面が強い方です
物理的に敵にしたくない方です
そういえばこの街の本部に転移の試運転をしていませんでした、これでは場所が分かりませんし
なによりなんの街か知ることができません
いつも私は本部の何々支店的なやつで確認しているのです
試運転用の転移紐…いつ使いましょう
そうこうしているあいだにダンジョンです、森の中、木々に囲まれている小山をくり抜いたような洞穴、そこがダンジョンになっています
ダンジョンの中は洞窟のようになっているようです、トロッコを走らせたりランタンを吊るしたりしているようですが
私は外の警備なので関係の無いことです
「ねーシロちん、暇ー」
私も暇ですアオさん
ボスが来るまでに準備の完了が目的ですが、それはボスが来るまでここから離れられないということを意味します
完了したなら採掘も行いますがそれはアオさんとかのパワーのある人です
私はずっと警備です
ダンジョン横でテント暮らし
うぅ、二人でひとつのテントは狭いです
今はもうひとつのテント組が警備してますがアオさんがうるさいです
ちゃんと休んでてください
「暇ー…シロちんアレやってよ」
「…嫌です、寝ます」
「むぅー」
辺りが木々なので下手に火が使えませんし、なにより貴重な甘味を暇つぶしで消費する気は無いです、寝てください
だいたい特殊な技術のせいで真似出来ないんです、わざわざ取り寄せしてるんですからねっ
◇
はい、警備中です
そろそろ日が落ちきるという所でしょうか
日が落ちてからしばらく経ったら私たちの警備の番は終わりです
そもそもこのダンジョンには冒険者があまり来ないようで搬入のチェックしかしてません
「シロちんがいてくれて助かったわー」
アオさんは搬入のチェックも手間取っている位の不器用さんです
資料とにらめっこは私はソツなくこなせるのでよくアオさんと組まされるのだろうと思います
戦闘嫌いですし
日が落ちましたね
仮にボスが来るならこっからの時間帯と思われます、少し休憩をいれますか
「んー?シロちん?あっ!それ!」
そうです、アオさんの言うアレです
機械の文化の物、インスタントコウチャなるものです
詳しくはよく知りませんが香りがよくて、美味しい、お菓子とも合います
なかなか取り寄せにお金がかさむ高級品なんですよ?
さて、運が悪いことに準備を始めた直後です
来ました、来てしまいました、冒険者さんです
ダンジョン横でランタンの上で水をあっためてた矢先
「…お?先に人がいたか」
ガサガサと草木をかき分けながら男性二人が現れました
「……こんばんは」
アオさんは黙りこくってます
私のアイコンタクトには気づいてくれてるようです
私は今フードを外していました、ですので認識阻害が発動しません
まずひとつ、女性だとバレてしまいました
「あぁ、こんばんは…キミらもこのダンジョンに?」
「えぇ、そんなところです」
無遠慮にも間近に迫ってきました
私の顔をジロジロと見てきます
ローブのおかげで服装から組織の者とはバレてないとは思いますが
「ここには何度も?」
仮にこの冒険者が何度も来ているのであれば宝石の価値には気づいている可能性があります
可能ならば戦闘無しでお引き取り願いたいところ
「あぁ、まぁな…しかし、先に人がいるのは初めてだ」
ここは私のコウチャをきりますか
「せっかくですので、お茶していきますか?」
「おや、美人さんに誘われるとは嬉しい限り、失礼させてもらおうかな」
えぇ、そうでしょう、美人はともかく女性からお茶なんてそう誘われませんよ、特に今回は私のコウチャですし
うう、オコウチャさんの減りが早い…
「これは珍しい、あっちの世界のものか?」
「ええ、もうできますよ」
ランタンの上に浮かばせた水の塊にインスタントコウチャのパックを入れたり熱を加えたりしている
空中に浮かぶ水の塊に色がついていく様はアオさんも目をキラキラさせている
アイテムポーチから人数分のコップを出す
「どうぞ」
「ありがとう」
冒険者の一人も寡黙な方のようで先程から会話はしません
アオさんもそうなのでおあいこなところはありますが、視線は鋭いです
「いい香りだな」
「ええ、香りを楽しむのも好きなんですよ」
いつかはあちらの世界の方にちゃんとした楽しみ方を聞きたいものですが
まぁ香りと味を楽しめる現状でも満足しています
「目を瞑ると香りと味を更に楽しめますよ」
「おぉ、確かに」
では、おやすみなさい?
◇
「…お菓子はなしでもやっぱシロちんのコウチャは美味しいね」
アオさんが男性二人を処理してくれました
多分死んではいないと思いますが私の知るところではありません
男性側には記憶を鈍くするもの、即効性の眠くなるもの、それらを入れさせてもらいました
本当は私たちが先にいるからお引き取り願おうと思いましたが、アオさんとのアイコンタクトで処理することに決めました
致し方なしです
生きていても憶えていないはずです
本来私たちの警備はあそこまで近づかせるものでは無いのです
…そう、こんな感じで
「アオさん、あちらの方向から三人組が来ています」
「ん、おっけー」
日が暮れてからの来訪が多いですね、まぁそれは置いといて、私が索敵するのでアオさんが先手をとって処理をする、いつもこの流れです
もしアオさんがやられるのであれば私では勝ち目はありません、直ぐに逃げます
先手と言ってもどうやってるのかは知りませんけど
そこからは冒険者は来ませんでしたね
コウチャの片付けは済みました、アオさんがもう片方のテントから交代の二人を呼んできて無事に今日のお仕事は終わりです
ボスは来ませんでしたね…
テントがふたつで四人体制なのはアレです、他の人の目からは外に出てる二人がテントを一人一つ使ってるように見せるためです
上からの命令ですが私たちの苦労が度外視されてます、くそぅ…
次は朝からの警備になるので早く寝ます
水浴びしたいなぁ…
◇
少し早くに起きました、アオさんの姿がありません、以前もですが私の注意により置き手紙は残しているようです
…まぁどうせいつも通り街に遊びに帰りましたね
私も変装が上手なら部屋でシャワー浴びたいですよぅ
「ただいまぁ…あれ、シロちん起きてるの」
幸薄そうな笑顔をしながらアオさんが戻ってきました
「む、くさいです」
「えー乙女にくさいとかシロちんひどーい」
私も口にしなくていいならしなかったですよ、寝起きもあって鼻が敏感なんですかね?
「警備に悪影響が出るかもしれないので水浴びしてきてください」
そとで
「うへぇ…まぁ寝るのに気持ち悪いからそうしようかなぁ」
アオさんは今からギリギリまで寝るようです
これで警備に影響がないので不思議ですが
◇
さっぱりしてきたアオさんが寝袋に潜り込みます
私は目が覚めてしまいました
何しましょう
「シロちんもこればよかったのに」
いつも言いますね、この後何が幸せか解いてくるのでしょう?知ってますよ
「アオさん、どうぞ」
「う?…わ、いいの?」
ほんわかしてますね
アオさんが私のコウチャを口に運びます
…じゃあ、おやすみなさい
ぬるま湯から作ったので意図した通りに一気に飲んでくださいました
直ぐに寝袋にくるまるとすやすやと寝息が聞こえてきます
…睡眠薬の調合でもしてましょうかね
◇
職業には錬金術師なる人もいるようです、その人は主に流通してるポーションを作成しているらしいですが
きっと睡眠薬も簡単に作るのでしょう
しかし、注文できるはずもなく
安眠用では効果もぬるい
そんなわけで自分が使う用は自分で作るのです
他にも薬は色々作ってあります
薬用のポーチも持ち歩いてますし
光の魔法使いの身体能力上昇などを使える方はうちの部隊にはいません
ですのでその効果も薬で代用するのです
少しでも生き残る可能性をあげるため
調合と言っても、私は悪の組織です、効果が強すぎて普通は流通していない薬草なども簡単に安値で手に入ります
手法を守って使うだけで簡単に目的の薬は得られます
「…こんなもんですかね」
ちょうど警備の交代のタイミングのようです
アオさんを起こして再びお仕事です
◇
さて、それからは何事もなくもう一度交代を挟んで回ってきた夜の番
「…誰か来ました」
アオさんが立ち上がります
「…ボスっぽいですね」
熱源探知を使いました
少し目元が熱くなりますがあの背丈に護衛をつけてる様子はボスくらいですかね
「アオさん、中に連絡をお願いします」
「おっけ」
アオさんがダンジョンに入っていきました
ガサガサと草木をかき分けて人影が現れます
「…お待ちしておりました、準備はできております」
お昼にアオさんが採掘に駆り出されていたので採掘の準備は完了しています
「…ご苦労」
そう言いながらボスがフードを取りました
「周りの目は厄介なものだな、お前もゆっくりするといい、下がっていいぞ」
「はい」
これで私の警備の仕事は完了です
しばらくの休みをくださいませぇ
帰りは転移で帰りましょうかね、夜ですし
ボスの背はあまり高くありません
普通くらいの私の背よりも低いです
黄色の髪に頭上でお団子をふたつ作りそこから伸びるツイテールはまるでお人形さんのようです
…うちのボスは可愛らしいですね
テントに戻り荷物をまとめます
このテントは他の部隊の方が継続して使うので片す必要はありません
「シロちんおつかれ」
アオさんも戻ってきました
「お疲れ様です」
転移紐を取り出します
「では、私はこれで」
視界が光に包まれます
アオさんがあっ、みたいな表情をしていましたが…まぁ発動してしまいましたので
お疲れ様でした
熱源探知をスキルとしましたが特に詳しくは決めてません、まぁ重要では無いのであしからず…
調合の材料が悪の組織ならでは、という感じでしょうかね