一人っ子最後の日
百合草真白は困っていた。
日本でも有数の資産家である百合草家の一人娘として生まれ、蝶よ花よと四年間育てられてきたが、なんだか家の中の雰囲気が少し変なのだ。
まずいつも優しく真白が声をかけるとすぐにデレデレする父が今日は真白が側に寄っても難しい顔をしている。
そして普段から美しく儚げな優しいお母様が今朝から少しやつれている気がする。
朝から両親ともずーーーっとこんな調子で、すっかり真白は困ってしまっていた。
流石に見過ごせなくなった真白は父の書斎に乗り込み直接聞くことにした。
「お父さま、むずかしい顔をされてどうされましたの?
朝ごはんの時もお昼ごはんの時もそのようなお顔をされてましたわ。真白はおとうさまが心配です!」
勢いよく飛び込んできた娘に驚きながらも彼は苦笑しながら話し出した。
「可愛い娘に心配をかけるとは駄目な父親だなぁ…
そうだなぁ…真白は先日、お父様の弟である叔父さまと叔母さまが亡くなられたのは知っているね?その二人には子供がいてね。ちょうど真白と同い年なのだが…」
真白をチラと見ながら渋るような父の声に真白は閃いた。四歳児といえどもお昼のドラマで見た知識がある。
「分かりましたわ!その子の引き取り先にこまっているのですね!!我が家でひきとればいいじゃありませんの!さいわいにして、百合草家はしさんかですもの!わたしも兄弟がほしかったのです!!」
恐らく両親はまだまだ幼い自分に遠慮して言い出せなかったんだろうと真白は思った。
口調から父は引き取りたいと思ってることはバレバレである。
真白としても本当に兄弟が欲しかったので問題はない。
むしろ遊び相手がおらず、暇をもて余した真白にとって兄弟が出来るというのはとても魅力的だった。
こういったものは勢いが大事だ。幼い真白は一気にまくしたてた。
「真白が年のわりに聡明なのは知っていたが、いったいそんなことどこで覚えてきたんだい…。そうか、真白が良いなら良いんだよ。うちが引き取るのが最良なんだ。私も可愛い甥をたらい回しになんぞさせたくないからね」
「よくあることとドラマで見ましたわ!!!」
悩んでた問題が解決したからか父はニコニコといつもの優しげな笑みを浮かべ、そうかそうかと真白の頭をなでた。
蒼と呼ばれる少年と真白が出会ったのは、その翌日のことであった。






