草原にあるもふもふ
お宝探索を終えた翌日、俺たちは二階層目にやってきた
屋根裏はしばらく下りだったが、下の通路より早めに水平になった
結果、下の通路の高さはなかなかの物になってしまい、容易には降りられなくなってしまった
しばらく歩くと、セーフエリアに近い明るさの部屋にたどり着いた
「草原だな」
(「ですね」)
フリッツは首を縦に振っている
下を覗くとそこは見渡す限りの草原だった
所々にポツンと木が生えているが、基本的には草原だ
まるで雲になって下界を見渡しているようだが、ここはダンジョンだ
「ところで、さっきから気になっていたんだが、これなんだ?」
(「明らかに怪しいですね」)
フリッツはふわふわと浮いている
屋根裏の天井から無数のロープが垂れていた
天井が高くて暗いから、根本がどうなっているかは見えない
「これって、引けって事だよな」
(「あからさまなフリですね」)
フリッツは首を傾げている
「まあ、そんじゃ、引いてみるか、・・・なんも起こらないいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぇぇぇーー!!!」
床が!
抜けた!
とまらない!
管のような物を通って落ちていく
そこそこ狭い中を猛スピードで落下していく
管の最後の方は斜めにカーブしていた為、若干減速して横方向に排出された
(し、死ぬかと思った・・・!)
(「健康状態に問題はありません、sir」)
そこそこの勢いはあったが、草原がクッションになって怪我はなかった
ガチガチ震える歯を食いしばり立ち上がる
先ほど上から見た草原が視界一杯に広がる
草の高さは膝程度の為、視界は良好
こちらを狙っているモンスターはいなかった
天井を見上げると、空色の管が巻き戻っていくのが見えた
どうやらモンスターの出現方法は一階層目と同じらしい
フリッツがこちらを見ながら心配そうに揺れている
「後をついてきてくれたのか、ありがとうな」
撫でられてフリッツは満足気だ
一安心した所で再度草原を見渡す
ここもセーフエリアと同様に壁に絵が描かれているようで、実際の広さが把握できない
天井も明るく、ダンジョンの外に戻ってきてしまったかのように感じる
ふと、動く物が目にはいった
(・・・柄のないモップか?)
(「ひとりでに動いているので動物ですね」)
茶色い毛糸の塊が動いている
そいつはこちらに近づくと、脇の木の根元で横になった
(犬・・・か?)
よく見ると毛の中に手足が見えた
頭の形もある
恐る恐る近づくが、特に反応はない
「触っちゃいますよ~っ・・・」
撫でてみた
もふもふだ、まごうことなきもふもふだ
ちらりとこちらを見たが、特に反応はない
やはり形は犬のようだ
暖かい体温を感じる
(「どう考えてもモンスターですよね」)
(俺が知らないだけで、モンスターってのは全部こうなのか?)
(「まあ、とりあえずこの犬は大丈夫じゃないですか?」)
思う存分撫でまわし、満足してから一階層目を目指して歩き出した
途中フリッツが主張してきたので撫でながら戻った、嫉妬かな?
~???~
今日も世界は回る
この世界は窮屈だが、それでもここしか生きる術がない
今日も、昨日も、明日も、世界は回る
もはや何のために生きているかを忘れた頃、世界に変化が訪れた
ダンジョンスイーパーが何かを連れてきた
はて?
その何かには、なんだか覚えがあった
長すぎる時間が忘却の彼方に押し流してしまったが・・・
まあ、いいか
なにかが私の体に触れる
その暖かさが心地よくて、今日もまたよく眠れる
昨日も明日も変わらない日々だけど
たまにこういう日があるならば、この狭い箱庭も、存外悪くないのかもしれない
>『真実のカンテラ』 を [モップ犬] につかう
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『エルダーコボルト稀種』
種類:モンスター
説明:
コボルトの進化した姿
基本的に寝ている
>『真実のカンテラ』はすべてをうつしだす・・・
詳細:
コボルトが何十年も平和なダンジョンで暮らした結果、戦いを忘れ去ってしまった
加齢によりエルダー種への進化条件は満たしたが、戦闘経験がなさ過ぎた為にモップのような姿に進化した
非常に思慮深く、また身体能力も魔法の才もある
しかしその能力を発揮する機会はほぼ訪れない
一部愛好家に大人気