真・ダンジョンキノコ
ひとまず今週の平日は毎日更新予定です
せめて釣竿を手に入れるまでは更新したい…
ギギギッという音がして慌てて振り向くと、先ほど入ってきた天井穴が勝手に閉じていく音だった
とっさに止めようとしたが、動き出した時には完全に閉じてしまうところであった
(まさか、戻れないのか?)
閉じた所には取っ手がついており、慌てて引っ張ると簡単に開くことができた
よく見ると、留め具の部分が壊れていた
これならば戻ることに支障はないだろう
さて、訳の分からない特殊な場所に侵入できたとして、恐らくそこは手付かず
皆はどうするだろうか?
戻る?留まる?連絡する?
漢なら、選ぶ道はただ一つ
「冒険だ!!」
ひとまず目が慣れるのを待つ間、近くを確認する事にする
壁の方に近づくが、壁は下と変わらないように見える
また、床と壁の接点で内側に何かが盛り上がっていた
(これは、[ダンジョンキノコ]か?)
壁にそって、敷き詰められるようにキノコが生えている
先ほど食べた[ダンジョンキノコ]は太い一本のキノコだったが、ここのキノコは壁際から小さなキノコがたくさん生えている
逆の壁もすべて埋まっており、見えてる狭い範囲でも1年はもちそうな量だ
([ダンジョンキノコ]かぁ)
食料が簡単に手に入るのは非常に喜ばしいが、死ぬほど不味い[ダンジョンキノコ]である
余りの不味さに気を失う程なのだ、素直に喜べない
しかし、どうせその内にお腹が空いてきて食べる必要がある
ひとまず臭いを確認する
(・・・?そんなに臭くない?むしろいい匂い?)
先ほど食べた[ダンジョンキノコ]の臭いは信じられない程の悪臭だった
それこそ[トイレに生えるキノコ]という悪名が納得できる程だ
それに比べてこのキノコは臭いが少なく、外のキノコと遜色ないように感じる
好奇心が否応なしに刺激される
果たして、先ほどの味と同じなのか否か
小指の先ほどの傘の、1/8程をむしる
やはり匂いは悪くない
・・・気付いたら口にしていた
(ん?んん~?)
味が薄い?
靴下の臭いと言われればそうなのだが、悪くない?
とりあえず食べられる事は分かったので、一本まるごとむしって食べる
(悪くない?いやむしろ・・・)
もう一本、もう一本と、次から次へと口にする
そんなに美味しいとは感じないのに、手が止まらない
思えば、まともに食べられていなかったのは1ヵ月や2ヵ月じゃなかった
食料危機が発生する前だって、満足に食べられていた訳ではないのだ
ここ2,3年は満腹になった記憶がない
雑草を煮て食べた事もあった
木の皮を齧って空腹を誤魔化すのは定番だったし
土を煮て、上澄みをスープにする時だってあった
もちろんすべて不味い、不味いのを胃に流し込むのが食事だった
食べられる物を心ゆくまで食べられる
それは、彼にとって十分な幸せだった
気付いた時には、彼はお腹がいっぱいになるまでキノコを食べていた
久しぶりの[満腹]だった
>『鑑定札』 を 『ダンジョンキノコ』 につかう
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『ダンジョンキノコ』
種類:アイテム
説明:
ダンジョンに生えるキノコ
毒はない
>『真実のカンテラ』はすべてをうつしだす・・・
詳細:
ダンジョンキノコの本来の姿
ダンジョンから栄養を引っ張る機能は根元に集中しており、収穫して10分でボロボロに崩れてしまう
また、根っこごと収穫しても、屋根裏から持ち出した瞬間から劣化して3分ともたない
完全にダンジョンに依存した生態
過去に屋根裏に侵入した人類もいたが、[ダンジョンキノコ]の悪名により本キノコを食した人間はいない
隠し通路に来てダンジョンキノコを食う奴なんていない