勇者な幼馴染とお世話係の私。
幼馴染が勇者になりました。
そこそこ王都から近めの、
そこそこの規模の、
そこそこ平和な村で生まれた私たち。
生まれた時からずぅっっと一緒で、元気で仲のいい村人だった私たちは、先日15歳になった。
その日は、15歳で成人となるこの世界にとって大事な日で、家族(我が家と幼馴染家)総出でお祝いされていた。
夜も更けてきて、そろそろ寝るかぁってなった時、天から光が落ちてきて、村...正確には奴の頭上ぴったりに当たった。
一瞬雷かと思ったけど何も燃えないしその後5分くらい光ったまんまだった。
皆ナニコレ?って感じで呆然としてたけど、同じく呆然として光に包まれている幼馴染に次第に笑いがこみ上げてきて、最後は爆笑してた。
その日開けられていた酒瓶は30を超えていたし、まったく現実味のない光景だったのだ。
そんな呑気な私たちを迎えに来たのは、王都から来た騎士様達だった。
誕生日の3週間後の夜中の3時に突然我が家に押しかけてきた騎士様達は、幼馴染を手を掴み、「この御方こそが世界を救う勇者様だ。」と宣言し、今から幼馴染を王都に連れていくと宣った。
もちろん皆驚いて、やめてください、せめて夜が明けてからと必死で止めたけれど、騎士様達は総スルー。もう今にも出立しそうな勢いだった。
そこで幼馴染は私を連れていくと言い出した。お世話係として。
村人達は私ならと幼馴染と同じことを言い、騎士様達も小娘1人くらいならと了承した。
そして夜中の4時くらいに出発。眠かった。てゆうか幼馴染は寝てた。
私と幼馴染は馬車に乗せてもらえた。
騎士様達は馬に乗っている。
馬車の中で、幼馴染が言い出した。
「俺が勇者。世界滅ぶな」
「それな。あんたに勇者はできないよ」
「だよなぁー」
「...でもお前こそ大丈夫か?王都には...」
「大丈夫だよ。会わないっていうのは無理かもだけど、なるべく関わらないようにする」
「そっか。」
「それより、私がお世話係ってどういうこと?」
「...頼りにしてるぞ!」
「ふざけんなぁぁぁぁ!!」
「ちょっ、声でかいって!だけどこれなら一瞬にいられるだろ?」
「む、たしかに...」
「なんだろなぁ、この外見詐欺。」
「あんたがいうか!」
この幼馴染は、それはもう顔が整っているのだ。
明るい亜麻色の髪に、空のような青い目。キリッとした眉に形いい唇。
黙っていればちゃんとした勇者様に見えるのに。黙っていれば。
かくいう私は、茶色になったふわふわの髪にみどりの目。「小動物みたい」と言われる幼めな顔立ち。自分で言うのもなんだが、なかなかに可愛いと思う...けど、中身は残念な感じ。口調や仕草はちゃんとしてるけど言ってる内容はひどい。らしい。
それが無ければ絶対モテるのに...とライのお母さんに嘆かれた。
「ともかく、俺は勇者サマをやってやるから、お前はアレらと関わらないこと!いいな?」
「りょーかい。がんばれ、勇者様ww」
「笑うなよ...」
4週間の旅を経て、私たちは王都に着いた。
中央にある大きなお城。それを取り囲む城下町。活気溢れる人々。
「「すごい.....」」
感動して窓から景色を見ていると、何故か騎士様がドヤ顔してるのが見えた。感動が萎んだ。
そのまま街中を通り抜け、お城の中に案内された。
そして、王様と王子様に会った。
王様からは「勇者よ。その力をもって世界を救たまえなんとかかんとか」とありがたいけど長ったらしいお話を聞き、王子様にはお城の案内をされた。
「初めまして。僕はサイラス。この国の第一王子だ。」
「はじめまして、ライフリード・イルです」
「は、はじめまして!ミシェラ・ユトです」
王子様はイケメンだった。輝く金の髪がゆるく波打ち、翠緑の瞳が理知的な光を宿す。優しげな顔でまさに正統派王子!って感じだった。
ライと話している王子様を観察する。
...やっぱり、そうか。
部屋に案内されて、(ライとは隣の部屋だった)ライと作戦会議。
「...どう思う?」
「そりゃ、確定だろ。おめっと。」
「うわそんな適当な...
誇張なしで私の人生かかってるのに...」
「ま、なんとかなるだろ、俺もいるし」
「いちばん頼りにならない奴が張り切ってる件。」
翌日から訓練が始まった。
ライは勇者として剣の扱いを学び、私はお世話係に必要なスキルを身につけていった。つらかった...!すぱるた、こわい。
ある程度形になったら魔を倒すために旅に出るらしい。
魔というのは、この世界に徐々に溜まっていく人間の出す負の想いやエネルギーのことだ。
溜まりすぎると植物が枯れたり、動物たちがおかしくなったり、人間も狂ってしまうという。
何とかしたいのだが、実体がないので掴めない切れない。そこで聖剣の登場。聖剣は唯一魔を斬れるもの。しかし扱える人は神に選ばれし勇者のみ。そして今代の勇者は幼馴染ライフリード・イル。ライが魔を倒して世界を救うのだ。
そして城で過ごして2ヶ月。勇者の素質を遺憾無く発揮したライと、お世話係の私と、王子と、見た目幼女、中身百歳超の魔術師と共に、北の大地、ルノメイドを目指して発った。
さあ、ここから私たちの旅が始まる。
無事に魔を倒して帰ってこられるのか。
世界を救えるのか。
戦う術のない私は生きて帰れるのか。
ライは魔術師から逃げ切れるのか。
金髪を染めている染料は向こうでも作れるのか。
王子は私が先王の落胤の娘である私に気がつくのか。
不安や悩みは尽きないけれど、まぁ精一杯頑張りますか。
幼馴染な勇者は、私がいないと生きていけないのだから。
勇者...家事できない。料理出来ない。
方向音痴。空気読めない。唯一出来るのが
剣。
私...本名ルミシエラ・ロゼ・エルフェンリード
先王の落胤の娘。村人全員知ってる。
王子...フルネームはサイラス・リザ・
エルフェンリード
旅の終盤でミシェラの正体に気づく。
ちょっとミシェラのことが気になってた。
魔術師...最初からミシェラの正体に気づいて
いた。面白そうだったから黙っていた。
勇者に惚れて狙っている。(`✧∀✧´)