初心者ダンジョン
サクッと完結させたいだけの人生だった…
(腹が減った・・・とにかく、腹が減った・・・)
俺、カノー=ジョダンは初心者用ダンジョンの中を歩いていた
なんで初心者用のダンジョンに居るかって?
宝?名声?力?
今、そんなものは一切必要ない
(どこだ・・・きっとあるはずだ、きっとこのダンジョンのどこかに)
俺が住んでいた街は、空前絶後の食料危機
異常気象で周辺の農家は軒並み不作
俺のような孤児には食料が回ってこない
(どこにある・・・[ダンジョンキノコ]・・!)
そう、俺が探しているのは[ダンジョンキノコ]と呼ばれるダンジョンに生えるキノコだ
「臭い」「苦い」「腐ってる」「最悪の触感」「二度と食べたくない」
世界一不味い食べ物の栄誉を欲しいままにするこのキノコだが、
一つだけメリットがある
(どんなにクソ不味くてもいい、
明日を生きれればそれでいい・・!)
なんとこのキノコ、どこにそんな栄養があるのかこれさえ食べていれば生きられるのだ
過去ダンジョンの深部に潜った探索者が罠で戻れなくなった際、一か月間ダンジョンキノコだけで生き延びたという噂もあり、それは周知の事実とされている
(・・・!あれは!)
通路の隅に何かがあるのを目の端に捉え、慌てて近づく
(・・・なんだ、ゴブリンの残骸か・・・)
初心者用といえど、モンスターは存在する
どこかの誰かが倒したゴブリンが放置されているようだ
(・・・これ、食えるか・・・?)
もう1週間はまともに食べていない
飢えを誤魔化す為に水をガブ飲みしているが、着実に体力は低下している
(・・・何か、食べられる物をもっているかもしれない)
ゴブリンが食えるという話は聞いた事がない
この食糧危機でもゴブリンの肉が売られていないという事は、そういう事だろう
しかし、まさかゴブリンの死体漁りをする事になるとは・・・嬉しくて涙がでる
(これは・・・『鑑定札』か)
ゴブリンの服のような物には『鑑定札』だけが残されていた
[鑑定]とは名ばかりでいい加減な表示をするクソアイテムだ
モンスターが落とす定番アイテムだけにその価値は低い
得られた極小の利益に徒労を感じつつ、また歩きだす
(あと一歩、そこを曲がれば見つかるはず・・・)
何度目の角を曲がっただろうか
目が霞み、視界がぼやける
膝に力が入らなくなる、崩れ落ちそうだ
そして、ついにその時はやってきた
(角に何かある・・・)
なけなしの力を振り絞り、なにかに近づく
崩れ落ちるようにして顔を近づけて確認する
(ようやく見つけた・・・![ダンジョンキノコ]だ!)
ダンジョンに生えるキノコは外と違い[ダンジョンキノコ]1種のみ
急いで摘み取り、まずは匂いを確認する
(・・・うっわクサッ!めっちゃクサイ!!
古い公衆便所の匂いがする!?)
この空腹でも口にするのをためらう臭い
なるほど、誰も探しに来ない訳だ
・・・ほんとに食べるのか?
(食べなきゃ死ぬ、食べなきゃ死ぬ、
・・・ええい南無三!)
口にした瞬間、爆発する臭気
苦味と酸味を凶悪にブレンドした味
木くずと藁を砂で固めたような触感
控え目に言って、最悪に不味い!!
無理やり水で流し込む
いつもは不味い水袋の中の水が、最高に美味く感じる
とにかく、これで死ぬことはないはずだ
不味さと栄養失調と安心感で体から力が抜けて倒れこむが、最後の力を振り絞り仰向けになる
(ダンジョンの天井って、こうなってんのか・・・)
どうでもいい事を考えていると、気が遠くなってきた
(なんか、あれ、外れそうだな)
気付けば、俺の意識は消えていた
あとがき は 『真実のカンテラ』 を 手に入れた
>『真実のカンテラ』 を 『鑑定札』 につかう
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『鑑定札』
種類:マジックアイテム
説明:
アイテムの名称と簡単な使い方を表示する
一回使いきり
>『真実のカンテラ』はすべてをうつしだす・・・
詳細:
基本的にアイテム名と本当に簡単な使い方しか表示しない
さらに偽物を見破る力もない為、偽物でも本物と同じ表示がされてしまう事もしばしば・・・
裏世界にてラベル張りのパートさんの為に開発された便利アイテムだが、どんな物にも使用できる汎用性がコレクターにウケて大ヒット
大量生産し過ぎた結果、今では供給過多となってしまい表世界にも溢れてしまった