カツアゲタイム
釣り上げた虹色の玉は手のひらで怪しく輝いている
「・・・なんだこれ?」
ツルツルした見た目に反して表面はザラザラしている
軽くて硬く、瑞々しさはないが金属ではなさそうだ
(「ちょっと解析してみますので、そのまま持っててください」)
「そんな事できたのかお前」
クロッサが解析している間、片手で釣り竿を片付けてフリッツを撫でまわす
しばらくするとクロッサの声がした、解析が終わったようだ
(「どうやら有機物、何かの種みたいですね」)
「種か、ちょうどいいから今ゴブリンが草を刈ってる所に埋めてみるか」
(「しかし、どうにも普通じゃなさそうです」)
「というと?」
(「マジックアイテムという奴でしょうか?遺伝情報や種としての物理構成が不自然です」)
マジックアイテムか
マジックアイテムはさまざまな制約や効果がある
正しく使わないと暴発したり意に反した結果になるかもしれない
「使い方が分かったりしないか?」
(「う~ん、これ一個では難しいですね」)
「そうか・・・」
(「何度か使えるマジックアイテムがあれば解析も出来ると思います」)
「釣り竿ではダメなのか?」
今片付けた釣り竿は明らかに普通の代物ではない
鑑定札ではただのアイテムと表示されたが、魔術的要素があるはずだ
(「実はその釣り竿も何度か解析したのですが、普通の釣り竿でした」)
「そんな訳ないだろ、どこにモンスターを支配する普通の釣り竿があるんだよ」
(「そうなんです、明らかに不自然なのに物理構成上は普通なんです」)
クロッサの話では、この釣り竿は糸が尽きないらしい
釣り糸を垂らした状態と巻き取った状態を比較して、巻かれている糸の総量が変わらない
つまり糸が出た分だけどこかで糸が創造され、糸を巻いた分だけ中の糸が消失しているらしい
(「観測した時には普通なのです、でも前後を比較すると明らかにおかしい・・・」)
クロッサがブツブツと何かを言っているが、ちんぷんかんぷんだ
兎に角、この虹色の種の使い方を調査しなければ!
俺は農場(予定)の部屋にやってきた
今回は最初から屋根裏でなく下の道を通ってここまで来たのだが
「川が出来てるな」
(「結構な大河ですね」)
フリッツは川の上をくるくる回っている
この元草原の部屋は上から見ると四角形をしている
下の真ん中を入口とすると、左のちょっと上に黒い羊の部屋への道がある
川は上の方をハの字の形で流れている
因みに川はほとんど壁の絵になっていて、実際の川のスペースは少ない
(「遺影の上隅が川って感じですね」)
右上の川から枝分かれした小川が草原スペースを半分に割っている
ほんとにちょっとした小川なので、俺でも簡単に跨げる大きさだ
黒い羊の部屋に行くにはこの小川を渡る必要があるが、モンスターが潜めそうな大きさではない
「おう!やってるか!」
「「「イイッ!!」」」
ゴブリン達はあくせく草刈りに邁進したみたいで、そこそこの空間が刈られている
ゴブリンにねぎらいの言葉を掛けながら、困った事がないかを聞く
しかし、俺がここに来たのはゴブリンをねぎらう為でも、種を埋める為でもない
「さて、ゴブリンの諸君、君たちは武器の類を持っていなかったな」
「「「イイッ!!」」」
「そうだ、しかしモンスターは何かしらのアイテムを持っているはずだ」
「「「・・・イイッ??」」」
「持っているのだろう?・・・出したまえ、諸君の鑑定札を!!」
「「「・・・イィ~~~!??」」」




